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2019年4月富岡浪江取材 棄民政策

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<続き>

南上ノ原の高台はやはり空間線量は低かった(福島県外では立入禁止で除染しなければならないレベルだが)。グーグルマップのストリートビューと比較しても除染されたことがわかるが、その効果は出てるということだと思う(充分ではないが)。町営住宅など廃墟がある一方で、新築中の家も何軒かあった。近隣に商店もなく、医療機関にしても何にしても車がなければ生活が成り立たないとは思うが、やはり高齢の方は望郷の念とともに故郷に帰ってくる。

南上ノ原の高台から元の道へ戻る。

高台では0.2〜0.6μSv/h程度だった空間線量が、一気に1μSv/h前後まで上がる。比較的風通しもよく、除染した様子もみられるが、やはり高台と雑木林から放射性物質が降ってくるのだろう。風が吹くと空間線量も上がった。

場所によってはこんな数値も。

よく「放射能安全」という連中は、「その場所に何時間立つんだ?」などと口にするが、このエリアは平均して1μSv/h以上あり、屋内でもおそらく0.3〜0.8μSv/h程度はあると考えていい(実際に浪江の家に上がらせてもらった経験から)。少なくとも首都圏に住む人の10倍以上は被曝すると考えるべきで、何の保障もなくそんな場所に住むことは明らかな人権侵害と言ってよい。そもそも、普通に考えれば放射線管理区域のレベルで、そんな場所で人が生活することは世界中どこを見てもあり得ない。

避難指示が解除され、そこに帰った人たちは勿論自らの意思によるものだが、だからといって全て自己責任なんてことはあり得ない。先祖代々の土地を汚染してしまった責任として、賠償は勿論、何かあった場合の医療費の控除やサービスなど、国はより手厚く補償すべきだ。「避難指示解除=補償の終了」と判断する人が多いし行政もその方向で進めているが、このような場合は「避難指示解除=より手厚い補償」でなければならない。

(ここは廃屋)

元は田んぼか畑であったであろう場所は再開する様子もなく荒野が広がるが、反対側の高台の斜面には花が咲き、春の雰囲気を醸し出す。健気に咲く花がどこか悲しく、愛おしく思えた。

(花)

「のこす」が印象的だった。帰還してる様子はない。しかし「解体家屋」ではなく「のこす」。あえてそう表明しているところに気持ちを感じる。

(鉄塔)

大堀小学校に向かう道すがら、昨年12月に、息子さんが花を作って東京に出荷してると話してくれたおじさんの家の小屋の前を通ると、ロープが張られていた。土曜日だから? でも12月に通った時は日曜だったがこんなロープは張られてなかった。何かあったのだろうか。

前回も人が帰ってきてた様子の家の前では、土が掘り返されていた。除染? 土を入れ替えて、家庭菜園をやるのだろうか。

このように生活を取り戻したように見える家がある一方で、たくさんの廃墟がそこかしこにみられる。

フレコンバッグの仮置場が見えてきた。

(異様な白い壁)

(白い壁で覆ってみても、中の真っ黒なシートは隠せない)

一体どれだけの首都圏に住む人たちが、この光景を直接見たことがあるだろう。この光景の目の前で、風評だとか福島差別だとか言えるだろうか。

(黒光りしてる)

(綺麗な花の向こうに黒光りの山)

(この穴はなんだろう)

(おそらくかなり前からあったものだと思うけど)

(常磐道が見えてきた)

(常磐道の下のフレコンは相変わらず…いや、少し減った?)

風が吹くと一気にこの数値。このすぐ近くに家があり、そこには人が戻ってきている。布団も洗濯物も外に干してある。放射性物質とともに暮らしてる。

暮らす人々はそんなことは意識しないだろう。意識していたら戻ってくることなんか出来ない。それでも故郷を選んだ。

毎時1とか2マイクロで健康被害が出るのか出ないのか、僕は医者じゃないからわからない。医者だってわからない。出ないなら出ない方がいい。わかっていることは、空間線量が首都圏の何十倍もあるということだ。それでも故郷を選んだ。それでも故郷を選んだ。

ここで暮らしていた人々の望郷の念をいいように利用して「自己責任」で話を片付ける。今の日本政府がやってることは、そんな無責任な「棄民政策」だ。

浪江町小野田地区の公民館が見えてきた。

「この先帰還困難区域(高線量区間を含む)」

「盗難防止(窃盗防止)のため立入禁止」なんてどこにも書かれてない。誰だ、そんなデマを言った奴は? 「高線量区間を含む」から「帰還困難区域」なんだよ! それから、帰宅困難区域じゃなくて「帰還」困難区域だ。「ファクトチェック」と称した「デマバスター」をやるなら、言葉の使い方に気をつけろ!

<続く>


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