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エッセイ集

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2021年4月の記事一覧

入院初夜

入院初夜

さあ、とうとう入院当日だ。そんな日に限って寝坊をした。昔からずっとなんだけれど、大事な日に限って、夜はなかなか眠れない。平日はいつも0時ぐらいには寝ている。でも、昨日に限っては就寝したのは4時前だ。

4時間も睡眠が削り取られてるんだ。そりゃ普段通りに、起きれなくて当然だ。テレビをつけると、コロナの死者数が取り上げられていた。淡々と原稿を読み上げるニュースキャスター。そして、悔やまれることなく、お

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入院前夜

入院前夜

どうやら明日から手術のために、入院するみたいだ。「みたい」と表現しているのは、入院にまったく実感が湧かないためである。明日も通常通りカフェでPCを開いて、仕事でもしていそうな感じがするし、入院している自分の姿がまだ想像できないことも事実だ。

ちなみに、入院は0〜1歳のときの小児喘息以来だ。もちろんあまりに小さすぎて、入院したときの記憶はないに等しい。だから、初めての入院みたいなものだ。「初」が付

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いつかはきっと報われる いつでもないいつかを待った

いつかはきっと報われる いつでもないいつかを待った

深夜が好きだ。生活リズムをある程度一定にしたいと思っているため、平日はだいたい0時には寝ている。金曜と土曜の夜だけは生活リズムを崩してもいい日にしていて、2日間の夜はまさに特別な夜だ。

物思いに耽るのはいつだって深夜に限る。思いの丈を叫んでも誰も聞いていないような気がして、最強になった気分になれるのだ。

それに恥ずかしい思いを抱いたとしても、深夜のせいにしてしまえる。たくさんの人が季節のせいに

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自分探しの旅はもう終わりにしようか

自分探しの旅はもう終わりにしようか

「何者かになりたい」

そんな悩みを抱いている人はかなり多い。そんな僕自身も何者かになりたいと思っていた1人だ。学生時代に自分探しのために、ヒッチハイクをしたり、九州1周をしたりもした。でも、どこにも自分はいなくて、そんな当たり前の事実に打ちひしがれるだけだった。

何者とは一体なんなのか。その定義すらも知らないくせに、何者かになろうとしていた。明確な定義すら定まらないその程度の感覚では、ゴールに

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人生は青春の片道切符

人生は青春の片道切符

深夜に眠れずに眺めていたYouTube。iPhoneの画面を睡眠前に見るのは、睡眠に悪いとよく聞くのだけれど、感情には勝てないから困ったものだ。好きなYouTuberはまだいなくて、ずっと芸人のYouTubeか音楽のMVばかり見ているような気がする。

画面越しで笑いを取れたり、かっこいい音楽を目にするたびに、この人たちはプロなんだなぁって。そんな彼らに少しでも追いつきたくて、僕も文章を書き続けて

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音に紛れる、思いが溢れ出す、青い春の瞬き

音に紛れる、思いが溢れ出す、青い春の瞬き

音楽が好きだ。音楽には人を癒す力や悲しみを悲しみのままでいいんだと、錯覚させてくれる不思議な力がある。挫けそうになったときや失恋で悲しい思いをしたときなど、音楽はいつもじぶんの心を代弁してくれていた。

喜びや悲しみなど、あらゆる心情を表す音楽。朝起きたときにテンションを上げるためにかける音楽もあれば、眠れない夜に睡眠を誘うための音楽もある。音楽はいつも身近にあって、いつの間にか生活の中心になって

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たしかに、あれは「愛」だった。

たしかに、あれは「愛」だった。

何気ない日常が幸せだった。朝目が覚めて君が隣にいる。「あと5分だけ寝たい」と言って、あと5分をなんども先延ばししてしまう。寝ぼけ眼をこすりながら、僕が用意した朝食に飛びついては、「たかし君は本当に天才ですな」とさも満足げに、そして、とびきりの笑顔で言う君が好きだった。

あのとき彼女と過ごした時間には、たしかに「愛」はあった。ご飯を1人で食べるよりも、君と食べている方が格段に幸せだったし、同じ時間

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この愛は全部、紛い物だった

この愛は全部、紛い物だった

「ねえ、私たち別れよっか」

おい、沙紀ちゃんよ、ちょっと待て。一体なんの冗談なんだ。一旦冷静になろう。そうか、今日はエイプリルフールだ。嘘をついているのかもしれない。とりあえず本当かどうかを確認しよう。

「え、急にどうしたの?あ、わかった。今日がエイプリルフールだから嘘をついてるんだろ?」

「今日がエイプリフールなんてことすっかり忘れてたよ。嘘じゃないし、この気持ちは本当だよ」

もうわけが

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