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第2回DJイベント「サラダボウルと煮込みシチュー」ができるまで。(5)SJC2022解説・前編


ご機嫌麗しゅう、主宰でございます。(2022年執筆)

先日はSwing Jazz Cruise 2022にお越しいただきまして、誠にありがとうございました。不肖わたくし20余年音楽をやって来ましたが、正直ここまで好き勝手させてもらったのは初めてかもわからない。誰に頼まれるでもなく期待を背負うでもなく、それなのにここ数ヶ月日間は音楽のことで頭が一杯に。こんな幸せな時間はなかった。本日はその感想戦とあいなります。

改めまして、SJC運営の皆様に厚く御礼申し上げます。マジシャンが公演後にわざわざ種明かしまでしてくれるの⁉みたいな内容の本稿ではありますがどうか、最後までお読みいただければ幸いです。子どもの頃からこうセルフライナーノーツとか読むのが大好きだったんですよ。どんなことを考えて、あるいはどんな葛藤を経て辿り着いた表現だったか全部ご説明します。

ジャズヴォーカル一本勝負を選んだ理由。

フォーマットや歌唱法に至るまで実に多種多様であること、これが大きい。ルーツミュージック的かまだ見ぬ先鋭的な方向性か。スキャットやフェイクの妙。人種宗教文化あるいは政治的立場の違いも歌に乗っかってくる感覚。どんな楽器編成で、どんなアレンジを施すのか。あるいは映画音楽との結び付きといった部分も今回、主宰の中で大きな意味を持つテーマでした。

記号的映像的ニュアンスまで落とし込んだ網羅的セットリストを目指して。無論選曲がキレッキレならお客様は足を止めて聞いて下さるはずなのですがそれでも主宰はまだまだ甘ちゃん、「視覚的効果」を狙っていかねばという焦りの気持ちがあったこともまた事実です。そこで参考にしたのが、コントや一人芝居の世界。

傘を持ってステージに上がった経緯。

小林賢太郎、イッセー尾形、竹中直人、越前屋俵太。図らずも昨年スタートした母校映画部再始動がその大きな原動力となりました。バンド単位としてでなく単騎で初めて上がるステージだったもので、コンセプトも流れも全部独りで決めて表現しなければいけません。本当に困りました。そこで何の気なしにバナナマンの「rain」っていうコントを観始めたんですね。

雨降ってんなー、傘差してんなー。でも、これがSJCやジャズと一体どんな関係があるってんだ⁉とりまメモ帳に浮かんだアイデアを書き出してみる。学生時代の思い出とか、イベント運営の苦労とか、自分のルーツとか。30分維持できそうなモチーフや世界観って何なんだろうと。パントマイム的手法ならコバケンか、洞察力ならイッセーさんか、奇抜さなら竹中さんか?

雨にまつわる小噺。

SJC運営に限らず、主宰の大学4年間は雨に泣かされる場面が実に多かった。中止判断のタイミング、あるいは雨天時の代替ステージ確保が金銭的に困難であったり。全身びしょ濡れになりながら機材の搬入搬出、勿論風邪を引きました。別イベントで実行委員長をやった際は当日38度2分でしたし。もう雨はこりごりだ、でもそんな苦い思い出だって音楽性に昇華できるのかも。

3年振りのオフライン開催=いわばハレの日にどんな曲から始めるべきか。晴れの歌で始めて雨の歌で締める、なんていうのはどうだろう。それを繋ぐキーポイントといえば傘なのかなと。暑さを凌ぐためのツールが、いつしか雨風を避けるツールに代わる。そこにある種のストーリー性を見出すことはできないものか。選曲で細かくそれに肉付けしていく。よしこれでいこう。

晴雨兼用傘と画用紙を小脇に抱え、舞台へ。

画用紙に関しては正直、飛沫防止の側面が強かった。でも考えようによっては「Subterranean Homesick Blues」オマージュなのかとか、ビートたけし、鉄拳、ザコシショウのパロディと受け取っていただいても全然構いません。まあシンプルに曲名紹介用に機能すれば十分だったんですけれどね。想像力豊かなお客さんには無限に深読みしてもらえるよう、このスタイルに。

バンド紹介文に記載した「なじみ深いジャズ・スタンダード」という一節、あれは決して一見さんお断りって意味ではありませんで。むしろライト層のお客様にこういうのがスタンダードって言うのか、と知っていただいた上で「一味違った現代的サウンド」として実はオールドファン層の方と同じ感覚で聞いてもらえているはずですよ、と諭す意図があった。

キーワードは「溶け合いたい」。

「わかる人にだけわかれば良い」それも一興、でも実は見えない部分で浅瀬とコア層がひっそりと「溶け合っている」それもまた一興。元来、クラブと言えば犯罪の巣窟だとか子どもが入れないだとか。あるいは細かな段差や、狭い通路といった昔ながらの反ユニバーサルデザイン的造りも多く。主宰もあまり足が良くないので、そりゃあできることなら座って聞けるDJを切望。

今回、そういった意味でも希望の広場ステージに預かったことは何かの縁を感じずにいられなかった。とはいえステージ解説だけで2,000字超えてしまいましたのでさすがに次回「セトリ編」へと持ち越し、機材厨な貴方へ向けたシステム解説もたっぷりお届けします。使用機材Turntableなんて書いたため超重装備を想像された方も多かったのでは、しかし蓋を開けてみれば…

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