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集英社

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『誕生日を知らない女の子』(黒川祥子 集英社)

今年一番心に残った一冊
『ルポ虐待』のレビューを書いたときに、土屋敦が今度出るこの本をぜひ読んだらいいとコメントしてくれた。

へえ、開高健ノンフィクション賞受賞作か。それは読んでみなくてはならないな、と思っていると、『ノンフィクションはこれを読め!2013』出版記念トークイベント in ジュンク堂書店大阪本店で、東えりかが発売前の見本本をもってこれはおすすめです、と力説。選考委員満場一致で選ばれ

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『葉桜』(橋本紡 集英社)

『葉桜』(橋本紡 集英社)

青春のきらめきの中で放たれる、真っ直ぐな思いに目を細めるのもよい。読めば胸を焦がし、過去においてきてしまった切なさを懐かしくよみがえらせてくれる、そんな小説だ。

『葉桜』(橋本紡・集英社)は書道教室の先生に思いを寄せる女子高生が主人公。真摯でひたむきな恋。告白の瞬間に向かって凝縮されていく主人公の思い。緊張感に息が詰まる。

いい恋愛を見た。そう思える読後感。

(「はれどく恋愛小説五番勝負」寄

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『おしまいのデート』(瀬尾まいこ 集英社文庫)

『おしまいのデート』(瀬尾まいこ 集英社文庫)

今のこの時間が、ずっと続くものじゃないと、みんなが知っている。人生なんてそんなもんで、人と人はくっついたり離れたり、もう会えなかったり、びっくりするような新しい喜びがあったりする。

かなしい話はひとつもない。優しく温かい、じんわりと愛しい短編集。

人生って確かにこんなもんだけど、こんなもんだとしたら実はめっちゃ素晴らしいんやない?

そんな声が聞こえてきそう。

小説はすてきだ。

『おしまい

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『希望の海 仙河海叙景』(熊谷達也 集英社)

『希望の海 仙河海叙景』(熊谷達也 集英社)

2011年3月10日がどのような日だったか、覚えているだろうか。

誰かの誕生日だったかもしれないし、結婚記念日だったかもしれないし、卒業式だったかもしれない。昔の男に再び心惹かれ、経営するスナックの今後に悩み、退院した母親の世話をしていたかもしれない。

リストラ宣告されたことをようやく女房に伝えたものの、すぐに相談しなかったことに激怒され、いつものごとく DV 被害を受けていたかもしれない。将

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『Masato』岩城けい 集英社

『Masato』岩城けい 集英社

子どものしなやかな生命力がまぶしい。一人の親としては寂しさと安堵を感じる。

地球は狭い、日本は狭い。でも、自分のまわりに広がる世界は広く、思いもつかない未来がきっと待っている。

その未来を自分の力で選び、つかみとっていく勇気。Let it fly!という言葉はきっとすべての子どもたちと、大人たちへ捧げられた祈りだ。

海外に駐在する日本人一家が、異文化の中で戸惑い、成長する物語だ。舞台が海外で

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『世界地図の下書き』(朝井リョウ 集英社文庫)

『世界地図の下書き』(朝井リョウ 集英社文庫)

いつもそばにいるよ

その言葉の儚さを、知る者は知り、知らない者は知らない。

ずっと一緒にいてくれる?

その言葉を飲み込む孤独を、知る者は知り、 知らない者は知らない。

それぞれの事情から、家族を失い、施設に集められた子どもたち。お互いを拠り所に支え合い、一つの計画を実行する。

何から逃げても、何を失っても、希望はある。

それを、見せてくれる物語だ。

それを信じてもいいのかな。

これ

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