アイロン台

いわゆるJTCのソフトウェア技術者。 2023/7「鏡映左右反転の謎の物理と心理」。…

アイロン台

いわゆるJTCのソフトウェア技術者。 2023/7「鏡映左右反転の謎の物理と心理」。執筆後、調べるとやはり車輪の再発明であった。それでも包括的な記述は意味があるので、拙い箇所を修正するつもりです。まずは、抜粋したキーポイントや討論分析、書評もどきからお読みください。

最近の記事

  • 固定された記事

鏡映左右反転の謎(キーポイント1)

「どうして上下でなく左右が反転しているのだろう」 文字が書かれておらず、目盛りがあるだけのアナログ時計が壁にかかっているとしよう。それは、真後ろ(南側)にあり、真正面(北側)に鏡がある。 見えるのは、反時計回りの鏡像だけだ。左右に反転しているように見える。 (鏡像は一方向だけが反転することは経験的にしっているが…) 問い:なぜ、左右が反転しているのか? 答え:実像と鏡像を上下をそろえた向きで見ているから。 まず、具体的に、鏡像と実像を照らし合わせる際、 実像を見て記憶し

    • 朝倉書店『幾何学入門事典』鏡のパラドックス

      なんと、最初の項目として「向き」(orientation)が取り上げられて、「どうして鏡は左右を反転するか」を数学の立場から説明している。 空間において、「左右」を数学的に抽象化した「枠」を考え、2つある一方の枠を選ぶことが「向きを選ぶ」ことになるとしている。 枠は、(空間の)順序を考慮した基底を意味し、右手枠と左手枠がある。 鏡で、上下ベクトルはそのままであるのに対し、枠で定義された左右は逆になる。だから「鏡のパラドックス」は不思議なことではないという。 参照:朝倉書店

      • 吉村浩一『鏡の中の左利き』は必読

        鏡映左右反転現象を知るには絶好の一冊。 この本の素晴らしさは、多幡達夫によるamazonの書評にある通りだ。 この本を読んで、自分の記事の至らなさと、実験心理学が気づいてきたものの大きさや確かさを実感した。 以下にいくつかの印象的な部分を記すが、引用部分だけでなく、本全体を通じて具体例や説明があってわかりやすくかつ説得的に論じてある。 まず、 左右反転感を抱かない場合 についてである。 続いて、左右反転感を抱かない例として、顔を化粧する場合、バックミラーを見る場合、

        • 『認知科学』鏡映反転―高野vs多幡 論争

          『認知科学』 2008 年 15 巻 3 号に「小特集-鏡映反転:「鏡の中では左右が反対に見える」のは何故か?」という特集があった。https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcss/15/3/_contents/-char/ja その誌上討論で、高野陽太郎、多幡達夫、小亀淳の3氏による自説の紹介、他説への批判、批判への回答がなされた。 この記事では、高野説、多幡説それぞれについて、議論のやり取りを分析する。このやりとりは、次の論理的な順でなされ

        • 固定された記事

        鏡映左右反転の謎(キーポイント1)

          鏡映左右反転の謎(いや前後反転だ⁉)

          「どうして上下でなく左右が反転しているのだろう」 文字が書かれておらず、目盛りがあるだけのアナログ時計が壁にかかっているとしよう。それは、真後ろ(南側)にあり、真正面(北側)に鏡がある。 見えるのは、反時計回りの鏡像だけだ。左右に反転している。 いや、反転しているのは、前後であって、左右ではない。 という見方について、コメントしたい。 確かに、鏡が反転するのは、まさしく前後である。 鏡による左右反転の説明をしている記事などには、 「実は、鏡で反転するのは左右でなく前後なの

          鏡映左右反転の謎(いや前後反転だ⁉)

          「多重プロセス理論」について(感想)

          高野は言う: 当初、これを読んで驚愕し、反感を―いや怒りをだったかもしれない―覚えた。鏡映反転は、物理で原理がわかっており、それを3つの異なる現象だというのだから。 しかし、なんとなく、味わい深いと思えてきた。自分の身体の鏡像に自分の心的イメージを重ねることや、たとえ2次的だとしても表象との比較もあることに納得したからである。 そうして、高野陽太郎『鏡映反転』を手に取ってみた。 子供のころの記憶としてこう記されている。 そうか、おそらく、高野は何か図形を空間回転したり、

          「多重プロセス理論」について(感想)

          モノの左右軸は対象性が高い(文献)

          「鏡映左右反転の物理と心理」の記述 横方向(「左右」)がモノの形状のどのような部分につけられるか、こう記述した。 文献などが見つからず、筆者の推測でしかなかった。 MICHAEL C. CORBALLIS Much ado about mirrors そもそも鏡映反転の論文で対称性は議論されていた。 申し訳ないが、うまく訳せない。 「物体は、…鏡像体とはあきらかに異なっているように(配置が)調整された」くらいの意味だと思うが、筆者の英語力ではそのような訳出が正しい

          モノの左右軸は対象性が高い(文献)

          鏡映左右反転の謎(キーポイント5)

          「左手を伸ばしているのに、どうして鏡の中では右手を伸ばしているのか」                                .…(**) に答えたい。 まずは、文字での答え(キーポイント3)と全く同じように答えよう。 ここでは、人(身体)の視点から前後・上下・左右という方向を使う。ごく日常的に行われていることだ。「右手」「左手」とか言う、見方だ。 鏡の中では身体の像は、実像に対して一つの方向が反転する。これは前提としよう。 身体は、見慣れた、あるいは習慣として―上下

          鏡映左右反転の謎(キーポイント5)

          鏡映左右反転の謎(キーポイント4)

          この謎、つまり「鏡に映すとどうして上下でなく左右が反転するのか?」という問いは、  はたして何を問うているのか?  何を答えれば納得できるのだろうか? について考えたい。 実際に鏡に映ったアナログ時計や文字を見て感じた素朴で具体的な問いであると同時に、何か普遍的な、あの状況でもこの状況でもあてはまるというような答えへの期待がこの問いにはあるような気がする。 物理は、「鏡映反転の原理」を答えてくれる。(キーポイント1のような状況設定において)鏡に映すと奥行(前後)方向が

          鏡映左右反転の謎(キーポイント4)

          鏡映左右反転の謎(キーポイント3)

          「文字は、どうして上下でなく左右が反転しているのだろう」 丸いテーブルの上に丸い鏡が置いてある(特定の方向がない設定)。 文字を鏡に映した。どの文字も左右に反転しているように見える。 いわゆる鏡文字だ。 問い:どうして、上下でなく左右反転になるのですか? 答え:上方向を合わせて見ているからでしょう。 文字とか見慣れたものを鏡で見ると、つい見慣れた向きから見てしまう。そうして、左右が逆になったと思ってしまう。そこに謎はない。 ばかばかしい。と思った方もおられるだろう。 も

          鏡映左右反転の謎(キーポイント3)

          鏡映左右反転の謎(キーポイント2)

          「どうして上下でなく左右が反転しているのだろう」 文字が書かれておらず、目盛りがあるだけのアナログ時計が壁にかかっているとしよう。それは、真後ろ(南側)にあり、真正面(北側)に鏡がある。 見えるのは、反時計回りの鏡像だけだ。左右に反転しているように見える。 問い:キーポイント1で、理由はわかったが、しっくりこない。    重力関係なく、視線の向きを基準に、上下左右を決めたとき、    上下左右が対称(方向に区別がない)になりそうな気がする。 答え:左右が変わらず、上下が反

          鏡映左右反転の謎(キーポイント2)

          「鏡映左右反転の謎―物理と心理―」

          初版 2023/7/17 発行 2023/7/23 プロローグ「どうして上下でなく左右が反転しているのだろう」 鏡に映った時計や文字を見て、こう感じたことは誰もがあるのではないだろうか。 これが、素朴な鏡映における左右反転現象への問いだろう。 文字が書かれておらず、目盛りがあるだけのアナログ時計が壁にかかっているとしよう。一番上の目盛りが12時だ。その一番上の目盛りは、太く強調されている。これで重力は忘れていい。 さて、鏡は真正面、アナログ時計は真後ろで同時に見れないとす

          「鏡映左右反転の謎―物理と心理―」