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マルクス・エンゲルス(原作) 『まんがで読破 共産党宣言』 : やはり、これだけでは 無理です。 「理論的理解」の感動が得られず、 勉強が進みません。

書評:マルクス・エンゲルス(原作)『まんがで読破 共産党宣言』(イースト・プレス)

決して「まんが化」作品を軽んずるつもりはないんですが、本作に関していえば、やはり相当無理があるように思います。
私は、まだ「共産主義」文献の初学者で、「共産主義」を正しく知っているとは思っていません。しかし、翻訳で共産党宣言『空想から科学へ』共産主義の諸原理などの、短めの基本文献を読み、その解説書(浜林正夫『エンゲルス 空想から科学へ』)などを読んで、それらの大筋のところを理解した上で、復習のつもりで本書を読んだところ、物語と理論の交錯しているところが「かえってわかりにくいんじゃないか?」という印象を受けました。

「まんが」で取っ付きやすくという本書の趣旨はよく理解できますが、「感動ドラマ(フィクション)」の部分は、かえって「非現実さ」を感じさせる部分でもあって、『共産党宣言』本来の「リアリズム」にさえ疑念を抱かせてしまうのではないかと、心配になってしまいました。

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ですから、どんなジャンルを勉強でも同じですが、まずは、わかってもわからなくても、原典を通読し、そののち参考書を読んで理解を深める、という方法の方が良いと思います。
ちなみに、私は「キリスト教」のことを勉強をするのに、最初に、かなり苦労しましたが、「聖書」の通読をしましたし、結果として、これは大正解だったと思っています。
多くの(日本人)クリスチャンが「聖書」を読まないまま、教会で「聖書の断片」とその解釈だけを聞かされたあげく、「聖書」に対してかなり「偏った(神秘化された)印象」を持ってしまっているということが、傍目にもよくわかるようになったからです。

大部の『資本論』は別として、「聖書」に比べれば、『共産党宣言』や『空想から科学へ』『共産主義の諸原理』などはごく薄い本ですから、まずはそれらから読んだ方がいいと思います。

「マンガ版 聖書」はたくさん出ていますが、それを何冊読んでも、原典の「聖書」そのものを読まないことには、どこまでいっても「本当に理解できているのだろうか?」という不安は付きまといます。

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日本聖書協会の「マンガ聖書」シリーズ

ですから、まずは『共産党宣言』を読んでみる。それで1箇所でも2箇所でも「これのことか」と腑に落ちる発見と納得が得られれば、少しずつでも勉強は進んでいくと思います。焦って、中途半端な学び方をすれば、かえって遠回りにもなりかねません。

本書を読むくらいの人ならば、まず原典『共産党宣言』から初めてください。その上で、参考書を読むのは、決して恥ずかしいことでもインチキでもないと思います。

初出:2021年6月3日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)
再録:2021年6月18日「アレクセイの花園」

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