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西谷文和 『万博崩壊 どこが「身を切る改革」か!』 :ニュースで言うほど 「甘くはない現実」

書評:西谷文和『万博崩壊 どこが「身を切る改革」か!』(せせらぎ出版)

まずは、大阪府民として、吉村洋文府知事に代わって、全国の皆さんにお詫びしたい。
しょーもない万博のために、皆さんの血税をドブに捨てることを、どうかご容赦ください。本当に、ごめんなさい。

吉村洋文府知事が、百遍土下座して謝罪するのなら、私も一遍くらい土下座してもかまいません。
大阪都構想の住民投票問題」の際、Twitter(現「X」)で「維新の会」支持者たちとやり合った結果、向こうが管理者に泣きついて、Twitterアカウントを永久凍結されたような私なので、私が謝罪しなければならない理由などないのかも知れませんが、それでも維新に大阪府政を取らせてしまった責任というのは、維新の支持者ではなくても、やはり、私を含めた大阪の全有権者にあるからです。

でも、腹が立っているのは、全国の皆さん以上に、私の方だと思っています。
所詮みなさんは「大阪はバカばっかりだね。あんな見るからに頭とガラの悪い維新なんかに、府政や市政を任せるんだから、まったく信じられないよ。こっちは、とんだトバッチリだ」くらいのお気持ちでしょうが、私の怒りは、そんなもんじゃないからです。そんなもんじゃないからこそ、Twitterのアカウントを凍結されるほど、黙ってはいられなかったということなのです。
それに、「X」になってから、ドナルド・トランプのアカウントは復活させたそうなのに、私のは凍結されたまま。どういうことだ!一一と、これも腹が立っていますが、しかしまあ、私の場合は、トランプよりも「影響力」が大きかったということだと理解しておきましょう。「立場の影響力」ではなく「中身の影響力」として。

そんなわけで、「大阪万博」は、必ずコケる。断言してもいいし、100万円賭けてもいい橋下徹松井一郎吉村洋文にも100万円ずつ賭けてもらい。維新の議員全員に10万円ずつ賭けてもらう。そして、大阪万博が成功すれば、その皆さんに私の100万円を、出資率に応じて山分けしてもらい、大阪万博が失敗すれば、私が総取りをします。
この賭けは、私個人の発案なので、大阪万博が失敗する方に賭けたいという「一般の方」はお断り。やりたい人は、自分でやってください。一一とまあ、楽勝でこのくらいの自信はある。だから、大阪万博は、絶対にコケると断言するのです。
おら、橋下、松井、吉村。かかってこんかい。

まあ、いくら私がこんな賭けを望んだって、橋下くんや、松井くん、吉村くんなんかは、絶対に乗ってこないでしょう。彼ら自身、大阪万博がコケるのがわかっているからです。
その、コケるのがわかっている万博をそれでもやるのは、彼らにはそれなりの見返りがある(あった)からなのと、個人的には責任を問われず「弁償させられることもない」というのがわかっているからに違いありません。個人的な「賭け」だったら、彼らだって「大阪万博はコケる」の方に賭けるに決まっている。それくらい、これは結果の分かりきった「無謀な賭け」なのです。どう考えたって、誰が考えたって、大阪万博が成功するわけなどないのです。

 ○ ○ ○

さて、ここで口調を改めて、本冊『万博崩壊 どこが「身を切る改革」か!』の内容だが、第1部は、本冊の著者であり「維新の会」の問題を継続的に追っているジャーナリスト・西谷文和と「おおさか市民ネットワーク」代表の藤永のぶよの両名による、開催を1年後に控えた「大阪万博」の「現状」ルポ。そして、西谷と日本共産党前参議院議員であるたつみコータローとの対談。第2部には、「自民、維新から、日本を取り戻す」をテーマとした、西谷の対談2本収められている。対談の相手は、それぞれ、評論家の内田樹と、経済学者の金子勝である。

本冊で面白いのは、なんと言っても、最初のルポだ。
3つの対談も、それぞれ「分析的」なものであり、興味深い内容ではあるのだが、継続的に「維新」問題に興味を持ってきた人間であれば、ある意味では、分かりきったことの分析的な再検討という印象が否めない。

例えば、内田樹の「大阪府民が維新の会を支持するのは、プロパガンダに騙されているというだけではなく、維新的な弱者叩きに、本音のところで共感しているからではないか」という、いささか挑発的な指摘も、維新支持者と直接やりあった私としては「分かりきった話」でしかなかった。

もちろん。大阪府民ではない皆さんとすれば、「大阪府民が悪いのではなく、騙した維新が悪いのだ」と言っておく方が無難だというのは理解できる。大阪府民を敵に回しても、なんのメリットもないからだ。
しかし、当の大阪府民である私からすれば「たしかに騙されているバカも多いだろう。だが、それは騙されたいバカが多いということでしかない。そんなバカには、お前はバカなんだと教えてやらないことには、いつまでも騙されたままだし、被害は広がる一方だ」としか思えなかったのだから、内田の上のような指摘も、なんら「タブー」ではない。

すなわち、今の大阪府民の少なからぬ部分には「弱い者いじめ」根性が染みついているのだ。
自分だって、十分に「弱い者」である、吹けば飛ぶような庶民でしかないくせに、自分たちより「弱い者」を叩いて、自分を「強者」だと思い込みたいようなバカが、決して少なくないのだ。例えていうなら、かつて「ユダヤ人差別を歓迎した、ナチス支持者のドイツ国民」みたいなものである。

で、どうして、大阪だけで、極端に「維新支持」が進んだのかと言えば、それは、大阪が「東京と並ぶ、日本第二の経済都市」の位置から転落したからだ。
「落ち目意識」があるからこそ、無意識のうちに、自分たちより弱い者の中に「戦犯」を見つけ、それを叩くことで納得しようとしているのである。
だから、維新の支持者の中には、「生活保護受給者」の対して反感を持っている者が、絶対確実に多いはずだ。維新の支持者は、「在特会」の会員のネトウヨと同じで、自分たちを「ダメ人間たちに足を引っ張られている被害者」だと思い込んでいるのである。自分たちの方が「負け犬根性の持ち主」であるにもかかわらずだ。

とまあ、こんな具合に私はモーレツに腹を立てている。だから、他府県の皆さんのような「傍迷惑だよな」などというヌルい怒りには止まり得ない。だからこそ、こんなパンフレットも読めば、その紹介もしているのである。

しかし、そんな私でも、Twitterは使用不能だから、「大阪万博」の情報と言えば、テレビニュースくらいしかない。しかしまた、そんな私でも「大阪万博」は(何もかも)酷いと思っていたのだが、本冊を読むと、「大阪万博」の酷さは、テレビニュースで知りうるレベルの酷さではないことを、嫌というほど思い知らされた。知れば知るほど、酷いのだ。私の認識とて、まだまだ甘かったのである。

だから、この後は、私が本冊を読んで驚かされた、あれやこれやを具体的に紹介しようと思う。
もはや、分析がどうとかいう話ではなく、事実をして語らしめよというしかない現実がそこでは紹介されているので、この後は、ほとんど「引用」ベッタリになってしまうが、ここまでの記述に免じて、著者や関係各位にはご海容願えれば幸いである。

 ○ ○ ○

『 はじめに

「すごいよ、アップした初日に、もう10万回も再生されてるわ」
 インターネットTV「デモクラシータイムス」の升味佐江子弁護士から電話がかかってきた。「えっ、本当?ちょっとパソコン見てみるね」
 急いでYouTubeを見る。「風雲急! 必ずこける!? 大阪万博」(図1)と題して放送された回が、急速に再生回数を上げている。同時に
 「見たよ」
 「リツイートしたで」
 「ホンマに腹たつわ」
「ここまでひどいとは思わんかった」.......。
 私のSNSに感想が殺到する。この少し後から大手メディアも「万博、間に合わないかも?」という報道を始めた。
 もっと早くからわかっていたやろ? 維新(特に松井)に忖度して、隠してたんと違うの? 在阪大手メディアに毒づきながら、デモクラシータイムス万博特集、第2弾、第3弾の相談を進める。』

『(承前)そう、今や大阪万博が維新の大逆風になっている。慌てた吉村馬場が「万博は国の行事ですから」。言い訳を述べ始め、ポスターまで日本国際博覧会(笑)に差し替えている。あれだけ「大阪万博」と言伝していたのになー。
 4月の知事・市長選挙では松井が「大阪万博、府市一体の維新だからこそ誘致できた」と自慢し、吉村に至っては「成功させるのは俺だけ」と叫んでいた。それが今や松井は逃げて、記者会見での吉村は目が泳ぎ、オドオドと「それでも経済効果は2兆円もあるんです!」と口からでまかせを述べている。
 カジノでもそうだが、この「経済効果」が曲者で、視聴者は「ふーん、そんなものか」と聞き流す。でもこれは明らかなウソ。しょぼーい万博の入場料7500円を支払い、夢洲に行って回転寿司を食べたとする。確かにこれで2万円程度の「効果」はある。
 しかし、その人は会社命令で無理やりチケットを買わされ、酷暑の中、仕方なく「どこでも食べられる普通の寿司」を食べた。本当ならUSJに行きたかったが、我慢した。万博で2万円の「効果」は、USJの方が楽しく、その後ホテルに泊まってくれたとしたら5万円の「効果」を犠牲にしたもの。つまり最低でも差し引きゼロ、下手したら「あまりにもしょぼい万博、日帰り」となりマイナスかもしれない。
 カジノはもっと悲惨だ。松井、吉村、馬場などが口を酸っぱくして、「何兆円もの経済効果で、大阪は儲かりまっせ」と言う。カジノで大負けした客の掛け金は、カジノがなかったら、地元のレストランで家族と食事ができたお金、子どもと一緒に海水浴に出かけることのできたお金、でもある。
 もし、町工場の社長がカジノにはまって倒産させてしまえば、従業員は路頭に迷う。明らかな摂失。お隣韓国での試算によれば、カジノの経済効果は賭場で上がる収益年間2兆円に対し、依存症対策や失業した人への手当、反社会的集団いわゆる「その筋の人たち」対策費、犯罪が増えることに対する備費などで年間7兆円の出費。差し引き5兆円!のマイナスなのである。
 イソジンを高々と持ち上げて「今からウソのような本当の話をします」。お前はネズミ講の親玉か!と突っ込まれたマルチ吉村が、またまた「万博で経済効果2兆円」の大ウソ。有権者よ、今度こそダマされないでくれ、と願うのは私だけではないはずだ。
 彼らは「ギャンブル依存症対策をしますから大丈夫」と言う。2023年10月、奈良県斑鳩町で維新の大森恒太郎議員が自治会費の使い込みで逮捕された。使い込んだ金はギャンブルなどの遊興費にえて、子どもたちが楽しみにしていた村祭りが中止になった。「大阪府民にギャンブル依存症対策をする」と言う前に、自分たちの子分に対策しろ!
 「コントみたいやね」
 「吉本より面白いわ」
「笑った後に猛烈に腹がたった」
 これらはYouTubeを見た人のコメントである。デモクラシータイムスの特集は、8月に「いよいよピンチ!大阪万博」。9月に「いよいよダメかも?大阪万博」とシリーズ化して、合計で85万回(10月末現在)も視聴されている。そして、この動画を見た人が、その内容を別の動画で拡散してくれているので、ネットの世界では「中止せよ」との声が圧倒的になってきた。』

『(承前)4月の統一地方選挙で圧勝した維新の勢いは、もうない。一方、岸田内閣は物価高を放置し、武器を爆買いしながら、生活困窮者を切り捨てていくので、支持率を急降下させている。だからこそ「維新はもっとダメ」の声を大きくしないと、危ない。なぜなら「自民はイヤやから、万博の失敗は許したる。仕方ないけど維新に入れる」人が、まだまだ存在するからだ。
 「どうせ吉村やろ」。これは4月の大阪府知事選挙前に、街でささやかれていた一種の「嘆き」である。テレビに出ずっぱりで、吉本芸人がヨイショする現職の吉村に対して、カジノ反対の候補が分裂した。事前の世論調査で「吉村圧勝」と報道される中での現象であった。「俺が行ってもアカンやろ」
「私、入れたい人いないわ」。どうせ吉村やろ、の嘆きの背景には「吉村ではイヤだ」と感じている有権者が多数存在する、ということ。
だからこそ、「自民も維新もイヤだ」という人々に対して、第三極を作って「この人に任せてみたい」「この集団なら勝てるかもしれない。次は選挙に行ってみよう」という雰囲気にする。展望が持てる展開にして投票率を上げるのだ。それは中央ではなく、地方自治体から始まるかもしれない。
 第1部では大阪万博の破綻、第2部では日本政府の破綻、そしてそれを変革する展望をルポと対談形式で綴らせてもらった。どうか、最後までお読みいただき、万博、カジノ中止。自民はアカン、維新はもっとダメという声を広げていただきたい。

 2023年10月   西谷文和』(P2〜6)

『 軟弱地盤を前にして、逃げ出すゼネコン各社

 4つの工区のうち、万博は2区と1区の一部、カジノは3区に建てられるのだが、この地盤に関して藤永さんが情報公開請求をかけていた。出てきたデータによると、万博とカジノ予定地は地下57メートルまで「N値5」だった。「N値」とは何か? 重さ63・5キロの重りを高さ75センチメートルから自由落下させ、30センチ沈むまでに落下させた回数をいう(次ページ図3)。10回落として30センチ沈めばN値は10。柔らかいほど少ない回数で沈む。
 この場所はわずか5回で30センチ沈んだ。ちなみに2階建の一般的家屋を建てる場合、最低でもN値20が必要で、高いビルやマンションはN値50以上ないと建たないのである。
 つまり、N値5というのは保育園の砂場レベル(泣)。こんな所に高層のカジノビルを建てようと思えば、海底の岩盤まで届く長さ80メートルの杭を何百本も打たねばならない(図4)。そんなことになれば、杭は1本約1億円。数百億円に及ぶこの「杭打ち費」は誰が出すのか?

 お金の問題と並んで深刻なのが、「無理にビルを建てたら沈む」ということ。たとえば、新関西国際空港は、空港を作るために良質な山土で埋め立てられた。それでも自重でズブズブ沈む。18年の台風直撃で空港島が水没し、旅行者が3日も閉じ込められたことは記憶に新しい。
 一方、夢洲は上に物を建てようとして埋め立てられたわけではない。ゴミの処分場だ。ここに巨大なビルを建てれば不等沈形を起こす。つまり、ビルは傾いて沈んでいく。ピサの斜塔のようなカジノビル、ルーレットの玉が飛び出すかもしれない(笑)。ある意味、「世界遺産」になるかもしれないが。
 さて万博である。パビリオンには3種類あって、各国が独自にお金を出して流麗なデザインで演出するのがタイプA、万博協会が建てたパビリオンを棟ごと間借りするのがタイプB、複数の国が共同で借りるのがタイプCである。当然、万博の華はタイプAで年配者は70年万博のアメリカ館、ソ連館をイメージする方も多いだろう。
 でもこのタイプAが建たない。
 資材と人件費の高騰が原因の一部ではあるが、真の問題は「杭を打たないと満足なものが建たない」「そうなれば建設費は爆上がりする」ということ。
 この原稿を書いている時点(23年10月5日)で、建設申請を出したのがチェコのみで、出そうとしているのが韓国とモナコ。このままだと「大阪万国博覧会」ならぬ、「大阪4ヵ国博覧会(日本含む)」。つまり大阪四博だ(笑)。大阪に4泊5日か!とツッコミが入りそう。
 パビリオンを下手に残すと、強風で飛んで行く、地震で倒壊するなどのおそれがあるので、万博が終わればすべて撤去。
杭は打つより抜く方が難しい。つまり「大阪使い捨て万博」なので、杭抜きを含む解体工事にも金がかかる。
 「こんな条件ではできませんなー」
 これが各国の本音。建設を請け負うはずのゼネコンも手を挙げないので入札不調が続く。
 なぜか? 「100億円で受けた仕事は、おそらく150億円に上振れする。上振れ分は誰が保証してくれるのか?」ゼネコンとしては、こんな危険な工事に付き合ってはいられないのだ。
 悪条件の中で、あと1年半。図5に見るとおり、夢洲は橋とトンネルでしか行けない。仮に契約が成立し、いっせいに工事が始まると、資材を積んだトラックは渋滞する。2024年に働き方改革による残業規制が始まるので、労働者をこき使うことはできず、シフトを組んで工事にあたるので、大量の労働者を雇わねばならない。人件費はさらに高騰するだろう。だからゼネコンは逃げた、当然だ。
 窮余の策として「パビリオンを浮かせる」ことにした。敷地内の埋め立て土砂を取り除き、その土砂より軽い建設物なら「浮く」。しかし2階建以上は無理。高いものにすれば重くなって沈むし、下手に地下室を作れば、そこはぐちゃぐちゃのヘドロ層だ。だから軽いプレハブを置くしかない。このまま強行すれば「大阪プレハブ万博」である。』(P15〜19)

いのち輝く」はずなのに、人命にかかわる危険と隣り合わせ

 バス(※ バス問題とは、万博会場となる夢洲は交通インフラが貧弱なため、吉村知事が明言した、来場者数合計3000万人、日割りで30万人を輸送するためには、大量のバスが必要。だが、バス運転手が不足しており、募集しても集まらない。つまり、吉村知事の宣言どおりに来場者が集まると、大渋滞が発生して、博覧会場の見学時間がろくに無くなってしまうという問題)と並んで「地下鉄のその後」も大問題を抱えている。仮に万博が成功裏に終わったとしてもカジノができるのは2030年以降だ。万博終了後から5年間、もしくはそれ以上、この電車には誰が乗るの?
 無人島の夢洲にトラック運転手はトラックで来る。その運転手のためにセブンイレブンがポツンと一軒。夢洲新駅を利用するのは、おそらくこのセブンイレブンの従業員だけ。行きに5名、帰りに5名。1日の乗降客10名(苦笑)というとんでもない赤字路線。咲洲コスモスクエア駅からわざわざ海底トンネルを通して新駅を作り、車両を走らせて1日10名!
 「カジノできるまで、地下鉄止めるしかないのかなぁ?」私の疑問に、「空気しか運ばへんけど、走らせるそうよ。線路がサビてしまうから」。藤永さんの答えに失笑する。アホかお前ら、というレベルの税金の無駄遣い。
 万博の目玉は「空飛ぶ車」だ。8月6日の関西コレクションで、吉村知事は「会場の上空には空飛ぶ車が飛来する」「自転車のようにぐるぐる回っているのが見える」と予言。本当だろうか?いや、そもそもそんなことをしていいのか?
 「空飛ぶ車」と呼ぶのは、簡単にいえば巨大なドローンである。人が乗って浮かび上がるには強力な揚力が必要で、プロペラが止まればすぐに落ちる。小さなドローンでも墜落したら危険なので、今でも飛ばせるところは法律で限られている。
 これ、万博会場で飛ばせるのか?
 運転手がアクセルとブレーキを間違えれば?何かに接触すれば?エンジントラブルはないのか?そもそも今の航空法で可能なのか?実用化はまだまだ先では?墜落したら搭乗者はもちろん、下で歩いている来場者も犠牲に?次々と疑問が浮かぶ。
 そんなことを考えていたら2023年8月、実際にイギリスで墜落した(図7)。幸い無人飛行だったので死傷者はなかった。この事故で「絶対に飛ばすべきではない」と確信した。
 さらに問題なのは空飛ぶ飛行機の着陸場およびシャトルバスの駐車場。これはゴミの焼却灰で埋め立てた1区にできる。1区は特に危険でダイオキシンアスベストなどが充満し、ゴミからは今でもメタンガスが出てくるので、79本の煙突でガスを排出させている。ガスが溜まると爆発するからだ。
 前参議院議員のたつみコータローさん、藤永さんたちが1区を視察したとき、なんとPCBの袋が1万袋!野積みされていた(次ページ 写真5)。この上にわずかな土をかぶせてコンクリートで舗装して駐車場にする。
駐車場の周囲には簡易レストランが出店する。来場者はPCBの上で食事することになる。本当にこれでいいのだろうか?
 ちなみにシドニーオリンピックでは会場の下にダイオキシンが埋まっていたので、豪州政府は日本円で120億円かけて除去している。』(P25〜28)

『 東京オリンピックと同様、見え隠れするどす黒い構造

 万博のもう一つの目玉は「人間洗濯機」。これは1970年の大阪万博でサンヨーが出展していたのだが、これを「いのち輝く未来社会のデザイン」をコンセプトに、(株)サイエンスが改良版を出展する。人のお肌に優しいアンチエイジングの泡で全身を洗ってもらえるそうだ。
 洗いたいか?前述の坂本社長は「皮、むけるで」(笑)と評していた。この(株)サイエンスとつながっていると噂されているのが、大阪大学の森下竜一教授。森下教授はアンジェス(株)というベンチャー企業を立ち上げて、「大阪ワクチン」ができると豪語していた人。2020年4月に吉村知事が「7月に治験し、9月には実用化します」と大阪ワクチンを大々的に取り上げた。直後にアンジェスの株は急騰。政府からの補助金もついたが、大阪ワクチンはできなかった。
 「ワクチンできるできる詐欺」というべきこの一件で巨額の富を築いたであろう森下教授は、あの安倍アッキー加計孝太郎と一緒にゴルフをする仲で、ずっとアベスガ、維新の側にいた。万博の旗振り役の一人で、なんとパビリオン選定の責任者でもある。
 もし(株)サイエンスに口を利いて、パビリオンへの出展を実現させていたとしたら、東京オリンピック、電通の高橋治之被告と同じことをしていたのではないか(次ページ 図8)。そもそも「アンチェイジング」と「大阪ワクチン」って、基本から怪しくないか?この一件は週刊現代「なんだか黒いぞ、大阪万博」に詳しい。

 さて次に「夢洲はどこまで沈むのか」について見てみよう。これも藤永さんの情報公開請求で判明したデータなのだが、夢洲は埋め立て開始から約30年で5メートル沈んでいる。川底の土砂は、簡単にいえばヘドロなので含水率約50%、つまり半分が水で半分はPCB六価クロム水銀などの有害物質を含んだ汚泥だ。ドロドロの土地にパイプを突っ込んで浸透圧で水を抜く。「圧密」と呼ばれる工法で夢洲が固められていった。
 埋めては固め、埋めては固める。繰り返しの作業のなかで自重で沈んだのが5メートル。つまり30年前に夢洲に家を建てたとすると、家が一軒丸ごと沈んで屋根だけが見えている、雪国の家状態。港湾局は真面目にコツコツとデータを取ってくれていた。
 ビックリするのが2区、万博の予定地。データの最後に「R4年2月1日『亡失』」とある。令和4年2月、つまり1年半前に沈下を測る機械が沈んでしまって測れなくなったということだろう。こんなところで万博をするのだ。
 図9に示すように大阪湾の埋め立ては、咲洲舞洲夢洲の順番に進んだ。夢洲は最後、つまり一番深いところを埋め立てている。「まだ舞洲はよかったのよ、バブル時代に埋め立ててたから」。藤永さんの説明によると、バブルの頃はビルを壊したコンクリートガラや、地上げで立ち退かせて更地にしたときの建設資材がたくさんゴミとして出ていた。つまり「固いもの」が混じる浚渫土砂だったので、地盤はまだ強いのだ。夢洲は90年代、バブルが弾けてから埋め立てているので、ほとんどヘドロ。ユルユルなのだ。』(P28〜31)

『 関係者もマスコミも感じ始めている万博の失敗

 さて、今までの考察を簡単にまとめると、このまま巨額の税金を突っ込んで万博を強行すれば更地万博、大阪4博、プレハブ使い捨て万博、前売り綱渡り万博、くみ取り万博になる。
 しかし、実際は3千万人の来場者は絵に描いた餅になる。前著『打倒維新へ。あきらめへん大阪!』にも書いたのだが、私は22年2月にドバイ万博に行った。日本からアフガニスタンへの直行便はないのでドバイで乗り換える。その時間を利用して万博へ。会場はガラガラ、アメリカ館の待ち時間はわずか5分、ドバイ中心街で満員だった地下鉄は会場が近づくにつれ乗客がどんどん減っていき、終点の万博駅で降りたのは私とスタッフ数人だけ(写真6)。
 なぜこんなことに?それは「万博がオワコン」だから。
 70年代はまだ外国が珍しく、アポロが月に飛んで石を持って返ってきた。冷戦中なのでソ連も頑張ってカッコいいパビリオンを建てる。インターネットがないので、月の石は現地までいかないと見られない。娯楽の少ない社会、みんな若くてエネルギッシュ。ウワサがウワサを呼び、大挙して訪れた。
 あれから50年、大阪は少子高齢化し、物価高と低賃金にあえぐ中でも、スマホだけは持っている。展示物はネットで見られる。酷暑の中、高い交通費と入場料7500円を払って誰が行くのか?
 今や外国人は珍しくもなんともなく、難波や梅田にあふれている(笑)。2度目の万博は必ずこける。
 逆に言えば「上下水は8万人でも大丈夫」なのだ。前売り券1400万枚を空売りするので書類上はすでに来場者1400万人である。さらに企業や自治体、維新の支持者たちを動員して「2800万人達成しました!」と胸を張るのではないか。実際の来場者数は誰もカウントできないではないか。
 名古屋で維新から立候補を予定していた田中孝博、名古屋市長の河村たかし、高須クリニックの高須克弥たちが知事リコール署名を37万人分も偽造し、水増ししていた。あれは選挙管理委員会が署名の中身を調べることができたから発覚したが、「来場者の水増し」は誰もチェックできない。本当の来場者数を把握できているのは万博協会のみ。東京オリンピックの組織委員会は資料を非公開のまま早々に解散して真相を曖昧にしてしまった。万博協会も同じことをするのではないか。
 とはいえ今や「大阪万博、かなり怪しいぞ」という事実がばれ始めている。在阪マスコミも、ゆるーく追及し始めた。2023年4月の統一地方選挙では「万博を成功させることができるのは俺だけ」と叫んでいた吉村知事は、「万博は国の事業ですから」(苦笑)と言い始めている。そう、今から国と維新で責任のなすりつけ合いが始まる。これは最近までの万博ポスター。ミャクミャクの下に堂々と「大阪・関西万博」と書いてあったが、いつの間にか「日本万国博覧会」になり、カッコ付きで(大阪・関西万博)になっている(苦笑)(次ページ 写真7)。
 問題だらけの万博をなぜ開催することになったのか?その答えは「アベスガ、松井、橋下の飲み会」だ。
 2013、14年頃から年末とお盆にこの4人で会食を繰り返していた。アベ、スガ側は平和憲法を改悪し、9条に自衛隊を書き込みたい。維新は全面的に協力する。その代わり、大阪にカジノを誘致したい。民間のカジノだけを目的にしたインフラ整備はさすがにできないので万博を持ってきましょう。カジノの隠れ蓑としての万博。強引に推し進めたのが松井で、「アべさんのおちょこに、松井さんが酒を注ぎまくって決まったんです」。後に橋下自身が内部の者しか知らない事実を得意げに述懐している。でも、そんな大事なことが酒の席で決まるの?
 決まるのだ。2020年4月、コロナ禍で国民生活が劇的に困窮化したときに、「首相、マスク2枚配れば、国民の不安はパーッと吹き飛びますよ」。側近官僚の「助言」を鵜呑みにし、260億円もの税金を突っ込んで、アベノマスクが配られた。しかしこれは布製でウイルスの侵入を防げるわけではなく、面積も小さかった。「給食当番みたい」と揶揄されながら、安倍首相だけが着用していた(写真8)。外出禁止が続く中、これまた首相側近官僚が、「音楽を聴いてくつろぐ動画を発言しましょう。そうすればステイホームしてもらえますよ」。星野源の音楽に合わせて、首相がワンコを抱いて紅茶を飲む動画が配信された(写真9)。これでなぜステイホーム?逆に「お前は高級貴族か!」と突っ込まれていたのは記憶に新しい。』(P31〜35)

『 夢洲を決定づけた松井元大阪市長も万博から逃走?

 そう、安倍政権と維新は想像以上にチャラいのだ。2021年8月、吉村と松井が並んで記者会見。冒頭吉村が「今からウソのような本当の話をします」「このイソジンでうがいすれば治ります」
 お前はマルチ商法か!
 松井もやらかす。「みなさん、医療現場が大変です。雨ガッパをください」
 しかし雨ガッパはしょせん雨ガッパで、コロナの防護服にはならない。結果、行き場を失った大量の雨ガッパが大阪市役所の玄関ホールに積み上げられた(写真10)。カッパは燃えやすいので、一カ所に集めると消防法に引っかかる。あわてて雨ガッパを倉庫に隠したようだが、保管費がかかるのでおそらく最後は焼却処分。つまり、みんなの好意で集まった雨ガッパを税金で燃やすのだ。ちなみにアベノマスクも保管費がかかるので同様の運命をたどる。
 イソジン吉村と雨ガッパ松井。この漫才コンビのような2人のどちらが重罪か。間違いなく松井だ。万博が決まったとき、吹田の万博跡地や、鶴見緑地、泉佐野りんくうタウンなど、候補地は6カ所だった。夢洲を強引に7カ所目の候補地にし「松井市長の思い」で、有無を言わさず夢洲に決定。2014年にカジノが決定し、カジノだけではインパクトが薄いので、万博をセットにして進める。
 これが松井の戦略だったが、想像以上に夢洲がダメだと判明したので、逃げた。松井はまだ60歳そこそこで、本来ならあと1、2期は市長を続けることができたはず。そして維新の会は議席を確実に伸ばしている。なぜ、こんな「黄金期」に市長、維新の会代表を同時に辞める必要があるのか?それは夢洲開発が大失敗になるのが確実で、莫大な税金を無駄にしてしまった責任を追及される。「吉村と横山、お前らがドロをかぶれ」ということだ。
 はたしてこのまま「ダメダメ万博」は強行されてしまうのか?
 それは世論次第である。カジノ業者への賃料の談合疑惑、1200億円→1850億円→2350億円と、どんどん上振れする会場建設費。今後は万博から逃げるゼネコン、カジノから逃げる業者と、引き止めたい政府&維新の綱引きが始まるだろう。
 この中に決定的に久落しているものがある。それは国民の意思とその生活だ。株の世界に「損切り」という概念がある。「ここまでお金を突っ込んできたから、止められない。もう少し」と、ズルズルとお金を入れてしまい、結果、破産に追い込まれる。それを避けるための勇気ある撤退。戦争もカジノ(博打)も始めるのは簡単だが、終わらせるのは難しい。
 しかしこの事態を指をくわえて傍観するわけにはいかない。ぜひ、この本を拡散していただき、中止に追い込む世論を高めよう。そして次こそ、自民でも維新でもない、真っ当な政治を取り戻すのだ。そんな気持ちを込めて語り合ったのが、以下の対談である。引き続き最後までお読みいただきたい。』(P35〜38)

 ○ ○ ○

う〜ん。ほとんど引用してしまった、と言うか、転載か?

やっとこさ省いたのは、P19〜P25の、見出しとしては、

・上下水道の処理能力不足で、立ち並ぶ仮設トイレ
・大渋滞が予想される、会場に向かう橋とトンネル

の2項目だけだった。

だが、ここまで読んでくれた方なら、「大阪万博」の現状が、テレビニュースでやっているような「パビリオンの建設が遅れているが、なんとか間に合わせる」といったレベルの話ではない、というのが、よくわかっていただけたと思う。

要は、「大阪万博」は、「カネだけではなく、人命まで、ドブに捨てる」ようなイベントだということである。

こんなものに、大阪府民の場合は、一人頭2万円もの税金を遣われるという話をテレビでやっていたし、それほどではなくとも、全国民のみなさんにも、相応の負担を強いてしまうことになるのだ。

大切な税金を、本当にこんなものに遣ってしまっていいのだろうか?
西谷が書いているように「損切り」してでも、万博を中止すべきではないのか?
それでなくても、「能登半島大地震」が発生して、困っている人が大勢いるというのに。

「大阪万博」に2万円取られるくらいなら、ケチな私でも、喜んで地震の被災者に10万円くらい寄付するし、そのように考える大阪府民も(維新の支持者は、どうか知らないが)決して少なくはないはずである。

ともあれ、このレビューを読んだ方は、ここで知ったことを、何でも良いから広めていただきたい。
私の「引用」が信用ならなければ、本冊子『万博崩壊 どこが「身を切る改革」か!』を購入して読んで、人にも薦めていただきたい。

もはや、「大阪万博」は、売国的かつ亡国的な行事だと言っても良いのである。これは「愚行」と呼んで済ませることのできるレベルの話ではないのだ。

怒れ、まともな日本国民!
簡単に諦めたり、泣き寝入りしたりなどせずに、やれることをやれ! 石を投げることくらいなら、誰にでもできるはずだ!


(2024年1月6日)

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