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『時々、慈父になる』by 島田雅彦

『時々、慈父になる』by 島田雅彦

島田雅彦の『時々、慈父になる』を読んだ。
『君が異端だった頃』の続編とも言うべき、自伝的私小説。
フィクションであると断りがあるが、著者曰く内容はほぼ事実であるとのこと。ただ、どうしても事実通りにとはいかないところを脚色するのでフィクションということにしているそう。

島田雅彦の著作を読むのは、昨年読んだ『パンとサーカス』以来となる。
『パンとサーカス』は、首相が暗殺されるという内容が、刊行された

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『君が異端だった頃』by 島田雅彦

『君が異端だった頃』by 島田雅彦

島田雅彦氏の『君が異端だった頃』読了。
図書館で何の気なしに借りて、読み始めた。
「君」という二人称を使い、作家自らが語った自伝。幼少期から、30代に差し掛かった辺りまでの物語で、4つの章からなる。

東京外国語大学在学中にデビューした作家は、文壇からのはみ出し者であるかのような記述もあるが、読んでいるとむしろ先輩諸氏に可愛がられた印象が強い。文壇バーなどがあった時代があったことを知っていた最後の

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『恐るべき子ども グラン・ブルーまでの物語 』by リュック・ベッソン

『恐るべき子ども グラン・ブルーまでの物語 』by リュック・ベッソン

リュック・ベッソンといえば、まず『グラン・ブルー』そして『レオン』、『ニキータ』などの作品が思い浮かぶ。

なかでも『グラン・ブルー』は伝説のダイバー、ジャック・マイヨールとエンゾ・マイヨルカをモデルとした海の物語。潜水記録を作ったこと以外、ストーリー自体はフィクションだという。

この映画でジャン・レノが演じるエンゾ・モリナーリが大好きで、これでジャン・レノのファンになった。その彼が、リュック・

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『インドラネット』by桐野夏生

『インドラネット』by桐野夏生

桐野夏生の『インドラネット』読了。
今回の舞台はカンボジア。

幼馴染だった美貌のきょうだいの消息をつかみに、主人公がカンボジアへ向かう、それにまつわる物語・・・なのだが。
一体、どんな方向へと誘うストーリーなの?と訝りながら読み、どんどん増えてくる得体の知れない登場人物に加え、消息のつかめないきょうだいの父親が反政府側の政治家であったことなどがわかるにつれ、さすが桐野夏生だなぁ面白くなってきたわ

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『クソったれ資本主義が倒れたあとの、もうひとつの世界』by ヤニス・バルファキス

原題は『ANOTHER NOW Dispatches from an Alternative Present』
邦題は、随分意訳したものだと思うが、まぁ雰囲気は出ている。

ヤニス・バルファキスのこの著書については、年末頃にダーリンが今読んでいるが面白いというので図書館に予約した。ただ、注目されているのか予約が集中しているようで、先に『黒い匣』を読んだらヤニス・バルファキスにすっかりハマってしまっ

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『半沢直樹 アルルカンと道化師』by 池井戸潤

『半沢直樹 アルルカンと道化師』by 池井戸潤

このところ、3冊の本を立て続けに読み終えた。
そのうち『半沢直樹 アルルカンと道化師』は半沢直樹シリーズの最新刊だが、時系列としてはこれまでのシリーズのトップにあたるらしい。
今回の半沢は大阪西支店の融資課長。確か、ここで手柄を立てて東京へ戻ってさらに暴れていくんですよね。一応、これまでの著作も全部読んでいるし、ドラマも大体観ている。だから、半沢といえば堺雅人だし、渡真利といえばミッチーしか思い浮

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開高健の『闇』シリーズ

開高健の『闇』シリーズ

勝手にシリーズ化していいのだろうかと思うが、開高健の『闇』シリーズの最後、『花終る闇』を読み終えた。
こちらは、一冊に未完の『花終る闇』と『一日』が収められている。

『花…』については、女の殺し方がわからんと誰かに話したというエピソードを読んだことがあり、フサ、弓子、加奈子という3人の女性が登場するが、加奈子が『夏の闇』の「女」であることはすぐにわかる。

ドイツの大学での研究室勤務が決まり、束

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『珠玉』by 開高健

『珠玉』by 開高健

開高健の最後の作品と言われる『珠玉』を読み終えた。

『掌のなかの海』
『玩物喪志』
『一滴の光』

この三編からなる。
アクアマリン、ガーネット、ムーンストーン。この3つの貴石へのオマージュのような短篇となっている。

1989年10月、最後となる入院の前に編集者に原稿を渡し、亡くなったのが12月。『珠玉』発表されたのが亡くなった直後の1990年1月の『文學界』だったそうで、これが絶筆となった。

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『輝ける闇』by 開高健

『輝ける闇』by 開高健

開高健の『輝ける闇』読了。

ベトナム戦争の最中、週刊朝日の特派員という形で取材に入った体験を基にした小説だ。
これは小説なのか?と思うくらい、ノンフィクションに近いものだと思う。
北康利の『最強の二人』でベトナム戦争に赴き、九死に一生を得たことは知っていたのだが、この『輝ける闇』のラストシーンはこれだ。
おそらく、ここは開高健の体験そのものなのだと思う。
200人の部隊が17人しか残らなかったと

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『あちらにいる鬼』by 井上荒野

『あちらにいる鬼』by 井上荒野

最近、井上荒野の『あちらにいる鬼』という小説を読んだ。

ご存知の方も多いと思うが、井上荒野氏は作家、井上光晴のお嬢さんであり、2008年に『切羽へ』で直木賞を受賞している。
彼女の著作もわりと多く読んでいると思う。

実はこれもまた、図書館でなぜ予約したのかまったく覚えていなくて(予約してから手元に来るまでかなり時間がかかったということもあり)なんの予備知識も持たずに読み出した。
白木という作家

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開高健

開高健

今更ながら、開高作品をいくつか読んでいる。
『夏の闇』と短編集の『ロマネ・コンティ・1935年』、山口瞳氏と共著の『やってみなはれ 見とくんなはれ』、没後に、親しい人達の追悼の言葉をまとめたものなど。
今は『輝ける闇』を読んでいる途中。時系列はバラバラ。

北康利氏の『最強の二人』から入ったので、その越し方と背景が予め頭に入っていて、それから読み始めるといういわば逆算的な、変則的な読み方になってい

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『わたしの開高健』by 細川布久子

『わたしの開高健』by 細川布久子

先日の『最強の二人』からの開高健シリーズ。
『輝ける闇』や『夏の闇』も手元にあるのだけど、簡単に読めそうなこちらから読んでみた。

著者は元々は熱烈な開高健ファンであり、関西から東京へ出て開高健へのつながりを求める中で幸いにも縁を得る。そして、一時は私設秘書的な役割を務めていたこともあったという。布久子という名前は、本当は福子のところ、開高の命名でこの漢字に変えたそうだ。

『面白半分』という半年

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『最強の二人 開高健と佐治敬三』by 北康利

『最強の二人 開高健と佐治敬三』by 北康利

この本をなぜ図書館で予約したのかは、忘れた。(笑)
予約本が用意できたと知らせがあって、この本が手元に来た時に我ながら?だったのだけれど、結論から言うととても面白かった!

実は、開高健のことはあまり知らない。山口瞳と共に、サントリー宣伝部だったことは有名でそれはさすがに知っている。サントリーは成人の日に山口瞳によるメッセージを新聞広告にしていたよね。最近は伊集院静だけど。

この本ははじめ、佐治

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『黒い匣』by ヤニス・バルファキス

『黒い匣』by ヤニス・バルファキス

著者のヤニス・バルファキスはギリシャの元財務大臣で経済学者である。

友人が今、こんな本を読んでいると教えてくれたのが、『くそったれ資本主義のあとのもう一つの世界』。一体その胡散臭いタイトルはなに?と訝しんだが、その著者がヤニス・バルファキスだった。
そこで彼の経歴を調べた。ギリシャ経済危機のときの財務大臣で、在任期間は2015年1月~7月。わずか7ヶ月で辞任していたことを知る。在任期間がとても短

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