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これまで来た道、これから行く先

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旅がどこまでも続くように。1000字エッセイ。
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2018年9月の記事一覧

『死と死刑』(全3回) 第3回「生きるということ」

『死と死刑』(全3回) 第3回「生きるということ」

「死」を初めて意識したのは、小学3年生のときだった。『ゲゲゲの鬼太郎』を読んだのがきっかけである。それは同時に、死への恐怖が植えつけられた瞬間でもあった。

これは、誰もが成長の段階で抱く不安であるらしい。おそらく、人間として生きる上で重要な心理的転機なのだろう。だからこそ、誰に教わるともなく、ひとを殺してはいけないと悟るし、大切なひとには亡くなってほしくないし、自分自身の命を大切にするようになる

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『死と死刑』(全3回) 第2回「死刑存置を訴える意見」

『死と死刑』(全3回) 第2回「死刑存置を訴える意見」

死刑のない国。きれいな響きである。国家が人権を最大限に守っている印象を強く与える。

本当にそうだろうか。

死刑を問題にするとき、犯罪の類型としてしばしば挙げられるのは殺人罪であるが、最高刑が死刑に当たる罪は他にもある。例えば、強盗強制性交等致死罪(強盗が現場において強制性交に及び、被害者を死に至らしめる罪)も含まれるのである。被害者の立場になってみれば、金品は強奪され、身体を蹂躙され、命を奪わ

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『死と死刑』(全3回) 第1回「死刑廃止を訴える意見」

『死と死刑』(全3回) 第1回「死刑廃止を訴える意見」

日本には、犯した罪の償いとして、その罪の重さに従って以下の刑が用意されている。経済的な負担を求める科料刑と罰金刑。身体の自由を制限する拘留刑・禁固刑・懲役刑。そして生命を奪う死刑である。こうして並べてみると、死刑だけが異質に思えてくる。国家の手によってこの世から存在そのものを消されてしまうのである。

まして、裁判で認められてしまったその罪が、実は冤罪であったらどうだろう。刑を受けるべき真犯人は安

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乱文矯正のための習作

乱文矯正のための習作

渇いた潤いを抱く風――そんな矛盾も正しいと思わせるほどの、柔らかな秋の空気に包まれてみる。どこかのススキの穂を反射したような夕暮れ空に鳶が舞う。遠くに聞こえる電車の音は、静かな川の流れにそっと溶けていった。

それはビル群から少し離れた住宅街。大学時代、アルバイト前に何度か立ち寄った場所だ。土手にぽつんと置かれたベンチに腰掛け、しっとりと一人きりを過ごした。学校でもなく職場でもない、そんな時間と場

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Being Polite

Being Polite

急遽、先週の金曜日から海外出張に行ってきた。突然とはいっても、もちろんある程度前から知らされてはいたのだが、いざ出国の段となると緊張感は高かった。何を隠そう、私は今回の出張が初の海外だったのである。連休返上で昨日帰ってくるまで、目まぐるしい日々だった。それは、海外の風に吹かれて、かえって日本というものを見つめる機会ともなった。

その中でも特に印象的だったのは、海外の人から日本人が”polite”

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共鳴 / 性別を超えた個として

共鳴 / 性別を超えた個として

――男性らしい、女性らしいではない、自分そのものを見てほしい。

一文で書くなら、そう集約できるだろうか。昨日、そんな内容のエッセイをnoteで読んだ。性差を外から見たり内から感じたりすることを超越して、存在をそれとして捉えることの大切さを訴えていた。人を性で二分するのではなく、それぞれ異なる「個」として認識することで、「私」というものを相対化できる。その中でも、そこでは特に文章について重心が置か

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かなしみのむこうがわへ

かなしみのむこうがわへ

西日本を巻き込んだ台風。北海道を震撼させた地震。自然災害が立て続けに日本を襲っている。進路や強さ、方向などを予め推測できる台風と、前触れもなく突然やってくる地震という性質の違いはあれど、人々を恐怖と不安に包み込む点では全く同じかもしれない。

私は2011年の地震を仙台で経験した。当日は校内で模擬試験が行われる日に当たっていて、当時高校一年生だった私たちは十四時過ぎには試験を終えたはずだ。先輩を待

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書けない

書けない

悩んでいる。

noteで書きたい題材はそれなりにあるのに、うまく筆が進まない。この数日、950字ほど書いた文章を一気に真っ白にしてしまうことが続いている。思いついた題材が不満なのではなく、ただ自分の文章が気に入らないのである。人に見せるレベルに達していないと感じることが非常に多い。

文章力が落ちたのだろうか。毎日のように文章を紡いでいるにも関わらず、反比例するように筆が荒れてきた気がしてならな

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