銅鏡

日本人はどこから来たのか その4

今回は、このシリーズの最終話です。

今から1400年前、日本列島に最後に到達したのは、朝鮮半島から戦火を逃れてきた人々です。彼らをF系統と定義します。

F系統の人々は、遺伝的にはE系統の人々と同じ北方モンゴロイドです。

しかし、彼らには今までにない特徴があります。それは、金属器文化を携えていたことです。

ヨーロッパでは、石器→青銅器→鉄器という変遷をたどりましたが、日本の場合は青銅器と鉄器がほとんど同時に伝来しました。

鉄の方が融点が高く加工が難しいため、ヨーロッパでは金属加工技術の発展と共に青銅器→鉄器に「進化」したのですが、日本は外国から同時に伝わるという特殊な状況だったため、進化ではなく「使い分け」が行われました。

実際には、青銅器=祭器、鉄器=道具として使用されることが多かったようです。これには、青銅器と鉄器の特性が関連しています。

弥生時代の銅矛。画像はWikipediaからの引用です。

古墳時代の鉄剣。同じくWikipediaから画像を引用しました。

まず、青銅器は基本的に「銅」ですので、錆びるとしても緑青が表面を覆うだけで、内部まで進行はしません(緑青が酸化被膜になって内部を守る)。一方の鉄器は、錆が内部まで進行して朽ちてしまいます。

弥生期は、縄文期と違って「権力」が生まれた時期です。しかし、弥生期の権力は卑弥呼のようなシャーマン…つまり、呪術、直接的な神とのつながりが力の源でした。

永遠性を求める「神」を祀る権力の象徴として、錆びて変色し、朽ち果てる鉄のイメージは対極に位置するものです。そのため、祭器に永遠性を連想させる青銅器が使われたと考えられています。また、青銅は永遠の象徴である金に近い色をしているため、金の代用として用いられた、というのも理由のひとつです。

話を遺伝の方向に戻します。

E系統とF系統のモンゴロイドについて遺伝的に見ると、ちょっと面白い事実に行き当たります。

E系統は中国南部からの渡来、F系統は朝鮮からの渡来なので、E系統は今の漢族、F系統は朝鮮族なのではないか、と思うのですが…。

実は、E系統は今の東南アジア系に近い人々です。そしてF系統が漢族につながっています。

何故朝鮮系なのに…と思いますが、朝鮮は中国の支配下にあった期間が長かったため、遺伝的には漢民族に近くなったと考えられます。

漢族と朝鮮族は遺伝的にほとんど差がない、ということになります。

そしてまたF系統の人々も、渡来人として活躍しながら徐々に「日本人」に取り込まれていき、現在に至ります。

現在の日本人の遺伝系統は大まかに分けて

Cグループ(旧モンゴロイド)…A系統・B系統 5%

Dグループ(旧モンゴロイド)…C系統・D系統…40%

Oグループ(新モンゴロイド)…E系統、F系統…55%

とされています。

つまり、日本人は世界的にとても珍しい新旧モンゴロイドの混血なのです。

C・DとOは、出アフリカ直後に分岐しているため、遺伝的にはとても遠いのです。遺伝的に遠い種類の交配は、遺伝的に両者が補完しあうため、優れた個体が生まれやすい、という特性があります。

日本人が特別な存在だ!と声を大にして言うつもりはありませんが、少なくとも遺伝子レベルでは「良いものを持っている」ということは間違いなさそうです。

ちなみに、ヨーロッパ人のY遺伝子は、Rグループが多い…つまり、遺伝的に見るとかなり遠いことになります。

古来からヨーロッパ人と日本人がお互いを憧れを持った目で見ているのは、もしかしたら、お互いが遠いから(一目惚れの遠距離恋愛のような)もあるのかな?なんて想像すると、また面白いかもしれません。

※一目惚れは、遺伝子レベルの恋なんだとか。

そして、「日本人」が形成されていく中で残された一つの疑問、

他の地域では駆逐が起こったが、日本では何故共存・混血したのか?

という点については、また機会を見て触れていきたいと思います。

このシリーズは一度ここで締めたいと思います。書き足りなかった部分は、また折を見て触れていきたいと思います。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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