【ショートショート】年末の瞬間、年始の瞬間
ずるずると蕎麦を啜ったのは二時間程前。風情のふの字もない、お湯を注ぐだけの簡易的な年越し蕎麦。インスタント特有の強い匂いが室内に未だ漂っている。その匂いが、「今年こそは年越し蕎麦を手作りしよう」と決意していた幾日前の自分を思い出させた。
「結局今年もインスタントで済ませちゃったなあ」
ローテーブルの上。随分と前に冷蔵庫から脱出させたまま放置し、少しぬるくなった缶チューハイのプルタブに指をかける。インスタント蕎麦の匂いを掻き消すように、ぐいっと勢い良くチューハイを喉に流し込んだ。ぱちぱちと弾ける炭酸と、蕎麦を呑み込む爽やかなレモンが心地良い。
そして勢い良く飲めば勢い良く息を吐きたくなる。「あーっ」と言葉をこぼしながら息を吐いて、つけっぱなしのテレビに目を向けた。老若男女誰でも知っている人気芸人が、新年に向けたカウントダウンを快活に告げ始めた。一分前から始まったカウントが瞬く間に、十・九・八と一桁に変わっていく。
笑顔の登場人物が、「ゼロ!」と告げた瞬間、打ちあがる紙吹雪。「ハッピーニューイヤー!」の言葉。結局、今年もいつのも夜と何ら変わらない夜で新年を迎えてしまった。
「もう二〇二四年になっちゃったわー。今年こそは年越しの瞬間にジャンプしようと思ってたのにー」
どうせ達成される予定もないジャンプを口にしつつ、チューハイの残りをちびちびと飲む。画面の向こうは様々なアーティストがライブパフォーマンスを行っていた。深夜な事も忘れる程の明るいステージで行われるパフォーマンスと、観客の歓声。
出演するアーティストになんて然した興味もないのに毎年同じ番組を見るのは、この誰も彼もが浮かれた時間が好きだからだ。年末年始の好きな時間は多々あれども、どれもこの年越しの瞬間から早朝にかけての時間には敵わない。国中を挙げて深夜のお祭り騒ぎが許される唯一の時間。
いくつになっても、特別な夜更かしに心を躍らせる。
「よし、もう一本飲も!」
テレビから何度も聞こえる、「ハッピーニューイヤー」「あけましておめでとうございます」に頬を緩ませながら、更なる夜更かしに備えてキッチンへと足を向けた。
あけましておめでとうございます。
2024年、初小説です。
所謂書き始め。
何を書こうか悩んだが、今年も変わらず好きな時間にする事にした。
年越しを終えてから朝を迎えるまでの、あの時間が一番好き。
多分一年の中で一番好きな瞬間。
でもベイスターズの優勝が決まったら、その瞬間が今年一番好きな時間って言えるのになあーーー!!!
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