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「街と、その不確かな壁」読了して改めて振り返る村上春樹の凄さ!!

こんにちは。

先日、発売日に買って、なかなか読む時間がなかった「街と、その不確かな壁」をようやく読み終わりました。久しぶりの村上春樹さんの新作ですから、お読みになった方も多いかと思います。

いかがでしたか? 私は非常に純粋に面白かったです。

私にとっては、読む前からこの「街と、その不確かな壁」が、あの「一角獣のいる壁に囲まれた街」すなわち「世界の終わりの街」を再び村上さんが書いてくれたことに驚き、そして期待感も高まりました。何故かというと、私にとって、初めての村上作品がこの「街と、その不確かな壁」の兄弟作品となっている1985年刊行の名作「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」だったからです。

ちょうど私が大学生から社会人になるあたりで読んだ初めての村上作品「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は感動するほどに面白く、さらに、この作品の中で出てくる、時が止まったような「世界の終りの街」すなわち「一角獣のいる壁に囲まれた街」にものすごく没入していました。当時、私もイエローサブマリンの少年のように、あの街に行ってみたいと思っていましたw。

私はこの作品がきっかけとして、それ以前の作品、そして、それ以降の作品も出ると、すぐに全て読破しています。多分、今でも一番好きな作家の一人です。

ここで、そんな村上作品をおさらいしてみましょう。私も何度も再読しようと思いながらもできていない秀悦な作品がたくさんあります。

主要な小説を中心に挙げてみます。

1979年 風の歌を聴け
1980年 1973年のピンボール
1981年 マイロストシティ、夢で会いましょう
1982年 羊をめぐる冒険
1983年 カンガルー日和、象工場のハッピーエンド、中国行きのスロウ・ボート
1984年 波の絵、波の話、蛍・納屋を焼く・その他の短編
1985年 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド
1985年 西風号の遭難、回転木馬のデッド・ヒート、羊男のクリスマス
1986年 パン屋再襲撃
1987年 ノルウェイの森
1988年 ダンス・ダンス・ダンス
1990年 TVピープル
1992年 国境の南、太陽の西
1994年 ねじまき鳥クロニクル第1部、第2部
1995年 夜のくもざる
1995年 ねじまき鳥クロニクル第3部
1996年 うずまき猫のみつけかた、レキシントンの幽霊
1998年 ふわふわ
1999年 スプートニクの恋人
2000年 神の子どもたちはみな踊る
2000年 マタタビ浴びたタマ
2002年 海辺のカフカ
2003年 少年カフカ
2004年 アフターダーク
2005年 ふしぎな図書館、象の消滅 短篇選集
2005年 東京奇譚集
2009年 IQ84 BOOK1、BOOK2
2009年 めくらやなぎと眠る女
2010年 IQ84 BOOK3
2010年 ねむり
2013年 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年、パン屋を襲う
2014年 女のいない男たち、図書館奇譚
2017年 騎士団長殺し
2020年 一人称単数
2023年 街と、その不確かな壁

こうしてみると、すごいペースですよね。特に1979年から1995年までの16年間は、ほぼ1年に1冊、長編を出しているんですよ!しかも、それがほとんどベストセラーという。まさに天才的な作家です。

皆さんはこの中で何冊お読みになりましたか?

この中で最も売れた作品を調べてみました。
(以下web あやとブログより)

1位 ノルウェイの森 1000万部
2位 IQ84 シリーズ累計300万部
3位 世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド 162万部
4位 騎士団長殺し 134万部
5位 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 100万部
6位 一人称単数 25万部
7位 女のいない男たち 23万部

そして、最新のニュースによると「街と、その不確かな壁」は今年の4月刊行から、既に38万部売上げています。今年上半期のベストセラーだそうですよ。上記のランキングにも確実に食い込みますね。今後どのくらい部数を伸ばすか楽しみです。

それでは、最後に「街と、その不確かな壁」を読んで思ったことを書いておきます。

1. 現実と非現実の境界線の崩壊
村上作品の魅力は、文体は非常にハードボイルド的に写実描写がされているのですが、それと共に、現実と非現実、または意識と無意識の境界線が徐々に曖昧になっていく感覚がとてもスリリングで読み出したら止まらないことです。今回の「街と、その不確かな壁」でも、現実世界のとなりにある非現実の領域「壁に囲まれた街」との境界が徐々に崩れていく感覚を味わうことができます。

2. 主人公と女性たちの恋愛
村上作品にはよく魅力的な女性が登場して、主人公と恋愛関係となります。そして、その関係は突然終わったり、また始まりそうで始まらなかったりと。そして時には結構きわどい性描写が含まれることがあります。今回の作品でも、前半部と後半部に2人の魅力的な女性が登場します。その2人と主人公の関係の変化がとても愛おしかったりします。

3. 予想できないストーリー展開
村上作品が途中でやめられないのは、このストーリー展開が予想できないからかと思います。特に現実世界と非現実世界の両方の描写やその境界線など、さまざまな場面が次々と出てきます。また、これは何かの伏線ではないか、など、謎解きというよりは、読む人の解釈がいかようにもとれるところなど異世界に送り込まれたような展開が魅力ではないでしょうか。

4. 最後の余韻が不思議な感覚になる
村上作品は大抵明確なエンディングはないようです。今回のエンディングも非常に余韻が残るものでした。私が好きなのは、やはり最初に読んだ「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」の終わりです。興味がある方は本作を読んだ後に再度こちらも読み返してみてください。痺れますよ。

それでは。

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