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時事無斎ブックレビュー

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本・マンガ、そして時に映像作品や音楽についてのレビューです
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時事無斎ブックレビュー(12) 私的マンガ・アニメ時評2023

時事無斎ブックレビュー(12) 私的マンガ・アニメ時評2023

 見返してみると、前回のブックレビューからいつの間にか1年が経ってしまったようです。むろんその間何も読んでいなかったわけではなく、いろいろと紹介したい本もあるのですが、今回は前回に続き、2023年に出会った漫画・アニメの中からお奨め(そして関連作品)をピックアップしたいと思います。

※前回はこちら

時事無斎ブックレビュー(11) 私的マンガ時評2021~2022MURA Tadasi (村 正

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時事無斎ブックレビュー(11) 私的マンガ時評2021~2022

時事無斎ブックレビュー(11) 私的マンガ時評2021~2022

 前回のこのコラムで触れた通り、個人的に2021年から2022年にかけては近年になく傑作・良作漫画に多く出会えた時期でした。今回はその2年間に出会った漫画の中からお奨めをピックアップし、関連する作品と併せて紹介したいと思います。

※なお、既刊は本記事公表時の巻数ですが、商品リンクは一部情報を更新しています。

1.遠藤達哉『SPY×FAMILY』(集英社ジャンプコミックスプラス。既刊10巻)

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時事無斎ブックレビュー(10) 『チ。-地球の運動について-』について、そして科学と宗教の相克について

時事無斎ブックレビュー(10) 『チ。-地球の運動について-』について、そして科学と宗教の相克について

 遅ればせながら新年おめでとうございます。2023年初となる今回の投稿は、前回のこのコラムと関連する内容になります。

※前回はこちら

 個人的に2021年から2022年にかけては近年になく良作漫画(連載中・完結を問わず)に数多く出会えた期間でした。一部を挙げただけでも、アニメ化もされ好評を博した遠藤達哉『SPY×FAMILY』を初め、グレゴリウス山田『竜と勇者と配達人』、ゆうきまさみ『新九郎 

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時事無斎ブックレビュー(9) 鳥は恐竜、人は猿、そしてどちらも硬骨魚 ~分岐分類学を知るための3冊~

時事無斎ブックレビュー(9) 鳥は恐竜、人は猿、そしてどちらも硬骨魚 ~分岐分類学を知るための3冊~

 本業で海の生物学をやっていると、外部の方から時々、捕まえたり拾ったりした見慣れない生き物について「この生き物は何でしょう」という質問を受けることがあります。むろんそれもお仕事の一環なのでむしろ嬉々として調べて回答するのですが、その時に少し困るのが「○○の仲間」という言葉で説明しなければならない時です。
 一例として、過去に「サルパ」という生き物の説明をしたことが何度かあります。ちょうどクラゲのよ

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時事無斎ブックレビュー(8) 出来合いファンタジーではない、本来の「妖精」を知るための本あれこれ

時事無斎ブックレビュー(8) 出来合いファンタジーではない、本来の「妖精」を知るための本あれこれ

 世はなべてファンタジーのようです。
 書店をのぞけば小説も漫画も「モンスター」「異世界」「魔法」といった言葉をタイトルに冠した本が並び、もしかするとファンタジーではない作品の方が少ないのではないかとさえ思えます。
 ファンタジーファンの私としては嬉しい限り――というわけでは実はなく、どちらかと言えば、むしろ苦々しい気持ちを感じることが多い今日このごろです。
 理由はいくつかあります。どの作品を読

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時事無斎ブックレビュー(7) いわゆる長文タイトルについての長話

時事無斎ブックレビュー(7) いわゆる長文タイトルについての長話

 今回は本の内容よりむしろ題名についての話です。
 最近、休日に書店や古本屋をのぞいていて気になるのが、いわゆるライトノベル、特に「なろう系」と呼ばれるネット発のテンプレに沿った小説(及びそのコミカライズ作品)のやたら長いタイトルです。
 断っておくと、私自身は長文タイトルが必ずしも悪いとは思っていません。例えば昔の英文学などでは一般に知られている呼び名よりはるかに長い正式タイトルを持つ作品も少な

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時事無斎ブックレビュー(6) 夢オチ作品傑作撰

時事無斎ブックレビュー(6) 夢オチ作品傑作撰

 小説・マンガなどのストーリー作りでタブーの一つとされるのが「夢オチ」です。
 理由は色々とあるでしょう。リアリティや話の整合性が疎かになる、いくらでもご都合主義の展開ができてしまう、夢と明かされた時点でそれまで積み上げてきたストーリーが全てご破算になってしまうなど、安易に使えば簡単に話が壊れてしまう要素は確かに少なくありません。
 では、夢オチ作品に名作・傑作がないのかといえば決してそんなことは

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時事無斎ブックレビュー(5) オーケストレーションを学びたい人のための6冊と1曲

時事無斎ブックレビュー(5) オーケストレーションを学びたい人のための6冊と1曲

 高校時代には合唱部にも入っていて、決して音楽と無縁の人生を送ってきたわけではありません。ただ、中学時代から現在まで続けていて現在noteで作品の公開も行っている作曲については、これまで正規の教育を受ける機会がなく、もっぱら本からの知識と、実際に曲を聴いて自分でも作ってみて、という試行錯誤で技術を身につける以外にありませんでした。
 その中で苦労したことの一つが、自分が本領を発揮できるのはこの分野

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時事無斎ブックレビュー(4) 中・上級ファンタジーファンのための幻想生物図鑑

時事無斎ブックレビュー(4) 中・上級ファンタジーファンのための幻想生物図鑑

 子供のころからファンタジー作品(神話伝承を含む)が大好きで、自分でも作品を書いており、なおかつ本業で生物学を専門にしているとなると、当然、さまざまな幻想生物に対する好奇心や愛着も尽きぬものがあります。
 単に物語の舞台装置やキャラクターとしてだけでなく、生態や分類も興味深いところです。山姥やバーバ=ヤガーは魔女のようにヒトに分類される種なのか、それとも外見がヒトに似ているだけの人外の存在なのか。

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時事無斎ブックレビュー(3) レビューを書くためのルールと基準(後編:レビューのための評価基準)

時事無斎ブックレビュー(3) レビューを書くためのルールと基準(後編:レビューのための評価基準)

※前編はこちら

 前回はレビューを書く前に気を付けていることについて説明しました。続いて実際にレビューを書く時に作品の善し悪しを決める基準についてです。こちらについては私自身の主観が大きく関わってくるため、なるべく個人的な好みや思想信条と関係なく、広く当てはまるものだけを選んで書きます。

※話の筋道は立っているか、内容に矛盾はないか 本来なら評価の基準にすらならない条件ですが、残念ながら、これ

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時事無斎ブックレビュー(2) レビューを書くためのルールと基準(前編:レビューの基本原則について)

時事無斎ブックレビュー(2) レビューを書くためのルールと基準(前編:レビューの基本原則について)

 ここでコラムを書き始めたからか、あるいは単に「巣ごもり」関係でネット通販の注目度が高まっただけなのか、4年ほど前までAmazonで書いていた商品レビュー(その後Amazonから「当社で購入しなかった商品についてはレビューできる数を制限する」という通知が来たことで書くのを止めました)に、最近あまりなかったリアクションがぽつぽつと入るようになりました。
 リアクションがあるということは、私の文章を読

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時事無斎ブックレビュー(1)  私を構成する5つのマンガ

時事無斎ブックレビュー(1)  私を構成する5つのマンガ

 こんにちは。noteで小説と音楽を発表させてもらっている時事無斎こと村正(むら ただし)です。以前から、小説・音楽の他にブックレビュー的なコラムを書くことを考えていましたが、このお題「私を構成する5つのマンガ」を機会に始めてみることにしました。よろしくお付き合い下さい。

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