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エッセイ

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思いついたことを不定期に書かせてもらう場所です。
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8mmの結婚式

8mmの結婚式

「実はな、おっとうたちの結婚式のビデオが出てきたんや。8mmの。」

いつだったか実家に帰って、夜ごはんも食べ居間でのんびりしている時に父がいそいそと言い出した。本当?最高やんそれ、見ようよ。そう答えると父は嬉しそうにそのDVDの用意を始めた。マメな父は、すべてのホームビデオをDVD化しているのだ。キッチンで一人片付けしている母は、「見らんでえぇそんなん!」と抗議の声を上げているが、おかまいなしに

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レストランでご飯を食べること

レストランでご飯を食べること

4/28 先週の水曜日、オランダで六ヶ月半ぶりにレストランが開いた。テラス席だけ、という制限付きだが、待ちに待った瞬間だけに、長い冬をUbereatsだけで乗り越えたアムステルダマーたちは一斉に沸きたった。週末どの店のテラス席も満席になり、テンションが上がりすぎたのか、ある店では乱闘騒ぎまで起こっていた。テラス席がない店も即席でテーブルと椅子を用意し客を迎えた。例え目の前がただの道路でも、かまわず

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歩くこと

歩くこと

娘が最近ものすごく歩く。歩いて、歩いて、歩きまくる。最初の一歩を披露して一ヶ月ちょっと、彼女の世界は180度変わったようだ。とにかく一瞬だってじっとしてられない。Netflixの赤ちゃんのドキュメンタリーで「歩けるようになった時の感動は、初めてパリを訪れた時のような感動なのです。」ってアメリカ人のおばちゃんが言ってたが、どう考えてもそれ以上だろとツッコミたい。アメリカ人のパリ好きはすごい。どうでも

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世界とふれあいながら走る、走る。

世界とふれあいながら走る、走る。

週に一回、晴れた日を狙ってランニングをしている。ランニングという名の、世界ふれあいタイム。昔はスマホとイヤホンを装備して好きな音楽を聴きながら走っていたが、今は何にも持たずに周囲を観察しながら走るのが何より楽しい。

平日のフォンデルパーク、特に今日のように晴れた午前は最高だ。

休日は入場規制が入るくらい混むこともあるが、平日は皆んな思い思いにのんびり今を楽しんでいる。コーヒー片手におしゃべりし

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ママ友?パパ友?...ペアレント友?

ママ友?パパ友?...ペアレント友?

日曜日、お昼寝から覚めて元気100倍なちゅっぱ(娘)を近所の公園の砂場へ連れて行くことにした。その前に、ふと思いついて、パパ友のアーノルドにメールをした。

「今からちゅっぱ連れて砂場に行くけど、良かったらジョインしてね!」

フランス人のアーノルドは、娘の親友ミリエラのお父さんだ。娘とミリエラは、同じ保育園に通っている。ミリエラはいつもニコニコしていて、とろけるように可愛い。死ぬほど可愛い。

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パンと情熱のあいだ

パンと情熱のあいだ

名前が分からないパン屋がある。看板と呼べるようなものはなく、Googleマップにも載っていない。ガラス張りでなんだかスタジオのような見た目なので、たとえ前を通りかかっても「SPELT(スペルト小麦)」「SOURDOUGH(サワー種)」とガラスに白インクで大きく書いていなければ、よもやパン屋とは思わないだろう。営業しているのは水木金土のみで、しかもオープンは11時だ。そんな不思議パン屋を、今日はつい

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さよならiPhone

さよならiPhone

iPhoneが死んだ。
全面グリーン。
グリーン・ザ・カオス。

娘がiPhoneを叩き落とすなんて日常のことなのに、溜まり溜まったダメージが飽和したのか、打ちどころが悪かったのか。旦那の「今、結構イヤな音したよ...」と言う一言を流し、のん気に拾ってひっくり返した私の目に飛び込んできたのは、変な色のiPhoneだった。何この緑、全然目が喜んでない。

焦って電源ボタンや音量ボタン、スワイプや長押

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工作の時間

工作の時間

ダンボールハウスを作った。

娘の新しいおもちゃをDIYしようとしただけだが、いざ屋根を作って窓を切り抜いていたら、やたらと自分が楽しくなっていた。

窓は開閉式にしようか。
屋根には煙突も作ってみようか。

大人になって久しく忘れていたこの感覚。工作に夢中になる感覚だ。

小さい頃、手作りのダンボールハウスを秘密基地にして、庭に立て篭もった。何があんなに楽しかったのかは思い出せないが、あの時の景

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桜とサンドイッチ

桜とサンドイッチ

イースター連休初日の金曜日である今日、保育園は開いてるという奇跡を知ったのはつい昨日だった。全く予想していなかった棚からぼたもちボーナスに、昨夜神妙な面持ちで「実は、ビックニュースがあります...」と旦那に発表したくらいだ。一瞬固くなった旦那の顔は、すぐにほころんだ。

そんなわけで今日はサンドイッチを作って、二人でお花見をした。おそらく今日この街で一番のサンドイッチが作れたと思う。桜は、とっくに

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さようなら口内炎(希望)

さようなら口内炎(希望)

口内炎が痛い。

痛くて、痛くて、生きる気力が奪われる。

気づけば二個、治りそうになったら新しい奴がひょこっと現れる。
絶望だ。口内炎というのは、二週間くらい平気で治らない。

なんなんだまじで。何のためにいるんだお前らは。

母親から受け継いだ、最高にいらないギフトだ。

熱いものが痛くて食べられない。
舌に出来たらもう終わり。
ふと意識が口に行く度に絶望する。
寝る前に「いてぇ」と絶望して、

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花屋のおばちゃんは歌う

花屋のおばちゃんは歌う

「部屋が暖かかったら、花は最低30分は紙に包んだままにしてね!」

いつも行く花屋のおばちゃんは、花を買う度にお決まりのフレーズを言ってくる。花をクルクル紙で巻きながら。

花が温度に慣れるためらしいが、それはさておき、これまでもう30回は言われている。ニ年近く通っているが、顔を覚えてもらうにはまだまだ足りないらしい。

おばちゃんの髪はショートのルビー色。花屋の後ろには、相棒の犬がいつも気持ち良

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オムライスの思い出

オムライスの思い出

小学生のころ、おかずよりもご飯が好きだった。ごはんと梅干し、もしくはごはんとイカの塩辛があれば私は大丈夫だった。焼肉となれば、うどんばかり食べていた。中学の頃友達と食べ放題の焼肉バイキングに行った時はじめて焼肉の具にうどんは存在しないことを知った。うどんコーナーからうどんを持ってきて、網で焼いたら焦げついて友達から普通に嫌がられた。でも言いたい、焼肉のタレで焼いたうどんはかなり美味しいのだ。

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