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京都大学/国語(現代文)

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2023京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

2023京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

【2023京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は福永武彦「小山わか子さんの歌」(1949)。前書きに「次の文は、結核で亡くなった小山わか子を追悼して、東京療養所の短歌雑誌に発表されたものである。筆者も当時小山と同じこの療養所にいた」とある。
①段落。僕は小山わか子さんについて何ら識るところがない。僕はただ小山さんの死後に編まれた薄い歌集によって、その精神の流れを遥かに望

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2023京都大学/国語/第二問/解答解説

2023京都大学/国語/第二問/解答解説

【2023京都大学/国語/第二問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は森田真生『数学する身体』。著者は「独立研究者」を名乗る。前書きに「数学者・岡潔について述べたものである」とある。
①段落。終戦後には、本格的に念仏修行にも取り組み始める。農耕と、数学と、念仏三昧の日々の中、岡は「第三の発見」にたどり着く。
「…こうしたある日、おつとめのあとで考えがある方向へ向いて、わかってしまった。このときのわか

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2023京都大学/国語/第一問/解答解説

2023京都大学/国語/第一問/解答解説

【2023京都大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は福田恆存『芸術とはなにか』(1950)。著者は劇作家、演出家。保守派の論客としても有名。
①段落。演劇はあらゆる芸術の母胎であるようにおもわれる。ドラマはタブローに対立する。タブローは《見られるもの》であり、「ドラマは《為されるもの》であります」(傍線部(1))。それは舞台においてなにごとかが為されるというだけではない。…ドラマが

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2009京都大学/国語/第一問/解答解説

2009京都大学/国語/第一問/解答解説

【2009京都大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は柳沼重剛の随想「書き言葉について」。著者の専門は西洋古典文学(プルタルコス等)。
①段落。若いころ私は、偉い先生の下請けをして、いくつかの百科事典の執筆をやった。申し訳ないが、あれは今から思えば「ありがたい勉強になった」(傍線部(1))。百科事典の執筆はたいてい、項目ごとに「何行」と指定されるが、一般に、何行とか何字とか何枚とかい

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2009京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

2009京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

【2009京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は澁澤龍彦の随想「玩具のシンボル価値」。
①段落。しかし人間というのは気まぐれなもので、人間の遊びは、決して玩具によって百パーセント規定されるものではないのである。これは大事なことだと思うので、とくに強調しておきたいが、玩具のきまりきった使い方を、むしろ裏切るような遊びを人間は好んで発明する。そもそも遊びとは、そういうことで

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2010京都大学/国語/第一問/解答解説

2010京都大学/国語/第一問/解答解説

【2010京都大学/国語/第一問/解答解説】

出典は津島佑子の随想「物語る声を求めて」。筆者は小説家で、父は太宰治。
①段落。口承で伝えられた物語の世界はなぜ、私を魅了するのだろう。
②〜④段落…
⑤段落。試しにこうして、子どものころを思い出すと、そこには口承の物語がふんだんに生きていたんだな、と改めて気がつき、驚かされる。…
⑥段落。子どものころの世界は、音とにおいと手触りとでできあがっている

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2010京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

2010京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

【2010京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は木下是雄『日本語の思考法』。筆者は物理学者。著書『理科系の作文技術』は理系学生必携の書。
①段落。ひとに事実をつたえ、あるいは自分の考えをつたえるときには、その前に、言おうとすることを自分の頭のなかでおもてから見、裏から見して、もっとも本質的なことだけを洗いだし、それだけを書き、あるいは話すことが時代の要求である。しかし、

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2011京都大学/国語/第一問/解答解説

2011京都大学/国語/第一問/解答解説

【2011京都大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は長田弘『失われた時代』。筆者は詩人。
①段落。「おまえはじぶんが生きなければならないように生きるがいい」という言葉が、好きだ。ロシア革命直前のモスクワの貧民街に生きる人びとの真実を生き生きとえがきだしたロシアの作家レオニード・レオーノフの最初の長篇『穴熊』の第一部にでてくる、名もない老帽子屋がポツンと呟く印象的な言葉だ。
②段落。

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2011京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

2011京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

【2011京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は林達夫「文章について」。筆者は京都帝大出身の思想家。
①段落。書かれる言葉は、話される言葉と違って、実は時代や社会によってその使命や性格を非常に異にしている。…現代においては、それはたいていの場合目で黙読されるために印刷される運命にある言葉であり、少なくともそれを理想的境地として目差している。このように印刷されるということ

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2012京都大学/国語/第一問/解答解説

2012京都大学/国語/第一問/解答解説

【2012京都大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は尾崎一雄の私小説「痩せた雄鶏」。
①段落。「圭ちゃん来年の夏休み、お父ちゃんと二人で、国府津の海へ行くんだ」「ああ、いくとも。大磯へも、小田原へもいくよ。圭ちゃんと二人で」「うれしいな」。二女は、眠っているときにしばしば見せる、あの夢のような笑顔をする。父親と二人で国府津の海岸へ行く、という何の変哲もない空想が、どうしてこの幼女を

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2012京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

2012京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

【2012京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は米原万里のエッセイ「前門の虎、後門の狼」。筆者はロシア語通訳者でエッセイスト。
①段落。通訳の使命は究極のところ、異なる文化圏の人たちを仲介し、意思疎通を成立させることに尽きる以上、両者がいかなる文脈を背景にしているかを事前に、そして通訳の最中も可能な限り把握し、必要ならば字句の上では表現されていない、その目に見えない文脈

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2013京都大学/国語/第一問/解答解説

2013京都大学/国語/第一問/解答解説

【2013京都大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は中野孝次の随想『ブリューゲルへの旅』。
①段落。当時のそんな精神状態(※ 1944年、19歳の筆者は、戦時下の現実から目をそむけるために、西洋的教養主義を志向し、抽象的観念性を養っていた)を思い浮かべていると、それにたいし「もの」によって、屹然と対峙しているような一枚の絵が現れてくる。ニューヨーク、メトロポリタン美術館にある絵であ

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2013京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

2013京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説

【2013京都大学/国語/第二問(理系)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は尼ヶ崎彬『日本のレトリック』。著者は美学者(Twitterアカウント有)。
①段落。たとえば、夜道を歩いていると前方に巨大な影が動いていたとする。よく見ると柳が風に揺れているのである。しかしそれは単なる柳というより、何か生き物のような不気味さを感じさせる。私はその物の辞書上の名前が「柳」であることを知っている。しかしそれを

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2014京都大学/国語/第一問/解答解説

2014京都大学/国語/第一問/解答解説

【2014京都大学/国語/第一問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は石原吉郎の随想「望郷と海」。筆者は詩人。
前書きに「著者が1941年に満州へ派遣され、45年の日本の降伏後にソビエト連邦軍に抑留されてのち、49年に重労働の判決を受けた前後を回想したものである」とある。
①段落。起訴と判決をはさむほぼふた月を、私は独房へ放置された。とだえては昂ぶる思郷の想いが、すがりつくような望郷の願いに変ったの

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