木漏れ日がアスファルトを点描にして、揺らめいている 五月の涼風が汗に湿った肌を洗い、私をひと息つかせてくれた 朝、七時 けやきの並木道、いつもの通り道 はやくも胸…
美しいと思う言葉をつらつらと 紫陽花 燈籠 萌葱 蜻蛉 花冷え 桜花 春蘭 如月 逢魔が刻 銀 五月雨 蝶々 瑠璃 針 藍 紫水 紫煙 遊色 鶯 白狐 弧を描く 上弦の月 下弦の月 …
ねえ、最近さぁめっちゃ凄いアプリ手に入れたんだけど 見て見て、これ 「電波ベイビー」ってやつ なんかぁ、入れたアプリとは違っててさ…そうそう、最近良くある広告詐欺…
通っちゃいけない道がある 汚いわけでも、通せんぼされているわけでもない ただ、通ることはダメなのだ 大人たちは言う あの道は絶対に通っちゃダメだよ 近道でも、誰も…
それにしても と、アパートの大家である木崎祥子は白いものが混じる髪を弄くりながらため息をついた 礼儀正しくて好い人だと思ってたのに、わからないもんねえ… 5月分…
リビングを出ると玄関に続くカーペット張りの廊下に出る筈が フローリングの部屋に飛び出した は? な……なんで カーペットとはまるで違う冷たく固い感触が、唯一の現実…
スマートフォンの電源を押すと、たやすく明るくなった パスワード設定もされていない そして、意外さで手が止まった たくさんのアプリが並んでいると予想していたが、裏切…
いや、危なかった メモしていた順を逆にして紐を回収する帰り道 夕方になると色が判別しにくいことを考えずに思いのほか手こずってしまった 次に行くときは、1時までをタ…
富士の樹海 年間多くの人間が死に場所として選ぶ土地 良く聞くのは磁場の狂いから生きたくなっても本当に迷って逃げられなくなるという話 いま目の前にある初夏の樹海は、…
いつからか、僕は死体にひとかたならぬ興味を抱いていた 小学6年生頃、友達に見せられたグロ画像 それは確か毒を飲んで自殺した女の写真だったか……を見せられたとき 血液…
真梨恵は皿を洗いながら最近の娘の様子を気にかけていた あの娘、どうしちゃったんだろ もともと神経質な質ではあった けれど最近の、おどおどしたような…なにか野良猫…
声が?と聞き返す私に咲耶は首を振る 性格には声じゃなくて…なんていうか、響き…みたいなもので 男か女かもわからない響きが頭のなかいっぱいに聞こえてきて ハッキリ、…
立ち上がって、それから? 促した途端、咲耶は口ごもりつつ お、おしっこがしたかったんです と早口でいった 年若い少女が告白するのに躊躇ったろう だから、婦警であ…
寂しい道だな、とは思ってたんです 新倉咲耶は私の顔を見ずに話し出した 街灯もあるにはあるけど、木が鬱蒼としてて光を隠しちゃうし だから…嫌な道だなって思ってはい…
あなたって「運命」信じる人? 私はね、いまリアルに運命を体感してるの! いつからかな~…そう、出会った時に…かな 透き通った、なんか青いって表現してもいいような…
梨奈は階段を上がり、新しい自分の部屋に入ると大きなため息をついた 疲れた 一言でまとめるとこんな感じ 父親は喜来町といういまやブランド化している町に越してきたこ…
ゆぷに
2024年5月17日 15:38
木漏れ日がアスファルトを点描にして、揺らめいている五月の涼風が汗に湿った肌を洗い、私をひと息つかせてくれた朝、七時けやきの並木道、いつもの通り道はやくも胸が鼓動する期待の高鳴りで足が早まる彼は居るだろうか角を曲がる……居た!いつものように、伸びた白銀の髭を凛となびかせてそこに居た美しい鈍色の背中、日差しをあびて眩しいくらい白い脚蛇のように巻きつく長い尾足早に学校や仕
2024年5月15日 20:46
美しいと思う言葉をつらつらと紫陽花燈籠萌葱蜻蛉花冷え桜花春蘭如月逢魔が刻銀五月雨蝶々瑠璃針藍紫水紫煙遊色鶯白狐弧を描く上弦の月下弦の月卯月霞八重金砂寂寥稜線白ゆり銀の針のような、細く鋭い雨が肩を濡らしていたアスファルトに雨水が張り、たくさんの弧を描き出している私は傘をさすこともせず、ただ雨が水溜まりに消えていく様を見ていた円
2024年5月14日 15:23
ねえ、最近さぁめっちゃ凄いアプリ手に入れたんだけど見て見て、これ「電波ベイビー」ってやつなんかぁ、入れたアプリとは違っててさ…そうそう、最近良くある広告詐欺?みたいなもんなんだけどこれが結構良くできてんのよ小さいこの…タマゴから始まって、リアタイで成長していくんだけど妙にリアルでさウチの奴はもうちょっとで産まれそうなんだけど、愛着沸いちゃってこうやってバックミュージック流したり、
2024年5月12日 21:28
通っちゃいけない道がある汚いわけでも、通せんぼされているわけでもないただ、通ることはダメなのだ大人たちは言うあの道は絶対に通っちゃダメだよ近道でも、誰も居なくても遠回りしなさい7歳になった角橋悠哉は、そんな言葉を意に介さない行きたいとこへは行くし、行きたくないとこには行かない歯医者は行きたくないとこだけど、無理に連れていかれるから仕方ないお菓子のまちおかは行きたいけど、な
2024年5月9日 18:06
それにしてもと、アパートの大家である木崎祥子は白いものが混じる髪を弄くりながらため息をついた礼儀正しくて好い人だと思ってたのに、わからないもんねえ…5月分の家賃が振り込まれず、携帯にその旨を連絡するも一向に本人が出ない仕方がないので保証人である吉田彰さんの両親に連絡を取ると、彼らもまた息子と音信不通になっているという会社もまた、彰を探していると彼らは不安げに語った連絡がつかないま
2024年5月8日 22:57
リビングを出ると玄関に続くカーペット張りの廊下に出る筈がフローリングの部屋に飛び出したは?な……なんでカーペットとはまるで違う冷たく固い感触が、唯一の現実感だ当然だが、こんな部屋は自宅にはない振り替えるとリビングの扉は消えていた部屋はガランとしていて、広い蛍光灯の明かりが小さな体育館を思わせるここは一体…どこかわからない、というフリは出来なかったわかっていたここは、
2024年5月6日 21:37
スマートフォンの電源を押すと、たやすく明るくなったパスワード設定もされていないそして、意外さで手が止まったたくさんのアプリが並んでいると予想していたが、裏切られたLINEさえ無いあるのは、真っ暗な背景に浮かぶ写真のファイルのみなんだ?死ぬ間際だから整理したのか?ファイルを開くことをほんの少しためらい……指を乗せた開いたファイルには1枚の写真まるでロッジのような、明るい
2024年5月5日 20:31
いや、危なかったメモしていた順を逆にして紐を回収する帰り道夕方になると色が判別しにくいことを考えずに思いのほか手こずってしまった次に行くときは、1時までをタイムリミットにしよう疲労困憊でアパートにたどり着いたのが9時半…明日が休みで心底良かったきっと明日は筋肉痛になるだろう……眠れない時計を見れば2時だうつらうつらはしたのだろうが、眠れない原因は解っている休みの日にゆっ
2024年5月2日 21:40
富士の樹海年間多くの人間が死に場所として選ぶ土地良く聞くのは磁場の狂いから生きたくなっても本当に迷って逃げられなくなるという話いま目の前にある初夏の樹海は、そんな闇など微塵も感じさせないほど美しく日の光に輝いていた遊歩道に来た意外だったのは、観光客らしき人々でまあまあ賑わっていたこと勝手に陰なイメージを作り上げていたが、そんなことはなくみな、写真を楽しげに撮ったりして遊歩道を散歩し
2024年5月1日 21:19
いつからか、僕は死体にひとかたならぬ興味を抱いていた小学6年生頃、友達に見せられたグロ画像それは確か毒を飲んで自殺した女の写真だったか……を見せられたとき血液が逆流するような、初めての感覚…快感?を味わったそれ以来、パソコンやスマホでその手のサイトを探しだしとり憑かれたように死体の写真を眺めた動画ももちろん見たギャングの残酷な処刑も戦争の酷い有り様も交通事故で挽き潰れた老若男女も
2024年4月30日 16:40
真梨恵は皿を洗いながら最近の娘の様子を気にかけていたあの娘、どうしちゃったんだろもともと神経質な質ではあったけれど最近の、おどおどしたような…なにか野良猫のような用心深さを感じさせる態度は見たことがない喜来町に越してからひと月、まさかクラスで苛めにでもあっているのだろうか?水を出しっぱなしにしていたことに気付き、クッと蛇口を捻った私たち夫婦が新居に浮かれてて、相談できなかったの
2024年4月29日 15:10
声が?と聞き返す私に咲耶は首を振る性格には声じゃなくて…なんていうか、響き…みたいなもので男か女かもわからない響きが頭のなかいっぱいに聞こえてきてハッキリ、愛してるよ、咲耶って…信じませんよね、こんなこと私だって馬鹿だと思いますけど、あの時は全然不思議に思わなくて嬉しくて顔中をその布袋に擦り付けて…まるで猫のマーキングみたいにその話を聞いた私は、一体どんな顔をしていただろう
2024年4月28日 21:14
立ち上がって、それから?促した途端、咲耶は口ごもりつつお、おしっこがしたかったんですと早口でいった年若い少女が告白するのに躊躇ったろうだから、婦警である自分に白羽の矢がたったのだ事件直後のショック状態よりは大分回復しているとはいえ…きっと、トラウマは一生癒えることはないこれは想像ではなく…確信だ我慢できなくなるまで、そう時間は掛からないと思いましただから、怖かったけど
2024年4月28日 18:43
寂しい道だな、とは思ってたんです新倉咲耶は私の顔を見ずに話し出した街灯もあるにはあるけど、木が鬱蒼としてて光を隠しちゃうしだから…嫌な道だなって思ってはいたの咲耶は自嘲気味に口端を上げたまるで笑っているかのようにいや、本人は笑っているつもりなのかもしれないそうして、隣にワゴン車が止まって…そこから先は真っ暗な部屋に入れられたことしか覚えてない…です彼女が保護された時の部屋
2024年4月28日 13:44
あなたって「運命」信じる人?私はね、いまリアルに運命を体感してるの!いつからかな~…そう、出会った時に…かな透き通った、なんか青いって表現してもいいような瞳が私とバチッと衝突して、魂を持っていかれちゃったみたいうん、わかる、わかってるそうやって思うのが独り相撲なんじゃないのって心配してくれてるんでしょ?大丈夫、大丈夫だって私だって夢見る少女じゃないんだからもうね、ドキドキ
2024年4月27日 22:50
梨奈は階段を上がり、新しい自分の部屋に入ると大きなため息をついた疲れた一言でまとめるとこんな感じ父親は喜来町といういまやブランド化している町に越してきたことで異様にテンションが上がっているし最初は懐疑的だった母親も周りの環境にウキウキしだしているつまり、喜来町が嫌なのは私だけということこの町に足を踏み入れたとき、自分の影が吸い込まれるような…妙な感覚を覚えたそれは決して「良い