桜海 とあ

時々、金髪メイド服で徘徊したり、小説書いたり、ゲームの企画や原作やったりしてます。 ブ…

桜海 とあ

時々、金髪メイド服で徘徊したり、小説書いたり、ゲームの企画や原作やったりしてます。 ブログのお引っ越してきました。note初心者です。 https://lit.link/toaowmi

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  • 余命14日間の彼女と青信号を渡れない僕

  • 彼朝ごはん

    「彼朝ごはん」のまとめです

  • 溺愛する猫耳魔法少女とリアルで会ったら、イケメンだったのだが

    「溺愛する猫耳魔法少女とリアルで会ったら、イケメンだったのだが」の全話をまとめたマガジンです。

最近の記事

余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *12話*(最終話)

#創作大賞2023  それから数日後、病院を抜け出した。いつも通りに検査を受け、いつも通りの日常を送った。”火曜日の15時” 病棟に到着する郵便配達の時刻に合わせて、私は病室を出た。  手紙を受け取った母は、それが私の置き手紙だと気づいて、追いかけてくるだろう。けれども、もう病院の電子音を聴きながら眠る日々は、耐えられなかった。残りの命を空気の澱んだ病室で送るなんて、まっぴらごめんだ。  —— 自宅の玄関を開ける。  家の扉を閉めると、途端に先ほどまで喚いていた蝉の音が

    • 余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *11話*

      #創作大賞2023 11話  思わず叫んだ彼女の名前が冷たい空気をボッと燃やして、周りの人々を息苦しくさせた。ストレッチャーの傍で、銀色の点滴をぶら下げるポールを走らせていた若い看護師が険しい形相のまま顔をこちらへと向けると、「あの、患者様のお知り合いですか?」と、訝しげに尋ねた。その声の渇き具合に心臓が押しつぶされる。  何を言えばいいのかなど準備しているはずもなくただ、酸素の薄まった頭の中から必死で言葉を取り出そうと口を動かした。 「え……ええ。いや、あの知り合い

      • 余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *10話*

        #創作大賞2023  魚の群れの間を通り抜け、海の底へと進む彼女の姿を覗く。岩肌に手をつき、流れるような動作で黒い姿を掴むと、地面を蹴り、浮上してくる。 「ぶは!!!」  大きく息を吐きだして、水面から現れた。 「採った?」 「はい!」  ラバーの手袋に突き刺さったまま、棘だらけの姿を僕に誇らしげに見せた。それを受け取り、裏返し、固い殻の隙間にナイフを突き刺して半回転させる。痛みを感じたのか、必死で棘を振り回されたが、外側のヌタを除き、内側にあるオレンジ色の塊を指先

        • 余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *9話*

          #創作大賞2023  瞼を持ち上げると、無音の世界が広がっていた。透き通るか体から両手を伸ばした。長い触手が伸び、長い脚が自分の腕に絡みついてる。こすりつけた足から沢山の泡が生まれ空へと浮かんで僕の視界を消し去った。  月は、僕の真上にあった。ここは、海の底だ。  自分ががいる場所がわかると、滑ったゼリー状の幕に覆われた僕が何者なのかもわかった。海蛍だ。僕が掻いた水面には青白い光の筋が残ってた。自分が何者か気づいたら、何をすべきなのかもわかった。砂の中から出た僕はほんの

        余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *12話*(最終話)

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        • 余命14日間の彼女と青信号を渡れない僕
          12本
        • 彼朝ごはん
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        記事

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *8話*

          #創作大賞2023 8話  それに彼女は戸惑ったように瞳を揺らした。揺れる彼女の瞳を見つめる。その奥に隠した想いを暴きたくて、一歩彼女へと近づいた。 「あ、蒼央さん?」 「志歩ちゃん。僕さ」  突然、頭上のスピーカーから、5時30分を告げる音楽が流れ出した。デジタルな歌に彼女がクスッと笑う。 「良い子は帰る時間。らしいです」  彼女の笑顔に釣られて、笑ってしまった。 「そうだね、帰ろうか」  既に周りは真っ暗になったなかゴーストシャークへと戻ると、ウッドデッ

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *8話*

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *7話*

          #創作大賞2023  「ちょ、大丈夫? 救急車」  「……だ、……め!」 と苦しげに息を吐く彼女が、僕の腕を強く掴む。 「へ、平気だから……、なんでも無いから!」  何もできないまま、全力疾走をした後のように荒い息を吐く彼女の隣へとしゃがみこんだ。少しずつ呼吸が戻っていき、またゆっくりとした呼吸へとなった。僕の言葉で、彼女を苦しめたんだろうか? 傷つけたんだろうか?   彼女の隣にしゃがみ込んで視線の高さを合わせた。 「……僕さ、ずっと一緒にやって来た奴らがやめて

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *7話*

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *6話*

          #創作大賞2023  仕事を終えて、ようやく布団へと潜り込めるようになった時はもう23時を回っていた。疲労感が身体の中心にどしりと腰を下ろしている。さっさと寝てしまおうと、布団を畳の上に敷いていると、扉をノックする音がした。扉を開けるとそこに立っているのは志歩ちゃんだった。 「……眠れなくて、一緒に寝てもいいですか?」  彼女を部屋へと招き入れると、彼女は布団の敷かれた6畳間へとズンズン進んでいく。押入れの中から、布団を取り出すと、畳の上に布団を敷き始めた。 「へ?あ

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *6話*

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *5話*

          #創作大賞2023  海へと顔を向ける。 「ああ、たぶん、海ほたる」 「海ほたる?」 「そう。海の中に住む甲殻類。夜になると砂浜から出てきてさ、海に入るの。 波に反応して光ってるんだと思う。見たこと無い?」  この町の常識を、観光に来た彼女が知らないのも無理は無い。 「ありません。全く」  背後に居る彼女に声を掛けた。 「見たい?」 「はい!!」    元気のいい返事が戻ってくる。バイクスタンドを下ろして、海岸沿いのガードレールのそばへバイクを止める。ガードレール

          余命14日間の彼女と、青信号を渡れないボク *5話*

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *4話*

          #創作大賞2023  立ち上がろうとした僕の腕を彼女は掴んだ。 「そばに……、居てもらえませんか?」  彼女の赤い唇から溢れる呼気が熱い。太陽の熱に毒されているその表情。この熱は、日傘なんかじゃこの暑さを遮れない。少女の細い二の腕を掴むと、ぬるっと指先が滑った。 「この状態じゃ危険だから、どっか涼めるところにでも入らないとさ」 「涼めるところ」  ぼうっとした表情を向ける少女が、僕の言葉を反芻する。彼女の唇からこぼれ落ちた言葉は何だか妖しげに響いていて、慌てて説明を

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *4話*

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *3話*

          #創作大賞2023 *    病室へ行くと、テレビがついたサイドテーブルに、黒い手帳が置かれていた。オレンジ色の付箋がハラリと落ちて、拾う。手帳へと挟もうと広げると、安寿海の街の地図が現れた。花丸がついた地図には、新開発地と旧土地との境目が赤いペンでワニの歯みたいにジグザクに引かれている。僕が家を出る前、親父は安寿海の再開発に力を注いでいた。  他所からこの地へと移り住んできた人に街の景観を揃えるために市が推奨するオレンジ色の屋根の家を売りつけ、古い住民にはオレン

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *3話*

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *2話*

          #創作大賞2023  息を吸い込むたびに体の温度があがっていく。湿気の高い熱気が肌にまとわりついてきて、首に巻いたタオルで顔の汗を拭っても拭っても汗が噴き出してくる。この土地にあるのは、海、太陽、そして日本家屋が立ち並ぶ古い街並みだ。  ここは結城郡、安寿海町。地元の人間はこの土地を、”あずみ”と呼ぶ。  昔の海はよく荒れ狂う海で、嵐になると、海近くの土地を家ごと攫っては、海の底へと変えていった。災害が起きたら、受け入れるほか無かったこの地に、一人の女がやってきた。

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *2話*

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *1話*

          #創作大賞2023 #恋愛小説部門 余命14日間の彼女と、青信号を渡れない僕 第1話     25歳、元ユーチューバーの僕がJ Kに告られた。  いや……、正確に言えば、余命14日間の少女に“買われた”。  「100万円あげますから、私の彼氏になっていただけませんか?」  目の前にいるのは、セーラー服姿が眩しい美少女だ。彼女は少女漫画の主人公みたいに大きな瞳。肩先で切り揃えられたサラサラの黒髪の持ち主。太陽を寄せつかせない真っ白な肌には丸い球の汗が浮かんでいる。よく

          余命14日間の彼女と青信号を渡れないボク *1話*

          彼朝ごはん 4話「土鍋ご飯とあごだし赤味噌汁」(2)脚本版

          #創作大賞2023 第4話 「土鍋玄米ご飯とあごだし赤味噌汁」(2) * ○デザイン部フィッティングルーム(日替わり)  澪と結衣、資料とサンプルの布が山積みになった大きな裁断台を挟んで向き合っている。テーブルの上には、箱が置かれている。 それを神妙な面持ちで見つめる二人。 結衣「そのパンドラの箱が、こちらとな」  と、結衣が箱を見つめる。  ファイルと資料の紙束に埋もれている中、箱にスポットが当たり、どこか凛とした空気を放っている。 結衣「しかも高級ジ

          彼朝ごはん 4話「土鍋ご飯とあごだし赤味噌汁」(2)脚本版

          *エッセイ* 初めて逆ナンした話

          #創作大賞2023  #エッセイ部門 はじめに  初めましてな人も、そうでない人もこんにちは。桜海とあです。  現在noteは創作大賞2023のエントリー期間です。エッセイ部門にも参戦してみようかなと思い、先日Twitterの方で、アンケートを取りました。(需要がある方がいいのかな。という安易な考え)    ということで、今回のnoteのエッセイは「初めて逆ナンをした話」です。今までも某サイトやアプリでプライベートなお話を綴っておりました。そちらをご覧になった方、リア

          *エッセイ* 初めて逆ナンした話

          彼朝ごはん 3話「土鍋玄米ご飯とアゴだし赤味噌汁」(1)(脚本版)

          #創作大賞2023 3話 「土鍋玄米ご飯とアゴだし赤味噌汁」(1) ○デザイン部・廊下(朝) 澪N「4月も中頃に入った季節。だいぶ暖かい日も増え、少しずつコートを脱いで春物へシフトしていく頃合いでしょう。本日は絶賛デスマーチ中のデザイン部へとお邪魔しています」  澪、大きなトレイを抱え、廊下を歩く。  トレイの上には、「おむすび」が大量に並んでいる。 澪N「早朝、デザイン部のフィッティングルームへと向かうと、トルソーを囲んだ状態で腐乱死体化しているデザイナーたちへと

          彼朝ごはん 3話「土鍋玄米ご飯とアゴだし赤味噌汁」(1)(脚本版)

          彼朝ごはん 2話 「帆立と黒米のお粥と、ざるどうふ」(脚本版)

          #創作大賞2023 第2話 「帆立と黒米のお粥と、ざるどうふ」 ○フィッティングルーム・内 澪M「……誰? あの髪、まるでライオンみたい」  大我と目が合う。  途端に大我は両手に抱えていたカラー帳をバサバサと床にぶちまける。  一郎が大我に 一郎「何やってんだよ!」 大我「すみません!」  ファイルを拾いながらも大我、澪を凝視。  結衣、大我に気づいて、 結衣「ごめんねー。あの子、最近入ったばっかでさ」 澪「ガン見してるな。とは思った」 結衣「ヤツ外そう

          彼朝ごはん 2話 「帆立と黒米のお粥と、ざるどうふ」(脚本版)