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読書メモ

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落語小説集「芝浜」

落語小説集「芝浜」

 古典落語五席を小説化した本です。
 落語では省略して聴く者の想像力にゆだねる部分を丁寧に創作して書き込んでいて、別の面白さと感動だあります。

「謎物語」

「謎物語」

 ミステリ作家であり、ミステリに留まらず小説・短歌など様々な文芸の読み巧者・紹介者でもある筆者が作家デビュー八年目のときに発表した最初のミステリについてのエッセイ集です。
 十五章あるうちの第六章「懺悔と叙述トリック」の中で忘れがたい叙述トリックの傑作として紹介されている作曲家服部公一さんの「やっこらしょ、どっこいしょ」という随筆が、元の服部さんの文章も紹介する北村さんの文章もすばらしく、感動しま

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「着物を脱いだ渡り鳥」

 大学落研で落語にのめり込んで卒業してすぐに落語家になり、落語立川流二ツ目立川春吾として活躍していたが、2015年32歳のときに落語家をやめ、現在コント作家/落語作家/構成作家/ひとり芝居/ナツノカモ低温劇団主宰として活動しているナツノカモさんの本です。
 春吾さんの落語を聴いたことはないのですが、2015年12月に立川談吉さんの会に行ったときに、やめた春吾さんから譲られたという着物を着て春吾作の

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「芝浜謎噺」

 「野ざらし」、「芝浜」、「試し酒」を題材としたミステリー三篇です。
 柳家小せん師匠が演じる「夜鷹の野ざらし」の原作が、この小説の中に登場する落語家が高座にかけた「野ざらし」の改作であることを初めて知りました。本の改訂の際には、小せん師匠が落語で練った工夫を、了解を得て逆に小説に取り入れているそうです。

「落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ」

 落語は落ちがあることにより噺をどこでも終わらせることができる、「耳の物語」と「目の物語」(口伝の物語と文章化された物語)の比較の中で「耳の物語」の代表として落語を捉えていること、などがなるほどと思いました。
 筆者は二十歳のときに難病になり十三年間の闘病生活を送る間に落語に出会った方で、「絶望名人カフカの人生論」などの著作があります。あとがきで、病室にいるとテレビの明るいバラエティー番組などはか

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「高座のホームズ」

 八代目林家正蔵(彦六)師匠が、話を聞いただけで謎を解く安楽椅子探偵として活躍するミステリーです。
 師匠の名前を使用することはご遺族の了解をとり、巻末には彦六師匠の最後の弟子である林家正雀師匠が「稲荷町の思い出」という文章を寄稿しています。

「幻のオリンピック~戦争とアスリートの知られざる闘い~」

 1940年に東京で開かれる予定が戦争のため中止に追い込まれたオリンピック。そこに出場するはずだったが戦争で命を落としたアスリートの人生を追ったNHKのドキュメント番組を、収まりきれなかった資料も加えて本にしたものです。
 1936年のベルリンオリンピックでメダルを期待されながら敗れ、次の東京オリンピックで雪辱を果たすつもりが、中止になると自ら陸軍に志願し中国山岳地帯での共産軍との戦闘で亡くなった

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謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉

 早大探検部出身のノンフィクション作家 高野秀行が、日本独特の食べ物だと思っている人も多い納豆について、アジア各地で現地調査した記録です。
 各地の納豆と納豆料理を食し・作り方を見せてもらい・自分達でも作ってみる中で、日本の古来の作り方のように藁を使うのではなく各種の植物の葉を使うという違いはあるもののどれもまぎれもなく納豆であり、平原に住む民族から圧迫されて山岳地域に住む民族の間で納豆文化が生き

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五代目 柳家つばめ著 「落語の世界」

 この本の存在は、5月10日に開催予定だったが延期された「名作落語本を読み、語る会 第二回」のテーマになっていたので知りました。
 著者略歴によると、1927年生まれで教員を経て5代目柳家小さんに入門した大卒の落語家第1号です。1963年に真打に昇進し、政治や社会を諷刺した新作落語で人気を博したが、1974年に早世しました。
 本書は、1967年に出版された後絶版になっていましたが、2009年に文

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「東京五輪1964」

 東京新聞運動部でスポーツ取材にあたり夏冬のオリンピックを6度現地取材した筆者が、前回東京オリンピックから50周年になりかつ二回目の東京オリンピックの開催も決まった2014年に、自身は中学三年生だった前回東京オリンピックの第一日から最終第十五日までの各一日毎にテーマと人を選んで取材して書いた本です。
 第一日の聖火ランナー坂井義則から始まり、第三日の重量挙げ三宅義信や第十一日の柔道中谷雄英と金メダ

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「この世は落語」

 30年くらい毎晩カセットやCDで落語を聴きながら眠りにつくのが習慣になっているという中野翠さんが2007年から2012年にかけて書いたエッセイをまとめた本です。
 各エッセイは全て落語の演目が表題となっており、落語の内容、感想および関連した話題が語られます。例えば「遊びを体につけてもらいたい『百年目』」では芥川賞を受賞した田中慎弥氏の話から始まって志ん朝の「百年目」のまくらにつながり、「お前を見

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「いちまいの絵」

 美術館に勤めた経験があり、現在は画家を題材とした小説を多く発表するとともに、フリーのキュレーターでもある筆者が、自分が強い影響を受けた絵画26点を厳選し、作者の生い立ち、その絵画が描かれた背景、筆者とその絵画との関わりなどについて解説した本です。
 絵画の知識も鑑賞眼もほとんどないのだが、たまたま読んだルソーの名画を題材とした「楽園のカンヴァス」が面白かったので「暗幕のゲルニカ」、「ジヴェルニー

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「南三陸日記」

 震災直後から約1年間、南三陸駐在として津波被災地で生活をしながら取材活動を続けた筆者が、毎週1回朝日新聞全国面に連載したコラムを本にまとめたものです。
 とてもしみる文章と写真です。

「2つの粒子で世界がわかる」

 世の中のすべての粒子は「ボーズ粒子」と「フェルミ粒子」という二種類に分類でき、またすべての粒子は波としての性質も持っているということなどを、それらを実験的または理論的に解明した物理学者のエピソードも交えてわかりやすく解説した本です。
 本来とても難解であろう内容ですが、楽しく読めました。