見出し画像

どう違う?「タレントマネジメント」と「タレントデベロップメント」

人的資本経営が注目される昨今、本格的にタレントマネジメントに取り組む企業が増えています。

一方、その取り組みに関連のあるタレントデベロップメントを加速させる企業も出てきています。

両者の違いはどこにあるのでしょう?


「タレントマネジメント」と「タレントデベロップメント」、違いは対象とアプローチにある


両者とも人材を最大限活用するための取り組みですが、その対象とアプローチは異なります。違いを見てみましょう。

まず、タレントマネジメント(Talent Management)が対象としているのは、その組織に属する全社員です。

アプローチとしては、スキルや経験などの人材データを管理し、人材の採用、育成、配置、報酬などの組織運営に活用するものです。つまり、組織のパフォーマンスを最大化するための人材マネジメントなのです。


一方、タレントデベロップメント(Talent Development)が対象としているのは、個人の能力開発やキャリア成長です。

研修、コーチング、メンタリング、自己学習支援などで個人の能力・キャリア開発に取り組みながら、目標設定とパフォーマンス評価を行うことで、個人の成長を後押ししていきます。結果、それらが組織全体のパフォーマンス向上につながることを期待しています。


さて、両者は対立関係にあるのでしょうか。内容を見ていただくとお分かりの通り、タレントマネジメントとタレントデベロップメントは、むしろ相互補完的な関係にあります。

関係性を言語化すると、タレントマネジメントはHRM(人材資源管理)全体に活用するものですが、タレントデベロップメントはそのうち、個々の能力開発とキャリア成長に焦点を当て、主に育成や評価に関与していくという位置づけなのです。


組織のパフォーマンス最大化を狙うなら、自社にはどっちが最適?


さて、タレントマネジメントとタレントデベロップメントは相互補完的な関係にあるものの、日本企業に導入する際にはいくつかの工夫が必要です。そのポイントについて詳しく見てみましょう。

まず押さえておきたいのは、タレントマネジメントの基本的な考え方は「適材適所」であるということです。つまり、職務や必要な能力要件などを定め、それらに適した人材を配置することで成立するものです。それはまるでパズルのように捉えられるでしょう。

しかし、この仕組みの難しさは、そのパズルの形が刻々と変化する点です。すなわち、環境変化に応じて仕事内容も変わっていく中で、職務や必要な能力も変わっていきます。その変化に対して、必要に応じて人材を入れ替えられれば良いですが、日本の雇用環境は欧米とは異なり、長期的な雇用が一般的であるため、柔軟な人材配置が難しいことがあります。欧米を中心に発展してきたタレントマネジメントのアプローチをそのまま導入するのは難しいのです。

そもそも日本企業は、総合職という言葉に代表されるように、ジェネラリスト志向が強い文化です。社員にも単なる仕事の遂行だけでなく、成長と変化への適応能力を高めることに重点を置いてきた組織運営を行ってきました。これはタレントデベロップメントの要素が組み込まれたアプローチです。手段の多くは実際の業務を通じた成長支援(つまりは、難しい仕事に放り込んで育てる)でしたが、企業側も従業員の能力・キャリア開発に積極的に関与し、個々の成長を促進してきたのです。

結局のところ、タレントマネジメントもタレントデベロップメントも手段に過ぎず、組織の特性や文化に合わせて調整されるべきです。相互補完関係と言いながらも、どちらを中心に据えるかはケースバイケースで、両者をうまく統合することが成功の鍵と言えるでしょう。

★元ネタはこちら


この記事が参加している募集

人事の仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?