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老ヴォールの惑星(短編集)【パターン青!((読書紹介))です!】(著:小川一水:2005年)

だいぶ前の短編集ですが、小川一水を紹介するのに、もしかしてこれを紹介しないのはもぐらかな?と思って、紹介してみます。
小川一水は最近、大御所に昇格しそうなSF小説作家です。
以前に何度か紹介しましたね。

今回は短編集「老ヴォールの惑星」を紹介してみます。
といってもそれなりに厚さで4編しか入ってません。中身充実系です。

ギャルナフカの迷宮。
老ヴォールの惑星。
幸せの箱庭。
漂った男。

いずれも後になって「こんなSFあったな」と思い出しそうな、インパクト強い話ばかりです。

「ギャルナフカの迷宮」
ある独裁国家が刑罰として迷宮に落とすという罰を始めます。
まあ収容所ですな。
そこでは一か所だけ食べ物と飲み水が手に入る地図が渡されます。
しかし迷宮にいるのは自分だけでなく、他の受刑者もいます。
迷宮から這い上がる手段はなく、看守たちも降りてくることはありません。
つまり、原始社会に置き去りにされた刑です。
他の受刑者に地図を奪われて殺されるもの、
逆に他の受刑者を殺しに行くもの、
強い男の下で庇護下に入る女性受刑者。
無政府的な原始社会で起こりうるありとあらゆる事態が発生します。
そこで主人公は・・・

表題作「老ヴォールの惑星」
別の海洋惑星みたいな場所に住む巨大ヨット型生物。
知性を持ちながらも生物として野生な生活を送っていただけですが、
ある時、超大型の老齢個体、老ヴォールが天体観測というものを始めます。
老ヴォールの亡き後もその観測は受け継がれていき・・・

「幸せの箱庭」
宇宙探検に出た探検隊の一行は、奇妙な異性文明に出会います。一行はそこで充実した冒険を重ねますが、何かがおかしい? 

「漂った男」賞を取った作品。
ある偵察機のパイロットが海洋惑星に不時着水して漂います。
星間無線機はどんな遠くにもつながるので連絡はつきますが、しかしパイロットが着水した場所がわからない。そしてパイロットは何十年間もその海洋惑星を漂いつづけます。それこそ戦争が終わった後も生きる伝説として。そして・・・

SFというのは文学の一形態と、完全に成りましたね。
文学が、人間の置かれた特定状況を再現することで、物語を通じて何かの哲学を構築して世に問う試みであるなら、SFは、少なくとも小川一水の作品はその課題を達成しています。
それぞれは科学的な小説というより、哲学的な小説と言った方がいいかもしれません。
極限状態を設定し、人は何をするべきか?
なんて問いたがるのが哲学ですから、
SFはそのツールとして非常につかみやすいものでしょう。

そういう意味ではエンタメというより「ちょっと大人」向けのSFという感じなんです。

もちろんエンタメと哲学の要素が両方ある傑作!!というのは世に数多あるのですが。
これもそんな一冊なんでしょう。
だって読み直さなくても内容をずっと覚えてましたからね。

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