記事一覧

「夜の速度」についてのメモ書き

2023年10月―2024年2月まで大阪・葉ね文庫で、山口斯×佐々木紺「夜の速度」(コーディネーター:牛隆佑)が終了しました。 (注意書き:これは展示についての企画段階の…

kon
2か月前
10

ニュース(10句)

2023年の豆の木誌に提出した作品10句です。 ** 「ニュース」   佐々木紺 ゆふぐれの藤棚に鬼殖えてゆく 籐椅子を垂れて手足へ血のおもさ 夢に記憶組み替へられて…

kon
2か月前
6

アメリカ

アメリカの句をふと残しておきたくなったので。適宜追加します。 ** 桜餅働かぬ世のやはらかく 陽の白さ囀りばかり残る部屋 花束に隠すグミベア四月来る やはらかき…

kon
3か月前
13

Day3 ユプシロンNo.6(途中まで)

「ユプシロン」を送っていただいた。いつも表紙がうつくしい色を選んであり、今回は濃いすみれ色。 はい。ということで今日の大好きな一句はこれです。 一夜なら泊めてい…

kon
4か月前
5

Day2 百合俳句アンソロジー「ひめごと」

まず表紙が可愛いのが良い。このアンソロジーにこの表紙はキャッチーで、大正解だと思う。本は薄いけれど中身は見た目よりもかなりぎゅっと詰まっている(俳句の量も)。 …

kon
4か月前
11

Day1 「虹と指サック」石原ユキオ

今日からアドベントカレンダー代わりに俳句の感想を書きます。 詩誌アンエディティッド 2023.8.31発行 ゲスト作品 「虹と指サック」 石原ユキオ より。 この連作を読…

kon
4か月前
7

「鳥と刺繍」/箱森裕美 感想

「鳥と刺繍」は俳句を読むことも書くことも、こんなにもわくわくして楽しい、と思わせてくれる句集だった。夢中で読んだ。でも楽しいだけではなく、ヒュッと背筋に風が走る…

kon
5か月前
11

雛の客とはたましひを身のそとに 岡田一実(鏡47号)

雛の客とはたましひを身のそとに 岡田一実 (鏡47号) たましいは普通は身のうちに秘められている(と人間は無意識に思っている)もので、身の外側に出ているたましいっ…

kon
9か月前
3

フロリダ、生活はたのしいけど、知事がやばい。反ワクチン、人工中絶の禁止、反LGBTQ…。最近トランスジェンダーの子どもに性別違和を解消する医療を受けさせると、親が親…

kon
11か月前
4

楠本奇蹄「いつかささやく」

潜伏キリシタンの農民の生活、その中での身近な人との別れを詠んだ連作として読んだ。自分はずいぶん前に絵踏という季語に惹かれて隠れキリシタンについて調べた時期があり…

kon
1年前
6

加害者にならないために

以下は、2022年度の俳句同人誌「豆の木」に載せていただいたものです。 この時点で、プロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」からのアンケートは送…

kon
1年前
25

好きな山にのぼる(各自で)

句を上手かどうか、で測りたくない。うまくない句というものがあるとしても切り捨てたくない。評はもちろん誠実にするし、素晴らしいものには驚嘆する。でも自分の目にひっ…

kon
1年前
3

Day7

子どものころから性的な表現に忌避を感じるほうではなかったので、フェティッシュ・エログロもそれなりにたくさん通ってきた。 だからたとえば、ツイッターで起こっている…

kon
1年前
6

この数年で書いたもの

・じぶんのための備忘録 ・時期、媒体、タイトル、URLの順。 ・賞関連のもの、俳句以外のもの(散文や短歌)は除く。 2018年 アンソロジー「さよなら、おやすみ、またあ…

kon
1年前
4

Day4 Webで読める詩歌

本日は「踊り場 冬の文化祭号」に載せた内容を転載しています。 ** 今回は何を書いてもよいということなので、ラッキー!遠慮なく好きにしよう!!と思った。Webで読め…

kon
1年前
9

第二言語

最近は英語が第一言語でない相手と喋る機会が多く、細かい感情を推し測ったり、表したりしないでよい(というか私・相手の英語のレベルでは、それが難しい)。好意を表すと…

kon
1年前
6
「夜の速度」についてのメモ書き

「夜の速度」についてのメモ書き

2023年10月―2024年2月まで大阪・葉ね文庫で、山口斯×佐々木紺「夜の速度」(コーディネーター:牛隆佑)が終了しました。

(注意書き:これは展示についての企画段階のメモであり、
山口斯さんが作られた実際の展示とは異なるものです。
また、展示に使用いただいた句は下記が全てではないです。)

*****

「夜の速度」   佐々木紺

【メイン部分】

A 青葉濃く硝子戸に浮く雪の紋
B 対角

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ニュース(10句)

2023年の豆の木誌に提出した作品10句です。

**

「ニュース」   佐々木紺

ゆふぐれの藤棚に鬼殖えてゆく

籐椅子を垂れて手足へ血のおもさ

夢に記憶組み替へられて夏柳

窓は目を隔てあやめの枯れつくす

風死して鋭きものを選りぬく手

ぽつかりと夏の底ひや貨物駅

蘭鋳のひらひら靡く星の面

宙をしばらく水からくりのみづの玉

たましひもニュースも引つ掛かる網戸

袖に来てきつと昨日

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アメリカ

アメリカの句をふと残しておきたくなったので。適宜追加します。

**

桜餅働かぬ世のやはらかく

陽の白さ囀りばかり残る部屋

花束に隠すグミベア四月来る

やはらかき棒にて殴りあふプール

鴨凉し雨後のみづうみの水位

鴨凉しプールは池に隣り合ひ

魚をらぬプールや鴨は来てゐたり

鴨が子に何か教えて迅くなる

追へばプールの真中に逃げて鴨の五羽

ロンドン橋いくつか落ちて夏の夕

どこかには

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Day3 ユプシロンNo.6(途中まで)

「ユプシロン」を送っていただいた。いつも表紙がうつくしい色を選んであり、今回は濃いすみれ色。

はい。ということで今日の大好きな一句はこれです。

一夜なら泊めていい月きれいだし 小林かんな

これ!!大好き!!!

もう少し書きましょう。

もちろんこれは恋愛の始まりの句としても読める。でもこの良さはそれとも違う気がする。
ここから恋愛は始まらないほうがこの句はなんだか良い。
流れる水のような、

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Day2 百合俳句アンソロジー「ひめごと」

まず表紙が可愛いのが良い。このアンソロジーにこの表紙はキャッチーで、大正解だと思う。本は薄いけれど中身は見た目よりもかなりぎゅっと詰まっている(俳句の量も)。
好きな句がたくさんあったのでひとまず引いておく。そのうち追加で何か書けるかも。

蛍ほど尊く生きていられない 音無早矢
人間の曲線撫でてラベンダー 音無早矢
詰められて林檎しづかにふたつかな 森舞華
愛憎のうまれはおなじ秋日傘 森舞華

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Day1 「虹と指サック」石原ユキオ

今日からアドベントカレンダー代わりに俳句の感想を書きます。

詩誌アンエディティッド 2023.8.31発行
ゲスト作品 「虹と指サック」 石原ユキオ より。

この連作を読むと、非正規労働者(おそらく女性) / 正社員(性別は明示されない)の対比、そしてジェンダーギャップのことをうっすら考える。連作中一番ひやりとしたのは「天井はあなたには床アイスティー」だった。

「昼寝しているのは正社員のひと

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「鳥と刺繍」/箱森裕美 感想

「鳥と刺繍」は俳句を読むことも書くことも、こんなにもわくわくして楽しい、と思わせてくれる句集だった。夢中で読んだ。でも楽しいだけではなく、ヒュッと背筋に風が走るような怖さや、無常感を感じる句もあってまったく油断できない。
「鳥と刺繍」の句には何気ない軽さと、言語化しにくい繊細で心地よいバランスがあり、時折息をのんでしまう。

句を読むとき、心地いいと感じる理由はどこにあるのだろう。
たとえばこの句

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雛の客とはたましひを身のそとに 岡田一実(鏡47号)

雛の客とはたましひを身のそとに 岡田一実 (鏡47号)

たましいは普通は身のうちに秘められている(と人間は無意識に思っている)もので、身の外側に出ているたましいってだいぶ無防備で危うい気がする。誰かに傷つけられてしまいそうな、なんなら他のものに持っていかれてしまいそうな。

雛の客になるとき、または雛に限らず美術品などを見るとき、たましいがちょっと身の外に出ているような感じがある。たましいに外の

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フロリダ、生活はたのしいけど、知事がやばい。反ワクチン、人工中絶の禁止、反LGBTQ…。最近トランスジェンダーの子どもに性別違和を解消する医療を受けさせると、親が親権を剥奪される(親権が州に移る)というやばい法律が可決されてしまった。フロリダでは、去年は子どもに性的指向や性自認に関する教育を受けさせない法律(Don't say Gay Bill)が可決されたばかり(当初は小学校低学年までが対象だっ

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楠本奇蹄「いつかささやく」

潜伏キリシタンの農民の生活、その中での身近な人との別れを詠んだ連作として読んだ。自分はずいぶん前に絵踏という季語に惹かれて隠れキリシタンについて調べた時期があり、オラショ(祈りの言葉)・パライソ(天国)・アニマ(魂)・ロザリオといった言葉はなつかしい。これいい連作だけど用語の解説なしではきびしいのでは、という危機感を感じてここに書き残しておく。

焼野原くわんのんの手はこゑを灯し

聖母マリアは、

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加害者にならないために

以下は、2022年度の俳句同人誌「豆の木」に載せていただいたものです。
この時点で、プロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」からのアンケートは送付されていましたが、アンケート回答は未公開の状態でした。そのことを踏まえてお読みいただけましたら幸いです。

***

加害者にならないために
-プロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」に応えて-
         

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好きな山にのぼる(各自で)

句を上手かどうか、で測りたくない。うまくない句というものがあるとしても切り捨てたくない。評はもちろん誠実にするし、素晴らしいものには驚嘆する。でも自分の目にひっかからなかったものがあっても、それを取るに足らないものとして扱いたくない気持ちがある。
たとえば短歌の最先端を行っている若い人たちの間では、新聞投稿短歌を自分たちのやっている短歌とは別のものとしてくくる向きがあるように見受けるが、自分はそう

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Day7

子どものころから性的な表現に忌避を感じるほうではなかったので、フェティッシュ・エログロもそれなりにたくさん通ってきた。

だからたとえば、ツイッターで起こっている性的広告表現の規制における論争を見て、高校生のときの自分は鼻で笑ったと思う。現実はもっともっとクソであることをすでに私たちは知っていた。塾の隣にはラブホ街がある。公共交通機関に乗れば性被害に遭い、女子数人で歩いていてすら売春を持ち掛けられ

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この数年で書いたもの

・じぶんのための備忘録
・時期、媒体、タイトル、URLの順。
・賞関連のもの、俳句以外のもの(散文や短歌)は除く。

2018年 アンソロジー「さよなら、おやすみ、またあした」(午前三時の音楽)  「抽斗」(10句)
URLなし 冊子あり

2018年 週刊俳句 「信号は青」(10句)
https://weekly-haiku.blogspot.com/2018/06/10_3.html

201

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Day4 Webで読める詩歌

本日は「踊り場 冬の文化祭号」に載せた内容を転載しています。

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今回は何を書いてもよいということなので、ラッキー!遠慮なく好きにしよう!!と思った。Webで読める詩歌の中から、最近読んでだれかにおすすめしたくなった作品をあげてみる。どれもおすすめです。

① 住田別雨「特定記憶媒体郵便」
ネットプリント・ちゅいんぐゎVol.9
https://tefcomatsumoto.hatenablo

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第二言語

最近は英語が第一言語でない相手と喋る機会が多く、細かい感情を推し測ったり、表したりしないでよい(というか私・相手の英語のレベルでは、それが難しい)。好意を表すときはできるだけ分かりやすくストレートに。おいしいものを一緒に食べる。用事があるときは率直に言う。起こった出来事の共有もかなりおおざっぱだ。
そういう感情をうごかさないでよいところは、母国語の人と喋るよりも、場合によっては楽だったりする。相手

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