山椒一味

繊細な心もちで、強く生きる。

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隕石

隕石の研究をしている先生の講義を受けて、地球に存在する物質というのはそもそもすべて宇宙からもたらされたものだ、という話を聞いた。 地球上には地球の環境では生成できない物質がたくさんあり、それはどこからくるかといえば宇宙なのである。言われてみればその通りなのだけれど、そういった視点をもって日常を過ごした経験がなかったので、とても不思議な気持ちになった。隕石というかたちで、時に生物のほとんどを滅ぼしながらもたらされた未知のギフト。それが今この世界を構成する物質なのである。ぞわぞわ

    • 混沌から抽出

      見た目が邪魔って良く思う。服とかお化粧とか香水とか、見た目を彩る行為自体はとても好きなのに、それが他者の目にさらされ、評価されるのは、けがらわしいと感じる。たまに見た目を綺麗って言ってくれる人がいて、それはとっても嬉しいし、ありがたいことだし、コミュニケーションだと思うけれど、同時にそれっておしゃれなインテリアと変わんないじゃんと天邪鬼も出てくる。初対面のひとに品定めみたいにみられるのも苦手。性別とかも邪魔だなと思っていて、一人でいる時、私は私でしかないのに、他者が介入すると

      • 「眠るのは嫌い 夢を見るから」

        「夢」というのは不思議な言葉で、睡眠中に見る幻覚も「夢」というし、現実に思い描く空想も「夢」といい、未来への計画も「夢」という。自分の経験や思考の延長にある、内的にあふれてきた実体のないものが「夢」であるわけだ。 私は元来、夢のない子どもだった。小さいころから「将来の夢は?」と聞かれることが苦手。強いてあげられる私の夢といえば、もうずっと昔から決まっていて、誰にも気づかれず、悲しまれず、この世の誰ひとりの記憶にも残らず死んでいきたいというものだ。そこに終着できるのであれば、

        • 駐禁と吹き溜まり

          「花の色は うつりにけりな いたづらに」と小野小町が詠ったように、桜というのは本当にあっという間に散っていく。 花のそのすぐ後ろには、緑が小さく待機していて、花が散っていくのと反比例してぐんぐん伸びる。と思ったらその緑はすぐ濃くなり、雨水にぎらりと光るようになる。 ひとりでいたいなぁというのは、昔からずっとそうで、何をするにも黙々と鍛錬のようにひとりで行うのが好きだった。 人形遊び、ザリガニ吊り、木登り、一輪車、ジグゾーパズル、バードウォッチング。お絵描きでも、その時に好き

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          真面目の才能

          カタツムリがのろのろと茄子を食べる動画をTwitterのタイムラインに見て、ふと、カタツムリは何年くらい生きるんだろう、と思った。 調べたら、大きい奴は十年以上生きるのだそう。あの体長で十年生きるってのはすごい。 ハツカネズミは一年で死に、カタツムリは十年生きる。うちの飼い鳥は今年で十年目くらいで、私は二十九年目。祖母は、この前の桜が満開の満月の夜に93歳で亡くなった。寿命は呼吸数だと思う。生き物が生涯にする呼吸数はみんな同じに決まっていて、ただどれくらいの速さでそれを終わら

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          ごあいさつ

          最近はもっぱらごあいさつにまわっています。4月で異動するので、さようならのご挨拶とよろしくお願いしますのご挨拶。 一般的な人と比べれば、圧倒的に他人と関わらずに生きているのですが、なんだかんだ京都に来て5年くらいになるので、挨拶すべき人は結構増えていて、あれ?時間たりなくないか??と思っているところです。ちょっとした文面だけでもいいかなぁと思って連絡を送ると、思わぬ所から京都にいるうちに会おうやと返ってきたり。学生の時は卒業式に対して、特になんの感想もなかったのだけれど、あ

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          血筋をめぐる冒険

          祖母が危ういとのことで、年末年始は母と姉と祖母の住む、山形に行きました。山形新幹線に乗っていると福島から明確に東北という気がします。福島を過ぎるともう、それ以降は雪が増えるばかりなのです。 祖母は現実と妄想の中をうろうろしていると、事前に聞いていたので、それなりの覚悟で帰省したのですが、私が来たからなのか、それとも祖母自身の生命力によるものなのか、かなりしっかりとお話ししてくれました。「覚えてる?」と聞くと「忘れないよ」と答えてくれて、やはり祖母は気高い人だなと思いました。

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          絶対絶対すごい

          私の好きなものは絶対すごいって信じながら生きてます。 絶対絶対すごい。 だってすごいものしか好きになりたくないから。 もちろん超絶エゴイズムな話なので、その人の表現したいものや対象とする人が変われば、なんか違うなっていうのが出てくるときもあって、その時は勝手に裏切られた気持ちになって落ち込んじゃう時もあるんですけど。 でもたまに絶対絶対裏切らない人っていうのがいるんです。 その一人が大森靖子さん。死んでしまった人が絶対裏切らないことはあるんですけど、大森さんは生きながら

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          くるまくるま、うみ

          今朝は閉まりかけのドアをぎりぎりですり抜けて、朝のホームに出ていく人がたくさんいました。師走ですからねぇと適当なことを思っていたら次の駅では高校生が駆け込んできて、そのままの流れで私のほうへ駆けて来ました。それで驚いて、何事かなと思ったら、私の隣の席に座っている高校生の頭をぺちんと叩いたんです。彼女たちは笑いあって、それからその様子を見ているほかの乗客に対して、少し恥ずかしそうにしました。ほとんどの乗客が「あ、いいなぁ」って思いながら見ていたので、全然恥ずかしがる必要なんてな

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          形而上学的プードル

          トイ・プードルの飼われ方が好きではなくて。 そりゃあもう、立派に飼ってる方がたくさんいるんでしょうけど、これはそう、もっと、形而上学的な話なんです。 そもそも私は昔からイヌというものに対面すると、居た堪れなさを感じます。動物は大抵好きですから、もちろんイヌのことも好きですし、可愛いとも思います。近くにやってきて人懐こくされたらデレデレとだらしなく笑いながら撫でてしまいます。 でも同時に≪なんかすまんね≫と思ってしまうのです。 動物というのは圧倒的に尊敬すべき存在で、一級品

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          好きなものは

          好きなものは玻璃薔薇雨駅指春雷 というのは鈴木しづ子の俳句。 あまりにもストレートに、冬の北風みたいに吹き抜けていく好きなものに対する気持ち。 好きなものは瑪瑙木犀萩羽骨秋雨 がわたし。 つまりは秋のものが好きなんです。 萩の花。 柔らかな枝にまるこい葉と赤紫の花がたわわに枝垂れているのを見ると、毎秋、心が泡立つ。 今年は夏の降雨量が多かったから、萩が花をよくつけたのだそう。職場の萩も見事な花山になっていた。京都の街並み。よく整えられた町家にも陶器の鉢に植えられたの萩

          好きなものは

          ひとりSF時代

          昔に出会った人も自分と同じだけ歳をとるのが面白い。 このまえライブに行ってきた。大阪は心斎橋のClub JANUS というところで、サニーデイ・サービスとSuiseiNoboAzのツーマンの企画。なにやら感染爆発してるし、どうしようかなぁと少し迷みつつ、感染対策はちゃんとしてくれているみたいだし、コソッとひとりでライブだけ観て、コソッと帰るくらいはいいかなぁと。会場はライブハウスといえど、今回は指定席制になっていて、私は入場一桁だったもんで、最前列の端の方だった。後ろでこそ

          ひとりSF時代

          ワクチン受けた

          Covid-19のワクチン接種一回目やりました。 打った直後は、ちょっと打ったところに違和感があるかなくらいだったんですけど、徐々に増す腕の痛み。24時間後には腕をおろしていても痛みがあって腫れてるし、ざわざわ寒気がしてきて、帰宅して体温計ったら38.0℃でした。わーお。 ひさびさにこんな高熱出しました。mRNA入れられただけでこんなしんどいんですか!!?って思いましたね。 筋トレとかでもどこの筋肉が収縮しているか意識すると効果が全然違うと聞きます。わたしは最近

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          巨人の肩の上に立つ

          「かいぶつが、あらわれた」 といのうは新潮社からトマス・ピンチョンの全小説・新訳版が出たときのコピーであります。 ピンチョンの小説が秘めている、まがまがしいエネルギーや、本そのものの重量感、一冊五千円程度というかなり大物なお値段。そのすべて含めて、帯に書かれたこのコピーは、目に飛び込んできた瞬間にぴたっときて、ずっと脳に残っています。 昨日、ライブを観に行って、このコピーがすこーんと脳内を走り抜けていきました。 誰のライブかっていうと柳原陽一郎さんのです。 今ま

          巨人の肩の上に立つ

          のみこむ

          朝露みたいにかなしさが下りてくる明け方がいちばんいい。少し薄ら明るくなってきたころに浅く眠り、数時間後に目覚ましに起こされる。 ワクチン打てるんだろうかなどと、うつらうつらかんがえている。 予約はしたけど、本当にあるのかな、わくちん。 本当にあるのかな、おりんぴっく。 こんなこと言ったらいけないけど、本当に信じられないことが多くて真剣に考えるのにも、くたびれてしまった。 今月から来月は楽しみなことが多くってうれしい。 その一端のことが今日あるので広島に向かっています。長

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          卒倒読書のすすめ 第八回 モナ・アワド『ファットガールをめぐる13の物語』

          「自分」に付随してくる、身体形質「女」というのはほんとうに厄介だ。 『ファットガールをめぐる13の物語』を読んでそう思った。 もちろん、そのほかの形質も厄介なんだろうけど、私は「女」なので「女」の話をする。 主人公エリザベスは太った身体に劣等感を抱いている女の子。インディーズ音楽とファッションを愛している。常に身体への不満と不安から感情が出発していて、太った自分を取り巻く世界に居心地の悪さを感じている。子供から大人へと成長し、やがて痩せていってもそれは変わらない。女友達、母

          卒倒読書のすすめ 第八回 モナ・アワド『ファットガールをめぐる13の物語』