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絵本風味のものがたり・詩・ことばあそび など

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気まぐれなものがたりや、詩など。
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記事一覧

帰路

帰路

青々とした田んぼの一辺で

一羽の白鷺が大あくびをしていた

近づくと

白鷺はふうわりと

スキップでもするように飛んで

少しばかり田の中に入った

こちらの様子を窺っている

白鷺を見ながら 田の横を歩く

白鷺は く、く、と首をまわしてこちらを見る

たぶん目が合っている たぶん

白鷺の真うしろにきた

一本の白線になる白鷺

にんげんを見失う白鷺

そうして今度は 反対側に

く、く、

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すきま

すきま

すきまがないと
はいれません

ぎゅうぎゅう つまって
はいれません

むりやりに
おしこもうと すると
あっちの はじから
ぽろぽろと こぼれます

すきまがないと
はいれないのです

すきまがないと
でられません

きちきち せまくて
でられません

むりやりに
だそうと すると
まわりのものも
すこしばかり こわれます

それでも
すきまができると
はいれますから

わるいこと ばかりでも 

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うまれたそのしゅんかんに

うまれたそのしゅんかんに

あなたに

大きな声で泣くという才をあたえましょう

ことばをはなすことはできません

じぶんでおきあがることも

ねがえりをうつこともできません

ただ

大きな声で ちからいっぱいに

泣くという才をあたえましょう

 

声をだしてわらうことも

えがおのひょうじょうを つくることも

さいしょは できません

まず なによりも

泣くという才をあたえましょう

それがゆいいつ

あなたが 

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はらぺこぽこねんのうた

はらぺこ ぽこねん

ぺこ ぽこ ねん

おなかが すいたよ

ぺこ ぽこ ねん

やかんが ふっとう

ぽこ ぽこ ぽこ

かっぷに そそいで

こぽ こぽ こぽ

かんづめ あけて

ぺこ ぺこ ぺこ

もひとつ おまけに

こっぺぱん

はらぺこ ぽこねん

ぺこ ぽこ ねん

ぽこ ぺこ ぐう ぐう

ぱく ぱく ぱく !

ぺこぺこ ぽこねん

ぱく ぱく ぱく !

おなかも ぽっこり

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はるって なあに?

「もうすぐ はる が やってくるのよ」

おかあさんねこは うれしそうに いいました。 

ふゆのはじめに うまれた こねこ。 

まだ はるを しりません。

「おかあさん はるって なあに?」

「そうねぇ。 はるは、 ぽかぽかして きもちのいいものね。 

 おかあさん はる が だいすきなの」

ふうん、と こねこは つぶやいて。 

しばらくして パッ と 目をかがやかせました。 

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ちいさな木 の ものがたり

ある もりのはずれに ちいさな木が ありました。

ちいさな木は ふしぎでした。

「まわりは みんな せのたかい にいさん ばかりなのに 

 ぼくは どうして こんなに ちっぽけなんだろう」 

ちいさな木は ちょっと かなしかったのです。

せのたかい にいさんたちは ちいさな木より 

ずっと ずっと うえのほうで

ざわざわ ざわざわ。

いつも たのしそうに おしゃべりしているようでし

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