最近の記事

クリエイターは個人事業主でもあるという話

 アニメやゲームは集団的創作、小説やマンガは個人的創作になることが多いという話を以前書いた。  そういう意味で、小説家やマンガ家、イラストレーター、ライターのような人たちはクリエイターであるとともに、個人事業主であることも多い職業だ。  つまり、物を作るということをやりながら、それで生活をするために事業を回すということをやらなければいけない。多くのクリエイターは事業を回す方は面倒だと感じがちで、基本的にクリエイティブに全力集中したい人が多い。  そりゃそうだと思いつつ、現実

    • データドリブンマーケティングの副作用

       データをもとに判断をする、最適化をしていくことは、効率を追求する上で非常に有用な方法であると私は認識している。  だが、データドリブンな手法には結構副作用も多いようにも感じている。それはマーケティングにしかり、経営にしかり。  長年データドリブンの経営、マーケティングをリードするべきポジションにいて経験を積んでいたものとして、そのあたりをメモとして残しておこうと思う。 見えないデータの存在を忘れる  データドリブンな経営、マーケティングを支えるのは、詳細なデータになる。

      • スターツ出版の好調要因について

        下記の記事を読んだ。 スターツ出版は出版社にしては珍しく上場企業であり、IR情報があるので情報を詳しく見ることができる 直近のIR資料は以下だ。 https://starts-pub.jp/wp-content/uploads/2024/02/kessansetsumei202312d.pdf で、上記記事にちょっと違和感を覚えたので、触れられていなかったことを追記しておきたい。 好調なのはコミック 下の画像はスターツ出版の決算説明会資料のP15となっている。  

        • 韓国の縦スクロール漫画作家も苦労しているらしい

           上記記事を見て日本との違いなど興味深かったので、ちょっとそのあたりについて書いてみようかと思う。 韓国縦スクロール漫画作家の個人比率、つまり非スタジオ率  一番驚いたのがそこの部分。記事中の記載を改めて抜き出すと、 すべての過程を単独で創作:39.3% 単独創作(補助作家=アシスタントあり):19.0% (ほかの)作家と共同作業:12.9% 臨時雇用しての単独創作:11.5%  ということらしい。3番目の「(ほかの)作家と共同作業」が微妙に怪しいが、基本的に「

        クリエイターは個人事業主でもあるという話

          コンテンツIPビジネスのビジネス的側面について ①出版編-分析上の注意点

           前回、出版ビジネスのビジネス上の特徴について述べた。今回はその業績を分析する際の注意点について記載しようと思う。  出版社が学生に人気の就職先になっているニュースも見たし、どういう点に注意して業績を見るべきか、KPIを把握するべきかを書こうと思う。編集者も自社、自部門の業績を把握する参考になれば幸いだ。 返品率  返品率は業界では標準的なKPIで、[返品]/[納品]の率となる。  部数ベースの場合と金額ベースの場合があるが、上場企業などが開示している返品率は金額ベースの

          コンテンツIPビジネスのビジネス的側面について ①出版編-分析上の注意点

          コンテンツIPビジネスのビジネス的側面について ①出版編

           経営を行う上で、重要なコンテンツ関係事業のビジネスモデルについてのお話。しばらくずっとそればっかり仕事にしていたので、自分的に最も詳しい分野でもある。ちょっとそれについて話をしてみようかと思う。 出版ビジネス コンテンツビジネスといっても、基本は他のビジネスとそう変わらない。出版ビジネスだって、商品を作って売る商売なので、一般的な電機メーカーなどのメーカーと呼ばれる会社とそれほど大きくは変わらない。ただし、特殊な法律があったり、商品的特性によって、やや特殊な面がある。

          コンテンツIPビジネスのビジネス的側面について ①出版編

          小説などの編集を目指している人に読んでもらいたい話

          小説編集などを目指している人にはぜひとも考えてもらいたいことがあって、いつもの通り書いてみることにした。 市場環境を知ってほしい 市場環境をまずは理解してほしい。と思う。 上は出版科学研究所が出している出版統計。 これによると、2022年の出版物の販売金額は、電子含めてで16,305億円。 で、同じサイトに「書籍の出版統計」もあるので、それを見ると、2022年は6,497億円で、これは紙出版の分となる。 ちなみに20年前の2002年はグラフから見るに9,400億ほどだ

          小説などの編集を目指している人に読んでもらいたい話

          個人的創作と集団的創作について

          小説や漫画は、ほぼ個人的創作で、アニメやゲームはほぼ集団的創作となっている。 コミックの中でも縦スクロールコミックは集団的創作のものが多い。 それらの違いなんかについて思うことがあったのでつらつら書いてみる。 集団的創作の権利について 先に述べた通り、アニメやゲーム、縦スクロールコミックは1本の作品を作るのに、多くの人が役割分担をしながら関わっている集団的創作物になる。それに対して小説や漫画は個人的創作物であるといえる。 ただ、小説は多くはアイデアや表現を編集者と磨いたり

          個人的創作と集団的創作について

          原作改変と二次創作について

          映像化の際の原作改変について論争がある。私個人としては、表現方法が違う以上、それに合わせて内容を変えるのは、避けようがないことだと思っているし、表現方法が変わるなら内容も変えた方が最適化されるものだと思っている。 映像化=二次利用である 原作となる小説やマンガを映像化、アニメ化するにあたって、法的にはそれらは二次利用として定義されるものとなる。 それは著作権的には翻案を伴うものであり、つまり二次創作として語られることが多い同人誌なんかと同一のカテゴリに入れられるものとなる

          原作改変と二次創作について

          電子書籍の取り分についてのお話

          コンテンツ制作側は意外と儲からないという話をしておきたい電子書籍の分配について、作家さんやマンガ家さんからいろいろな論が出ている。出版社が暴利を取っている、搾取しているという論もあるが、割とそんなこともないぞという話。 電子書籍販売のプレイヤーと主な料率 下記料率は主にグロス売上(一般的な小売価格ベース)に対する比率。ただし値引き時などは原資負担を出版社が行うケースもあれば、流通や電子書店が行うケースなど様々なのでそのあたりの特殊事例は考慮してない数字。 もちろん、会社や

          電子書籍の取り分についてのお話

          ライトノベルジャンルの衰退について

          この記事を読んだ感想を書きたいと思ったので書いてみることにした。 ライトノベルは誰のものか 上記記事の筆者が最終的に訴えていたのは、『ライトノベル』を少年少女の物に戻してほしいという論で、そうでなければ滅んでしまうという論調だった。だが、そんなことをする必要はないと私は思っている。 この記事の中にすでに答えも書いてあるじゃんと。 少年少女は読みたい本を読む。親がいくら読ませたい本を買い与えようが、自分の読みたいものを読むものだし、むしろそうであるべきだと思う。 記事中に

          ライトノベルジャンルの衰退について