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小説 「つくね小隊、応答せよ、」

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第二次世界大戦末期。 東南アジアの、とある島。 米軍の猛攻により、日本軍は転戦(撤退)し続け、日本兵たちは、ちりじりに離散した。 そんな中出会った別々の部隊の若い日本兵の3人、… もっと読む
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「しろい仔犬。ひきょうなぼく。」

この文章は、 小説「つくね小隊、応答せよ、」 のあとがきです。 上記の小説並みのグロテスク…

「つくね小隊、応答せよ、」(最終話)

東京から汽車に乗り継いで、駅で降りる。 ここから渡邉の食堂へは、路面電車だと20分ほどだ…

「つくね小隊、応答せよ、」(壱)

昔々、あるところに一実坊弁存という旅の僧侶がいました。 弁存は旅をして、仏の教えを人々に…

「つくね小隊、応答せよ、」(弐)

「艦砲射撃っっ!!!!」 叫んだと同時に、3人別々の場所へ飛び、伏せた。 きゅるるるるる…

「つくね小隊、応答せよ、」(参)

艦砲射撃の爆発で、土の中からはるばる飛んできたモグラ。そのモグラに串を刺し、火でじっくり…

「つくね小隊、応答せよ、」(四)

その3つの影を見て、恐怖が弁存を包みました。 みっつの影は、薄くぼんやり白く光っています…

「つくね小隊、応答せよ、」(伍)

「…で?娘は、食われたのか?」 夜の闇の中で、仲村が訊く。 「ああ、そうだな。食われた。おそらくは、そのもぐらみたいな感じじゃねえか?」 清水がモグラを顎で指し示す。先程食べたモグラの骨の残骸が、地面に転がっている。背骨に肋骨に骨盤。 すると仲村は、そのモグラの骨に手を合わせ、なんまんだぶなんまんだぶ、と神妙につぶやいた。 「おい、清水、その、台詞とか、描写とかは、ほんとに昔話そのものなのか?昔話っていうよりまるで活動写真みてえじゃねえか」 渡邉が身を乗り出して清

「つくね小隊、応答せよ、」(六)

光前寺は、信州駒ヶ根の山の麓の寺です。苔むす石垣と林の中の石畳。その長い道の先に、本堂が…

「つくね小隊、応答せよ、」(七)

夏の真夜中。 密林。 這って進む渡邉の耳には、誰かが小声で言い争って、そしてそれを誰かが…

「つくね小隊、応答せよ、」(八)

「久や、久、これ、久蔵、こっちよ」 「え、ここ人んちじゃないの?」 「うん、人様のお店じ…

「つくね小隊、応答せよ、」(九)

天保といやあ、まあ今からだいたい100年くらい前だな。ばあさんが話してくれた話っていうの…

「つくね小隊、応答せよ、」(十)

「道雄、おい、道雄、大丈夫か?」 渡邉道雄はゆっくりと目を開ける。 目の前には、心配そう…

おめぇの胸ん中にも、灯りになるような思い出があんだろうが

大正2年。 正月の、大雪の夜。 酒に酔った父が息子の義照を蹴りながら言う。 正月から葬式…

「つくね小隊、応答せよ」(十一)

三人は、密林を早足で進む。 長い歩兵銃に銃剣を装着し、繁る枝葉を薙ぎ払う。 「敵さんは、空から偵察、日本人がいたら船に位置知らせて、艦砲射撃で森ごと壊す。しばらくしたら戦果確認でまた偵察機が来るだろう。見つかればまた同じ目だ。とにかくここから離れるぞ」 艦砲射撃を受けた岩場で、渡邉が言い放つ。 渡邉のその一言には説得力があった。 清水も仲村も、なにも言わずに頷く。 ふたりとも、渡邉にぶん投げてもらわなければ、自分の何百倍の大きさの漬け物石に潰されていた運命だったか