ネゴトワ・ネティエ

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最近の記事

スパイチップとは

SNS上で台湾半導体製造TSMCが米軍の戦闘機で使う半導体の製造を請け負いスパイチップを仕込んで、それが原因で墜落事故を起こしているという言説を見かけました。 半導体の製造自体が高度に複雑で外部に公開されないノウハウの集合であり「良く分からない」のでこのような誤解も広まるのだと思います。 1993年に公開された劇場版アニメ映画「機動警察パトレイバー 2 the Movie」では自衛隊の指揮通信システムがハッキングされ制御を失った戦闘機が東京に迫る中、当該機に対する撃墜命令

    • AIブームは「バブル」か?

      アメリカの株式市場ではS&P500やNASDAQ、ダウ平均などが史上最高値を更新し、日本でも日経平均株価がバブル崩壊後の史上最高値を更新して史上初の4万円台をつけ話題になりました。 その原動力となっているのは「生成AIブーム」からなるテック系、中でも高性能データセンターに必要不可欠なNVIDIAやSupermicroなどの半導体関連銘柄の急騰によるところが大きく、あまりに短期間での急成長に株高のブーム到来と歓迎すると同時にそろそろ「天井」を迎えるのでは?とラリーを薄氷を踏む

      • X(旧Twitter)のコミュニティノートに参加して思った事

        先月よりX(旧Twitter)のコミュニティノートへの参加申請が承認されたのでコミュニティノートの活動を始めました。 コミュニティノートとはX社が運用しているSNSのアカウント保有者のうち、参加資格を得た有志が日々投稿されるポストについて誤解を招く表現や誤情報に匿名で追加情報を付与する活動を指します。 それ以前からポスト(以前はツイートと呼称)に返信や引用を使って指摘することは可能でしたが、ブロック機能によって表示されなくなることから、インフルエンサーによる囲い込みが進み

        • SNSでデマ、フェイクニュースが広まる仕組み

          今年は年明け早々に令和6年能登半島地震、翌2日に羽田空港でJAL機と海保機の衝突事故と大きな出来事が相次ぎました。 被害を被った方々に想いを馳せる一方、対応に奔走している人達を差し置いて「何故◯◯をやらないんだ」「政府の対応は遅すぎる」といった怒りの声がSNSを中心に巻き起こり、担当所轄の責任者や岸田首相が説明に追われるというシーンが連日報じられ、国も噂に惑わされないようにと正しい情報の取り扱いを呼び掛けるに至りました。 政府への批判や疑問にはもっともなものもありましたが

        スパイチップとは

          Kirin9006Cの考察

          2023年、Huaweiの新型スマホMate 60 ProにSMICの7nmチップが搭載されアメリカの制裁下でどうやって実現したのか様々な憶測を呼びました。 その直後くらいから「次は5nm」と実しやかにささやかれていましたが12月にHuaweiはQingyun L540ノートブックを発売し、そのプロセッサが5nm Kirin 9006Cと報じられ、中国半導体産業が7nmに次いで5nmも遂に技術を確立したかと騒然としました。 過去には台湾のTSMCも2018年頃、DUVリソ

          台湾アイデンティティとは

          2024年1月13日に台湾総統選挙が実施されます。 安全保障や親日的な国民性で語られることが多い台湾ですが、ときより中国側への機密漏洩などの不祥事も取りざたされ、親日・親米のイメージとのかい離に困惑させられる事もあります。 日本の台湾統治時代に台湾の治水事業に生涯をささげた日本人技師八田與一を顕彰する銅像を国民党の弾圧から隠し続けた村人の話が日台友好の美談として伝わるかと思えば、その銅像を破壊した事をSNSで喧伝した活動家の存在など、日本としての台湾とのかつての関りも複雑

          台湾アイデンティティとは

          経産省 半導体・デジタル産業戦略の現状と今後(R5.11.29)の雑感

          2023年11月29日に開催された第10回 半導体・デジタル産業戦略検討会議の開催資料が公開されています。 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0010/0010.html 「資料3」は189頁もあるので要旨のみ書き出してみました。 以降はそれぞれの項目の詳細な現況報告や分析、今後の方針が続きます。 どの産業分野においても国際競争が激化する中で、

          経産省 半導体・デジタル産業戦略の現状と今後(R5.11.29)の雑感

          計算機の変遷

          今日、照明のスイッチリモコンや手放せないスマホ、自動車やインフラの制御を司る制御装置に至るまで情報処理装置なしには私たちの生活は成り立ちません。 人はどのようにして情報を処理する計算機を道具化してきたのでしょうか。 古の計算道具 人類が数や計算という抽象概念を獲得した経緯は記録がない時代に遡り推測するしかありませんが、猟果を公平に分配する必要があったり、家畜の管理上必要であったり、定住農業を発展させると暦の関係から指折り数えていた規模を越えるあたりから10進数が発達し、

          TSMC創業者 モリス・チャン

          世界的な半導体不足から何かと注目を集めるようになった半導体産業。 他社ブランド製品の製造だけを請け負う台湾のTSMCはそれまでは縁の下の力持ち的存在で一部の人に知られる程度でしたが、Appleの最新型iPhoneのプロセッサ製造を手掛ける同社の急成長ぶりや日本の熊本に進出するなど国内でも脚光を浴びるようになりました。 台湾の人から「護国神山」とまで言われる世界有数の大企業TSMCを築いたモリス・チャンとはどのような人物なのでしょうか。 それまで戒厳令解除後の報道規制撤廃後に

          TSMC創業者 モリス・チャン

          Huawei Kirin9000s噂のアップデート

          Huaweiが中国製を謳うKirin9000sチップを使用しているとされる5G世代スマホMate60Proに続き、MatePad Pro 13.2"という同社フラッグシップ級タブレットの製品発表があり、中華圏では期待が高まっているようです。 Huawei、580gの世界最薄最軽量タブレット「MatePad Pro 13.2」 プロセッサについての言及は無かったとの事で、やはりアメリカの先端半導体輸出規制を意識しているものと思われます。 Kirin9000sチップについて

          Huawei Kirin9000s噂のアップデート

          中華5Gスマホ Kirin9000sの謎

          9月初旬、中国の通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ、Huawei)の新型スマートフォン「Mate 60 Pro」に5G通信を可能にする7nmの半導体チップが使われていると報じられ各方面が騒然としました。 日本はアメリカの輸出管理規制に従い7月に中国に課している輸出管理の規制対象に新たに23品目を加えたばかりでしたが、中国がどうやってこの新世代の半導体チップを製品化することが出来たのかと憶測を呼びました。 アメリカの半導体対中輸出規制 アメリカはオバマ政権後期から対決

          中華5Gスマホ Kirin9000sの謎

          Rapidusと先端半導体2nmの意味-2023年9月

          1日、Rapidus株式会社は北海道千歳の工場建設予定地で起工式を行いました。 Rapidusと連携する国内外の関係各社の他、北海道知事や千歳市長らも出席、岸田首相からメッセージも寄せられるなど同社に対する期待の大きさを物語っています。 ラピダス起工式に半導体大手トップがそろい踏み、岸田首相もメッセージhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00925/ RapidusはIBMから技術ライセンスを受け、長らく国内

          Rapidusと先端半導体2nmの意味-2023年9月

          中央研究所の役割とその変遷

          企業と中央研究所 日本の大企業は中央研究所の成果によって競争力を増し収益を積み重ねてきましたが、この中央研究所が近年になりうまく機能しなくなってきた事を日本企業失速の要因として挙げる人も居ます。 日本企業が戦後、高度成長期に大きく成長できた要因は研究開発を重視し、投機的な発明から予測可能な事業にシフトするための基礎研究成果の蓄積や商品開発力を増した事は間違いないでしょう。 日本企業の多くが「事業部制」を採用しており、成長過程で重複する研究部門を統合したり、更なる研究開

          中央研究所の役割とその変遷

          「日本の電子部品産業」の発展を読み解く

          日本の電子産業の隆盛を支えた電子部品は高い質とコストパフォーマンスで家電産業が衰退していく中でも存在感を示し続けています。 その源泉はどこにあったのか。 よく言われる日本の「勤勉な労働者」が下支えしたのは間違いないでしょう。 しかし戦前、戦中期の日本の製造業はこうした「勤勉な労働者」のスキルに依存した現場主義で規格で示された数値はあくまでも目標値としての性格が色濃く、部品を取り出し別の製品に取り付けるのには調整しなければならず品質も生産効率も現代の工業製品に比して及ばない

          「日本の電子部品産業」の発展を読み解く

          半導体に見るPFAS規制問題

          6月2日、Bloombergはアメリカの化学・素材メーカー大手3Mが各都市の水質汚染で多くの自治体から訴えられていた件で少なくとも100億ドル(約1兆4000億円)を支払い和解する事で合意したと報じました。 3M、少なくとも100億ドルで暫定決着-「永遠の化学物質」巡る係争 この水質汚染したとされるPFASは有機フッ素化合物の総称で、その多くが化学的に安定しており熱や薬品に強く撥水性などの特性から撥水剤、泡消火剤、フライパンといった身の回りの品や半導体の製造工程、金属メッ

          半導体に見るPFAS規制問題

          アメリカの対中制裁と中国のEUV露光装置開発報道

          中国が独自にEUV露光装置を開発したとの報道が4月末頃にありました。 それまでも中国からEUV露光に関しての論文がいくつか出ていた事から独自のEUV露光技術を獲得するのは時間の問題であるとは思われましたが、事実なら案外早かったなという感想を持ちました。 この装置が実用化された場合、中国は7nm世代以降の半導体製造に繋がる技術を獲得した事になります。 気になるポイントについて振り返ってみたいと思います。 EUV露光装置とは 現代の半導体チップの性能は微細加工の「世代」

          アメリカの対中制裁と中国のEUV露光装置開発報道