佐々木倫🦒Kirin Sasa

Kirin is lovely Giraffe. I can make fictio…

佐々木倫🦒Kirin Sasa

Kirin is lovely Giraffe. I can make fiction stories 宇宙を旅するキリンです。小説を書いています。

最近の記事

カレー竜

カレーの表面に目をこらすと、ふつふつと泡立つ一角がある。ウェルシュ菌が繁殖しているのだろうか? あなたは眉をひそめてスプーンを持つ手を止め、カレーの表面から湧き立つ角、そして黄金の鱗を見る。登り竜だ、景気がいいねぇ、厨房の男と目が合う。周囲の客も拍手や歓声で竜の登場を喜ぶ。小さな洋食店のカウンターテーブルで、あなたは気まずそうに誰にともなく頭を下げ、結局半分も食べずに店を出た。黄金色の竜は、あなたの頭上でとぐろを巻いて、ぷかぷかとパイプを吹かしている。兎年のあなたは恥ずかしそ

    • 舌禍

       冬になり、空気が乾燥しているせいか、肌が荒れていた。もどかしい痒みを我慢できずに掻きむしると、傷口から鱗のようなものが生えてきて、慌てて皮膚科へ行った。医師はピンセットで鱗をつまみ上げて大事そうに瓶にしまい、痒みを抑える飲み薬を出してくれた。薬はあまり効果がなく、異変は首筋や頬にも広がっていて、図書館の受付業務に支障が出始めていた。来館客があからさまに顔をしかめたり、距離を取ったりする。鱗が生えた生き物を忌避する人は多い。きっと人魚を連想するからだろう。黒いマントを被り露出

      • かぐやSFアンソロジー『新月』#にゅむん

        キリンがキリンになったのは第一回かぐやSFコンテストという掌編小説の公募がきっかけでした。覚えていない人もいるかもしれないので思い出してみよう。 このたびかぐやSFコンテストがweb媒体を飛び出して紙媒体になるという。          \わー/ \すてきー/ \わー/  そのためにクラウドファンディングを募っているんだって。みんなはもう予約したか。まだの人は早めに申し込みなさい。 前も書いた気がするけどキリンがSFを読んだり書いたりするようになったのはカクヨムにあった

        • 月下樹精

           冬の寒い日のことだった。派遣の仕事からくたくたになって家に帰る。執拗で陰湿なクレーム処理に精神力を奪われ抜け殻のようだった。迎えてくれる家は冷たい。室温は外気とほとんどかわらないか、それ以下だ。かじかむ指で暖房を入れ、気力を振り絞り、外に干しっぱなしだったジーンズを取り込もうとにガラス戸をあける。  すると、ベランダに見知らぬ男が立っていた。立っていたってここは私一人の住む部屋なのだ。外から侵入したのは明らかだった。二階だから登れないこともないが、危険を冒して他人の敷地に

          グリント

           北極圏にもわずかだけれど季節の変化がある。オーロラの妖精ホアは、編み物をする手を止めて窓の外を見る。もうすぐここにも夏が来る。夏になったら氷のねぐらから移動して居を改めなければ。沈まない太陽の熱で氷の城などひとたまりもないだろう。年々このあたりも熱くなる、夏は嫌いだ。  ホアは皺の増えた手を氷の窓から射し込む光に透かす。あれから何度目の冬を耐えたっけ。五十までは数えていたけど、それ以降はわからなくなった。冬の間は城に閉じこもって、夏になるとカリブーの群れと移動する。冬はずっ

          砂の惑星

            アラームがカプセルの中に響き渡り、意識の輪郭を浮かび上がらせる。目の前のものにただ圧倒されている。長いあいだ夢を見ていたはずなのに何一つ思い出せない。感覚も記憶も認識すらも、どこか違う世界の手触りに似て、茫漠とした不安の中でまどろんでいる。  口元に差し出されたパウチが冷たかった。水が流れ込んでくる。やっと私は感覚を思い出す。突き刺すように冷たい水。粘膜を通して体の中に染み込んでいく。  しばらく待っても職員が迎えに来ない。もう一度夢の中に戻れるだろうかと横になってみるけ

          あのこは貴族

          観てきた。よかった。山内マリコの原作小説を映像化した作品。 主演は門脇麦。準主役に水原希子などがいる。 婚姻制度は地方と都心の限られた地域で同じ働きを見せる。地方では土地や稼業の継承。都心では蓄財(人脈を含む)の継承のために。外から女を家に迎えて、生まれた男にすべてを注ぎ込む。財も、教育も、なにもかもを。全然違うと思っていた二人の人生を「似てるね」と笑った美紀の無邪気な様子が華子を解き放ったのかもしれない。 華子は開業医の家系に産まれて医師と結婚することを望まれている。親

          11月21日 バク 朗読

          朗読しました 時計の音が入っている… よかったら投票してください。勝ちたい。 https://twitter.com/SekizawaTeppei/status/1329575170076413952

          11月21日 バク 朗読

          11月21日 バク 朗読

          BFC2一回戦

          BFC2一回戦敗退が決まった。 落ち込むけどまぁしょうがない 読んでください。下のリンクに私の作品がいます。できたら愛してください。感想なんかなんぼあっても困らへんのでください。 たのしかった。

          バク

          「息、してる」  老人の顔をのぞき込んでいたまひるが振り向いた。お化け屋敷を探検するなんて言い出した時に、もっと強く止めればよかった。外から見るだけだって言っていたのに。まひるはエマにおかまいなしに家の奥に入っていって、ベッドのある部屋にたどり着いた。ベッドには老人が一人横たわっていた。「死んでるのかな?」まひるが言って、「わからない」エマは答えた。気持ち悪い、怖い、早く帰りたい。誰かに見つかって、先生に言いつけられたら、お母さんに怒られたらどうしよう。頭の中を素早く駆け巡る

          BFC2に出場が決まった。

           驚き。これはまさか。と自分でも思った。  百均で十月はじまりの手帳を買った。来年の目標と、今年やり残したことを書いた。やり残したことに書いたことのひとつ。BFCに出ること。  やり残さないでいいことになった。今年中に済ませられそう。  ほか、今年中にやり残したこと。東京に行く。BFCまわりで知り合った人と会う。

          BFC2に出場が決まった。

          BFC2に短編小説を応募しました。よくかけてる。好きなやつです。落ちても自分が喜んで読める作品だから問題ない。ちなみに文藝賞は落ちました。一次もだめだったみたい。

          BFC2に短編小説を応募しました。よくかけてる。好きなやつです。落ちても自分が喜んで読める作品だから問題ない。ちなみに文藝賞は落ちました。一次もだめだったみたい。

          #短編小説 乾いた風

          顔のいい男が嫌い。顔がよくて背が高くて手足の長い男が嫌い。それは「」が手に入れたかった肉体だから。第二次性徴の訪れとともに去ってしまった可能性の亡霊。さようなら、さようなら過去の新しい未来。まっさらな未来と自由帳の切れ端。破った紙切れに小石を包んで投げつけた。未来の自分がこんなふうだったらいいなぁと夢想したとおりの顔を持つ君が不思議そうに振り返る。怪訝そうに前に向き直った横顔に告げる「好きだよ」。ほんとうは大嫌いだった。君が持つからだ、「」はほしい。「」の好きな女の子たちがな

          #短編小説 乾いた風

          はじめまして 佐々木倫です

          はじめまして。このあいだ生まれたところです。佐々木倫です。佐々・木倫🦒と読みますが佐々木さんでも佐々さんでも倫ちゃんでもきりんでもジラフでも好きなように読んでください。親しみを込めて呼んでいただけると振り返ったりすると思います。憎しみを込められると返事はできないかもしれない…所詮きりんなのであまり高度なコミュニケーションは期待しないほうがよさそうです。 佐々木倫という名前でSF小説の賞に応募したら運よく最終選考に残ってしまった。やったね。うれしかったのでTwitterとかn

          はじめまして 佐々木倫です