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フサフサの心臓。

私は最近、心臓がちょっとフサフサしてきたようだ。
もちろん毛が生えているという意味でのフサフサである。


というのも、少しトラブルが発生して語学学校と穏便にスケジュールの再調整をしていたときのこと。
学校からの手続き完了のメールにさらっとある文章が添えられていた。



「足りていない1週間分の学費の振込をお願いします。
現地払いでも銀行振込でもかまいません」



んんんんんんん!?!?!?


私は3週間のコースの内、4日間語学学校に通い、4日目までに起こったことが原因で5日目以降は休学状態だ。
4日間通ったから、もう一度受けたいなら通った4日分の学費を払い直せ、ということらしい。

まあ通ったからと言われればそうなのだけれど………
先生が生徒を嘲笑するという行動はどこの国の教師としても問題だと思う。先生はそんなつもりはなかったというばかりらしく、学校側の謝罪も受けていたし翌月以降への振替を勧めてくれたので、追加料金を払わずにもう一度同じクラスを受けさせてもらえるとばかり思っていた。


料金をあらためて確認したところ、もう一度1週目から受けるなら追加で5.8万円、残りの2週間だけ受けるなら別途追加で2.7万円かかるらしい。
まあ病気とか怪我とか、こちらの都合でそうなっているなら、この料金を払うのはわかる。

でも、今回の件はちょっと話が違う。
文化の違いなどで鼻で笑われたという誤解が発生したとしても、そう感じられる行動を取ったのは先生なのだ。

そして私は、先週までに修了するはずだったクラスで授業を受けるという学習機会を失い、更に2.7万~5.8万円の追加費用を払わないと再度授業は受けられないと言われている。
ヨーロッパの物価が高騰しているなか円安に傾いているせいで、学校が思っているよりもそのダメージがさらに大きく見えているところもあるだろう。


そもそも学校側による先日までの謝罪メールは、一体なにに向けられたものだったのだろう?
それはそれ、これはこれ、ということなのだろうか。


記事でなんとか書いているので、
読んでくださっている方はわかっていると思うけれど、
私だって好きで学校に行かなくなったわけじゃない。

本当だったら先週まででドイツ語のレベルをまた一つ上げられていた。
そうなっていないのは、私の語学力と辛抱不足もあるだろう。
けれど、私だけのせいではない。


ちなみに私の通うところは公的な語学学校で、学費は相場の2倍ちかくしている。ドイツ語が話せる知人の勧めもあったし、日本で受けていたオンラインコースも良かったので、現地でもこの学校を選んだ。
そしてすでに1回同じ現地の学校で別のコースを無事修了している。
今回再び通おうと思ったのも、ここへ通えれば語学力をアップできるだろうと思ったからにほかならない。
自分が学んだ経験と、信頼でこの学校を選んだのだ。


それなのに。
その信頼は今、地面にベッタリと貼り付いている。
地に落ちているというレベルではない。
なんなら5cmくらい地面にめり込んでいる。


私は語学学校に通うようになって身についたものがある。
それは語学力でもあるが、正直なところ一番は「 度胸 」だ。
そしてそれに伴って育ったのが「心臓に生えたフサフサ」というわけだ。

授業で失敗しても気にならなくなったのはもちろんのこと、英語がうまく話せず語学学校の生徒に構われなくなっても、平然としていられる心を手に入れた。


だから件のメールが届いた時、驚きとともに「おーっと、やってくれるじゃん」と思った。
最近心臓がめっきりフサフサしている私は、ちょっとイラッとしつつも(さすがにこれはね…)すぐに体勢を整えられている。


日本以外で暮らすとおのずとフサフサしてくる傾向がある気がするけれど、今回の件や少し前に通っていたときの語学学校での経験によって、だいぶフサフサした自覚がある。

ドイツのあるお屋敷にいたシロクマさん、フサフサ

最近よく思うのだけれど、
心臓には毛が少し生えてるくらいのほうがいい。


完全に私の感覚だが、「 面の皮を厚い 」というのは、なんだか失礼なことをしてしまいそうなイメージがある。その面の顔の厚さを盾に他人に突撃していきそうな、攻撃性をはらんだニュアンスを感じている。

けれど心臓がフサフサする、つまり「 心臓に毛が生える 」というのは、こちらの防御力が上がるだけみたいなイメージがあって、周りにあまり迷惑を掛けなさそうなところもいい。
多少傷を負うことになっても、一番大事な心だけはフサフサに守られている、そんな感じも好きな理由だ。

きっと面の皮も厚くはなっているのだろう。
けれど私としては、感受性を鈍くして「 鈍感 」になりたいのではなく、こういうトラブルにあったとき、心を乱されたりダメージを受けすぎたりしない、ということが大事なのだ。


心臓フサフサの効果として最初に感じられたのは、一人でドイツの銀行が開設できたことだろうか。

ドイツは日本よりもなにかの契約や手続きに、オンライン面談で身分証のチェックが必要なことが多い。
ネットバンクであるその銀行もスマホのカメラを使ったオンライン面談が求められるのだけれど、面談で選べる言語が(高速な)ドイツ語か、色んな国のアクセントがきいた英語だった。

どちらの言語もおぼつかない私は、なんとか英語でトライしたのだけれど、まあ面談を切られる切られる。本当に容赦がないのだ。(笑)

英語が通じてない、ガチャ!
カメラの画質でIDカードが読み込みにくい、ガチャ!
IDカードの持ち方や反射のさせ方が悪い、ガチャ!


実際は音も殆どならずにアプリの通話画面が切られてしまう。

金融機関なのでそう簡単に開設できてはいけないのだろうけど、むこうも契約完了数がお給料に影響するようで、契約までに時間がかかりそうな場合ややり取りがうまくいく見込みがないと判断するとバンバン面談を切る。
もちろん切るという挨拶もなく、一方的にだ。

日本では信じられないやり取りだけれど、少なくともこの銀行の面談では普通のことのようだった。

ネットで調べた限り、日本人はかなり苦戦しているようで、試験対策のような聞かれる質問がまとめられたサイトがあるくらいだ。
そこまでここにこだわるのは、口座の維持手数料がないから。
ドイツの銀行口座は月額で手数料を取るところが多いから、それを回避するとなると、選べる銀行がほとんどないのだ。そんな事情もあって、皆必死に口座を開設しようとするし、受け付ける側も強気にガチャ切りできるのだろう。

結局私は、15回ほどトライしてなんとか口座を開設した。
ガチャ切りされ続けるのはもちろんのこと、英語があまり通じていないのをいいことに露骨に責めるようなことを言ってくる人もいたけれど(この面談は録画していると前置きしているのに大丈夫なのか?と正直思った)、そんなのは無視して口座開設というゴールを取りに行く。
そういうところに、心臓のフサフサは役に立つ。


語学学校へ行っておきながら「 言語力より心臓の毛を育ててどうするの?」と思わなくもないけれど、ドイツでは予想外のトラブルが毎月1度は起こる。
たぶんドイツに限らず、海外生活はそんなものなのだと思っている。
心身ともにたくましさが求められる。

ドイツのあるお屋敷にいたクマさん、こちらもフサフサ

なので、急に強気に出てきたように見える語学学校にも、感情的にはならないようにしながら、

・結局、先生にはどのような処罰がくだされたのか
・もし口頭で注意程度で終わっているのなら、私に課せられた追加料金とは不平等に見える
・なぜなら私は先生の態度によって学習機会を逃しているうえ、追加料金を求められているから
・これだと実質すべてこちらの責任だと判断したように見える
・もしそうでないなら、追加費用については再度検討してほしい

というような内容を送って、再び様子を見ている。

ドイツは何をするにも時間がかかるので、こういうトラブルが起きたとき、時間経過によってトラブルの根本が忘れられてしまったり対応の優先度が下がったり、急に話の流れが変更されてしまうことがある。
感情に動かされず、冷静に判断ができるという利点もあるのだけれど、こういうときは雑に対応されてしまうことが多いように思う。

でなければ先々週まで何度も謝罪していた人が、それに何も触れず追加の学費を請求しては来ないはずだ。忘れているか(考えたくないけれど、意図的に話をそらしているか)しかない。


そして問題を忘れられたときに立ち戻るのは今までのメールなどの内容ではなくて、学校や会社、もしくは自分の中にあるルールだ。
ドイツの人が融通が利かないとか固いと言われるのは、こういうところも要因のひとつな気がしている。


今回も語学学校の規定に沿った対応をしてきているので、そのままルール通りに処理されないように、むこうが忘れてしまっている部分をもう一回テーブルに並べ直す必要があった。
「なかったコトにするな!!」と感情的になるのではなく理論的でなければ、相手にはされない。


自分で書いていても面倒くさくて仕方がないのだが、そこで投げ出したら自分の言い分が通らないどころか、無いことにされてしまう。
私としては、どういう結果になるとしても、無いことにはされたくないのでここは使うべきコストなのだろう。

しかもどれだけ話が戻されたり変わったりしても、「え、忘れちゃったんですか? いやだなぁ、もう一回言いますね?」くらいのメンタルの強さが必要になってくる。こういうときに、フサフサが本当に役に立つ。



それにしても、
今回の騒動が、私にたくさんの気づきと経験を与えてくれている。
そしてフサフサの心臓が、冷静さを保とうとする自分を助けてくれる。
心臓フサフサ万歳だ。



とはいえやっぱりかなり面倒なので、
もう別の方法で勉強をすすめようかなと思っている。
語学学校はほかにもあるし、勉強方法もたくさんある。
この学校にこだわる必要もないし、誰かから学ぶことだけが勉強でもない。

フサフサの心臓を手に入れたことで、
以前よりも広い視野と多くの選択肢を得られた気がする。
この件については流石に疲れてきたけれど、自分の思ったことを冷静に伝えられているから、自分の言動に後悔はまったくない。



”Sobald du dir vertraust, sobald weisst du zu leben.”
ー 自分を信じれば、どう生きればいいかがわかる。 ー



フサフサで防御力が上がったハートを持つ私だけれど、
このゲーテの言葉は、心にしっかりと響いている。

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