マガジンのカバー画像

東京大学/国語/第四問

17
運営しているクリエイター

記事一覧

2023東京大学/国語/第四問/解答解説

2023東京大学/国語/第四問/解答解説

【2023東京大学/国語/第四問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は長田弘の随想『詩人であること』。筆者は詩人。第四問は詩人や歌人の文章からの出題が多く、2020谷川俊太郎、2014蜂飼耳、2012河野裕子、2010小野十三郎、という具合である。
①段落。それぞれに独自の、特殊な、具体的な経験の言葉を、「公共」の言葉や「全体」の意見ときうレベルに抽象して引きあげてしまうとき、そうした公準化の手続き

もっとみる
2022東大国語/第四問/解答解説(再録)

2022東大国語/第四問/解答解説(再録)

「カーテンを開いて/静かな木漏れ日の/やさしさに包まれたなら/きっと/目にうつる全てのことは/メッセージ」(荒井由美)

武満徹「影絵の鏡」より

問四「そして、やがて何かをそこに見出したように思った」(傍線部エ)とはどういうことか、説明せよ。

内容説明問題。「そこ」とは「何も現れはしない小さなスクリーン」、「何か」とは老人が「何かを、宇宙からこの世界へ返すのだと言った」、「何か」と対応するもの

もっとみる
2011東大国語/第四問/解答解説(再録)

2011東大国語/第四問/解答解説(再録)

ゴールデンカムイの実写化が話題ですが、、

今福龍太「風聞の身体」より

問四 「象徴的な交感と互酬的な関係性の地平」(傍線部エ)とあるが、どういうことか、説明せよ。(60字程度)

内容説明問題。A「象徴的な交感」とB「互酬的な関係性」について説明する。締めの「地平」については「広がり」くらいの意味だが、「どういうものか」ではなく「どういうことか」と問うているので、AとBの内容を具体化すれば事足

もっとみる
2022東京大学/国語/第四問/解答解説

2022東京大学/国語/第四問/解答解説

【2022東京大学/国語/第四問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は武満徹の随想「影絵(ワヤン・クリット)の鏡」(『樹の鏡 草原の鏡』1975)。
①段落。私がこれまでに作曲した音楽の量は数時間あまりにすぎない。たぶんそれは、私がひととしての意識を所有しはじめてからの時間の総量に比べれば瞬間ともいえるほどに短い。しかもそのなかで他人にも聴いて欲しいと思える作品は僅か数曲なのである。…
②段落。寒気

もっとみる
2013東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説

2013東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説

【2013東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】
〈本文理解〉
出典は前田英樹『深さ、記号』。
①段落。知覚は、知覚自身を超えて行こうとする一種の努力である。この努力は、まったく生活上のものとして為されている。(例/目の前の壺。私はこの壺が網膜に映るものだけとは見なさず、見えない側の張りや丸みや色さえも見ようとし、実際見ていると言える)。見えるものを見るとは、もともとそうした努力なのだ。なるほ

もっとみる
2021東京大学/国語/第四問/解答解説

2021東京大学/国語/第四問/解答解説

【2021東大国語/第四問/解答解説】

〈本文理解〉
出典は夏目漱石「子規の画」。
前書きに「この文章は、夏目漱石が正岡子規を偲んで記したものである。子規は闘病のかたわら「写生」を唱えて短歌・俳句の革新運動を行い、三十代半ばで逝去した」とある。
①段落。余は子規の描いた画をたった一枚持っている。亡友の記念だと思って長い間それを袋の中に入れてしまって置いた。…渋紙の袋を引き出して塵をはたいて中を検

もっとみる
至高の現代文19/09東大国語 第四問(随想)

至高の現代文19/09東大国語 第四問(随想)

【2009東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は馬場あき子「山羊小母たちの時間」。
①~④段落。いなかに、山羊小母(めんこばんば)と呼ばれている百一歳の叔母がいる。山羊小母の家に行ったことは二、三度しかないが説明するとなると結構大変である。一見、藁葺屋根のふつうの農家だが、入口を入ると土間があって、その土間を只見川の支流から引き入れた水が溝川をなして流れている。土間から

もっとみる
2010東大国語/第4問(随想)/解答解説

2010東大国語/第4問(随想)/解答解説

【2010東京大学/国語/第4問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は小野十三郎「想像力」。筆者は詩人。
①段落。もし詩人が自ら体験し、生活してきた事からだけ感動をひきだし、それを言葉に移すことに終始していたならば、「詩人なんてものは、人間にとって、あってもなくても一向にさしつかえのないつまらないものになるだろう」(傍線部ア)。詩が私たちに必要なのは、そこに詩人の想像力というものがはたら

もっとみる
至高の現代文19/11東大国語 第四問(随想)

至高の現代文19/11東大国語 第四問(随想)

【2011東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は今福龍太「風聞の身体」。
①②段落。立派な顎髭のエカシ(長老)は火のそばに座り、鋭い眼光に裏打ちされた人懐っこい微笑をうかべながら、おもむろに壮年のころの熊狩りの話をはじめていた。アイヌと聖獣である熊とのあいだに猟師が打ち立てる繊細な意識と肉体の消息をめぐる豊かな関係性の物語である。エカシにとって熊は、「山」という異世

もっとみる
至高の現代文19/12東大国語 第四問(随想)

至高の現代文19/12東大国語 第四問(随想)

【2012東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は河野裕子「ひとり遊び」(『たったこれだけの家族』より)。筆者は歌人で本文中の短歌も筆者の自作である。
①②段落。熱中、夢中、脇目もふらない懸命さ、ということが好きである。下の子が三歳、ハサミを使い始めたばかりの頃のこと。晩春の夕ぐれ時、四畳半の部屋の中に新聞紙の切りくずが錯乱し、もう随分長いこと、シャキシャキとハサミを使う

もっとみる
14東大国語/第四問(随想)/解答解説

14東大国語/第四問(随想)/解答解説

【2014東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は蜂飼耳「馬の歯」。毎度ながら、味わい深い随想からの出題だが、今回のは特に難度が高い。
①~③段落。仕事の打ち合わせでだれかとはじめて顔を合わせるとき。そんなときには、互いに、見えない触覚を伸ばして話題を探すことになる。(中略)。初対面の人と向かい合う時間は、「日常のなかに、ずぶりと差しこまれる」(傍線部ア)。先日は理系の

もっとみる
至高の現代文19/15東大国語 第四問(随想)

至高の現代文19/15東大国語 第四問(随想)

【2015東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は藤原新也「ある風来猫の短い生涯について」。
①~④段落。南房総の山中の家には毎年天井裏で子猫を産む多産猫がいる。私の知る限りかれこれ総四、五十匹産んでいるのではなかろうか。猫の子というよりはまるでメンタイコのようである。そういった子猫たちは生まれてからどうなったかというと、このあたりの猫はまだ野生の掟や本能のようなものが残

もっとみる
至高の現代文19/16東大国語 第四問(随想)

至高の現代文19/16東大国語 第四問(随想)

【2016東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

〈本文理解〉
出典は堀江敏幸「青空の中和のあとで」。
①段落。その日、変哲もない住宅地を歩いている途中で、私は青の異変を感じた。空気が冷たくなり、あたりが暗く沈んでゆく。大通りに出た途端、鉄砲水のような雨が降り出し、稲光をともなった爆裂音が落ちてきた。来た、という感覚が身体の奥の極に流れ込んで、私は十数分の非日常を、まぎれもない日常として生き

もっとみる
2017東京大学/第四問(随想)/解答解説

2017東京大学/第四問(随想)/解答解説

【2017東京大学/国語/第四問(随想)/解答解説】

こんにちは。GV国語科の大岩です。毎度の長文です。東大の第四問を使って「随想(エッセイ)」を特集します。随想については、場面を正しく把握し的確に表現する力が求められます。特に、含蓄のある表現を、ただの言葉の継ぎはぎではなく、自力で言語化する力が必要になります。普段から地道に、直接的・間接的体験を言語化し深化させ、簡潔に的確に表現する力を磨き、

もっとみる