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革屋と本屋のヨシナシゴト往復書簡003

皮革の仕事に携わる河合泉と
本屋を営む新井由木子の
たわいもない『ヨシナシゴト往復書簡』
vol.03「万引きはゆるすまじ」2024年02月10日

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河合さんへ

ブルガリア民謡、早速youtubeで見てみましたよ。
エキゾチックな不協和音。
わたしの好きなホラーゲームなどで主人公が異世界で彷徨うシーンなどに、こんな音が流れたりします。
感性の不思議な部分を震わせる音だと思いました。

そして、レザレクション林さんに繋いでいただいてありがとうございました!
河合さんが力を注いできたsoka-letherと、林さんが代表を務めるレザレクションの合同イベントでお会いした林さんは、とても柔らかな雰囲気を纏っておられたことに、なんだか少し驚いてしまいました。
鹿の命の現場は壮絶であること、想いを事業にすることは生半可なことではないことを想像すると、もっと激しさを感じるかと、勝手に想像していました、、、。

川越の霞ヶ関ではverminの展示が始まりました。
つまずく本屋ホォルの深澤さんが展示に寄せてくれた文章も面白いし、mibunka吉田さんが作った展示の構成も良くて、こんなに力を傾けてくれるなんてと、すごくすごく嬉しくなったんですよ。

つまずく本屋ホォル・mibunkaでの展示
鹿の一枚革を吊りました
北海道の考察も!
パネル展示や選書も!(展示は2024 2月に終了しています)

しかし、展示といえば残念だったことが。
今回の展示ではなく他店のことだったのですが、verminの展示で新品を1点と、展示していたわたしが育てていたverminが、ぬすっとに万引きされてしまったのです!!!
こんなにも思いのこもった製品を盗むなんて、と、そのお店の店長さんもとても残念がり、なんと身銭を切って補填をしてくださいました。
店長の人間性に触れ、この感謝の思いは忘れず必ず恩返ししたいと思います。

万引きは売り上げをゼロにするだけでなく、仕入れ経費も棒に振らせるばかりか、その製品にかけてきたひとびとの努力と忍耐と希望を踏み躙(にじ)る悪行です!

暴力の中でも、ひとの気持ちや努力を想像できなくて、ひとの痛みに『無関心』という暴力は、とても質(たち)が悪いと思います。
万引き、いじめ、詐欺、圧倒的な力関係の差による圧力。
片方が泣いていて片方は笑っているようなシーンを目にすることはあまりに多く、そんな時は人間が嫌いになりかけます。

ぬすっとは、きっとこの先あまりいいことが無いですよね。
自分のしたことは必ずこの先、自分で精算しなければならない日が来ます。
わたしも精算したときに、わずかでも良いもののほうが残るように、必死でがんばりたいと思いました。

ともあれ、それを反映してホォルさんmibunkaさんは展示のしかたにも工夫をしてくださり、verminは手に取れる形でありながら、選ぶときにはひとりひとりをご案内するようにしてくれました。
そしてなんと、verminは早速売れ始めています!
(2024年3月時点でVermin first seasonは販売しました)

怒ったり喜んだり鼻息荒く、まとまらない手紙となりました。

ペレカスブック新井より
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新井さんへ

万引き許せないですね。
同じ革の製品でも大谷翔平はグローブを子どもたちにプレゼントしているというのに、万引きなんて。

レザレクションの林さんは、いつでも穏やかな方ですが
格闘技の経験がおありとの事で、
本当に強い人は優しいんだなと思いました。

人間が生きるためには色々な命をいただいているわけで、
エゾシカ含む動物と一緒に生きるために適正な数にしておかなければならず。
その責任をもって、美味しいお肉を@porowaccaで販売し
皮は草加を通って革になり@leathrectionブランドでバッグなどを作り、
もっともっと廃棄を少なくしようと本当に一生懸命動いていらっしゃいます。

先日草加にいらした方が、
「猟師さんて山で獲れた獲物を売っているので、利益率が大きいですよね」
とおっしゃっていました。
とんでもない‼ 狩猟に行っていただくとわかりますが、
現場は過酷です。狩猟のやり方もいろいろありますが
しのび猟と言って、シカの通り道を何時間もずっと待っていたり、
時にはクマなどに遭遇するなど命の危険もあるわけで。
私など一度見学させていただいただけですが、本当にハンターさんはスーパーマンのようです。

レザレクションのある北海道北見
ハンターは道なき道を踏み分けて森に入ります

都会に住んでいると、かわいそうだし無理に獲らなくてもいいのでは?
と思うかもしれませんが、本当に山の木が食べられて枯れて、
動植物の生態系が変わったり、それによって川や海の水質が変わってしまったり、
年間通して大事に育てた作物が一晩で食べられる被害もとても多く、
離農の原因のひとつにもなると思います。
野生動物を適正な個体数にすることは大切なことなのです。

新井さんがその想いを汲み取ってVerminを作ってくださった
と思うと、本当にうれしいです。

にしても、世に盗人の種は尽きまじ。
新井さん、店長さん、怒ってよいと思います。
その輩は、靴下のつま先が一生ずっと濡れているようにと呪っておきます。

急に寒くなってしまいました。
風邪ひきさんが多いので新井さんもお気をつけください。
ではまた。

河合 泉

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河合泉
埼玉県草加にある皮革工場『河合産業株式会社』。
家族が営む同社を手伝う傍ら、草加の皮革「SOKA LEATHER」のPRを努めている。落語が好き。

新井由木子
埼玉県草加市の小さな書店ペレカスブックを営みながら、町の工場と力を合わせて『読書のおとも』を作る。酒が好き。落語も好き!!

ハンターさんからいただいた鹿の写真です


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