ゆぷに

ホラー小説が好きで自分でもホラー小説を書いています 読んで頂けたら嬉しい限りです! フ…

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ホラー小説が好きで自分でもホラー小説を書いています 読んで頂けたら嬉しい限りです! フォローいただいたらお返しいたします 初心者ですが、よろしくお願いいたします オモコロファンです スティーヴン・キングならかなり詳しいです 最近は雨穴さんなど新進気鋭の作家さんも読んでます

最近の記事

禁道

通っちゃいけない道がある 汚いわけでも、通せんぼされているわけでもない ただ、通ることはダメなのだ 大人たちは言う あの道は絶対に通っちゃダメだよ 近道でも、誰も居なくても 遠回りしなさい 7歳になった角橋悠哉は、そんな言葉を意に介さない 行きたいとこへは行くし、行きたくないとこには行かない 歯医者は行きたくないとこだけど、無理に連れていかれるから仕方ない お菓子のまちおかは行きたいけど、なんでも欲しがるからなかなか連れていって貰えない 悠哉はつれづれにそんなことを考

    • 私にはわかりません 完

      それにしても と、アパートの大家である木崎祥子は白いものが混じる髪を弄くりながらため息をついた 礼儀正しくて好い人だと思ってたのに、わからないもんねえ… 5月分の家賃が振り込まれず、携帯にその旨を連絡するも一向に本人が出ない 仕方がないので保証人である吉田彰さんの両親に連絡を取ると、彼らもまた息子と音信不通になっているという 会社もまた、彰を探していると彼らは不安げに語った 連絡がつかないままなのは仕方がないが、この状態が3ヶ月続くと強制退去してもらうことを告げると、両

      • 私にはわかりません 下②

        リビングを出ると玄関に続くカーペット張りの廊下に出る筈が フローリングの部屋に飛び出した は? な……なんで カーペットとはまるで違う冷たく固い感触が、唯一の現実感だ 当然だが、こんな部屋は自宅にはない 振り替えるとリビングの扉は消えていた 部屋はガランとしていて、広い 蛍光灯の明かりが小さな体育館を思わせる ここは一体… どこかわからない、というフリは出来なかった わかっていた ここは、あの…写真の男が立っていた場所 どこにも出口のない密室 フローリングの床、ロッ

        • 私にはわかりません 下①

          スマートフォンの電源を押すと、たやすく明るくなった パスワード設定もされていない そして、意外さで手が止まった たくさんのアプリが並んでいると予想していたが、裏切られた LINEさえ無い あるのは、真っ暗な背景に浮かぶ写真のファイルのみ なんだ? 死ぬ間際だから整理したのか? ファイルを開くことをほんの少しためらい……指を乗せた 開いたファイルには1枚の写真 まるでロッジのような、明るい木造の壁に、男が立っている 上半身は裸だ 腹から下は映されていない 他には何もな

          私にはわかりません 中②

          いや、危なかった メモしていた順を逆にして紐を回収する帰り道 夕方になると色が判別しにくいことを考えずに思いのほか手こずってしまった 次に行くときは、1時までをタイムリミットにしよう 疲労困憊でアパートにたどり着いたのが9時半…明日が休みで心底良かった きっと明日は筋肉痛になるだろう ……眠れない 時計を見れば2時だ うつらうつらはしたのだろうが、眠れない 原因は解っている 休みの日にゆっくり見ようと思っている、あのリュック… 大きなビニール袋に入ったままの存在感が、

          私にはわかりません 中②

          私にはわかりません 中①

          富士の樹海 年間多くの人間が死に場所として選ぶ土地 良く聞くのは磁場の狂いから生きたくなっても本当に迷って逃げられなくなるという話 いま目の前にある初夏の樹海は、そんな闇など微塵も感じさせないほど美しく日の光に輝いていた 遊歩道に来た 意外だったのは、観光客らしき人々でまあまあ賑わっていたこと 勝手に陰なイメージを作り上げていたが、そんなことはなく みな、写真を楽しげに撮ったりして遊歩道を散歩している しかし僕の目的はここじゃない 遊歩道から外れた、もっと深い場所だ 人は死

          私にはわかりません 中①

          私にはわかりません 上

          いつからか、僕は死体にひとかたならぬ興味を抱いていた 小学6年生頃、友達に見せられたグロ画像 それは確か毒を飲んで自殺した女の写真だったか……を見せられたとき 血液が逆流するような、初めての感覚…快感?を味わった それ以来、パソコンやスマホでその手のサイトを探しだしとり憑かれたように死体の写真を眺めた 動画ももちろん見た ギャングの残酷な処刑も 戦争の酷い有り様も 交通事故で挽き潰れた老若男女も 子供や赤ちゃんの写真すらあったと思う 僕自体は残酷なことを何かにじかにする、等

          私にはわかりません 上

          梨奈という娘 ~ニ

          真梨恵は皿を洗いながら最近の娘の様子を気にかけていた あの娘、どうしちゃったんだろ もともと神経質な質ではあった けれど最近の、おどおどしたような…なにか野良猫のような用心深さを感じさせる態度は見たことがない 喜来町に越してからひと月、まさかクラスで苛めにでもあっているのだろうか? 水を出しっぱなしにしていたことに気付き、クッと蛇口を捻った 私たち夫婦が新居に浮かれてて、相談できなかったのかもしれない 夕飯の時のふと見せる物言いたげな目つき 学校から時おり、追われて

          梨奈という娘 ~ニ

          暗闇から愛してる 下

          声が?と聞き返す私に咲耶は首を振る 性格には声じゃなくて…なんていうか、響き…みたいなもので 男か女かもわからない響きが頭のなかいっぱいに聞こえてきて ハッキリ、愛してるよ、咲耶って… 信じませんよね、こんなこと 私だって馬鹿だと思います けど、あの時は全然不思議に思わなくて 嬉しくて顔中をその布袋に擦り付けて …まるで猫のマーキングみたいに その話を聞いた私は、一体どんな顔をしていただろう きっと、血の気の引いた真っ青な顔だったに違いない 私はまるで急用が出来たかの

          暗闇から愛してる 下

          暗闇から愛してる 中

          立ち上がって、それから? 促した途端、咲耶は口ごもりつつ お、おしっこがしたかったんです と早口でいった 年若い少女が告白するのに躊躇ったろう だから、婦警である自分に白羽の矢がたったのだ 事件直後のショック状態よりは大分回復しているとはいえ…きっと、トラウマは一生癒えることはない これは想像ではなく…確信だ 我慢できなくなるまで、そう時間は掛からないと思いました だから、怖かったけどまっすぐ、拘束されてる両手をまっすぐ伸ばしてぐるりと回ってみました 壁に触らない

          暗闇から愛してる 中

          暗闇から愛してる 上

          寂しい道だな、とは思ってたんです 新倉咲耶は私の顔を見ずに話し出した 街灯もあるにはあるけど、木が鬱蒼としてて光を隠しちゃうし だから…嫌な道だなって思ってはいたの 咲耶は自嘲気味に口端を上げた まるで笑っているかのように いや、本人は笑っているつもりなのかもしれない そうして、隣にワゴン車が止まって…そこから先は真っ暗な部屋に入れられたことしか覚えてない…です 彼女が保護された時の部屋だ 窓一つなく、密閉された息苦しいような小部屋 ここまではいつも穏やかと言って

          暗闇から愛してる 上

          すっごく好きっ

          あなたって「運命」信じる人? 私はね、いまリアルに運命を体感してるの! いつからかな~…そう、出会った時に…かな 透き通った、なんか青いって表現してもいいような瞳が 私とバチッと衝突して、魂を持っていかれちゃったみたい うん、わかる、わかってる そうやって思うのが独り相撲なんじゃないのって心配してくれてるんでしょ? 大丈夫、大丈夫だって 私だって夢見る少女じゃないんだから もうね、ドキドキして止まらないの たぶん、お互い?だと思うの 私にしか見せない泣き顔も 甘えた

          すっごく好きっ

          影 ~ イチ

          梨奈は階段を上がり、新しい自分の部屋に入ると大きなため息をついた 疲れた 一言でまとめるとこんな感じ 父親は喜来町といういまやブランド化している町に越してきたことで異様にテンションが上がっているし 最初は懐疑的だった母親も周りの環境にウキウキしだしている つまり、喜来町が嫌なのは私だけということ この町に足を踏み入れたとき、自分の影が吸い込まれるような…妙な感覚を覚えた それは決して「良い」ものではなかった なにか…自分の大切な何かが消えてしまったに近い、不思議な喪失

          影 ~ イチ

          始まりは静かに ~ ゼロ

          喜来町 きらいちょう、と読むこの町は都心から1時間という立地にも関わらずそこかしこに田舎の雰囲気を残している 切り立った山などはもちろん無いのだが、緑が多く田畑もある 澄んだ湧き水が川となった来火川には未だにカワセミが魚を捕りにやってくる 森は夏になるとたくさんの昆虫が鳴き、飛び、それを捕まえに都心からきた家族連れで賑わうのも恒例の眺めだ しかしひと度田舎然とした風景から距離を取れば、広がるのは充分なスペースが確保されている住宅や大型のスーパー、賑わう商店街が立ち並んで

          始まりは静かに ~ ゼロ

          黄昏にいつもいる

          気づけば、夕方だ 駅から自宅へと帰るいつもの通りを自転車を引きながら歩いていた 白昼夢を見ていたかのようにぼんやりした頭の中をスッキリさせたい 寒風で冷えた手を額にあてがった ひんやりとした感覚で、意識が澄んでくる あ、そうか…部活で遅くなったんだ テニス部の連中と練習そっちのけでお喋りしていたら6時を軽く過ぎていた 帰ったら宿題もしなきゃいけないし、サプの散歩もしなきゃならない お母さんはなんだかんだ理由をつけてサプの散歩をしたがらない…面倒くさがりの権化だ 早く帰ろ

          黄昏にいつもいる