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手放せない心理 : 恋愛における「保有効果」と、給付金4630万円の誤送金問題

自分が所有するものに高い価値を感じ、 手放したくないと感じる心理現象のことを認知心理学では「保有効果」または「授かり効果」と呼んでいる。

一度手に入ったもの、手に入ると思ったものを奪われてしまうと、人はそれに苦痛を感じる。一旦自分が手に入れたものに愛着を感じ、手放すのが惜しくなるという心理的傾向だ。

現在あなたが保有しているモノ・環境の価値が所有していない時よりも高く感じ、それらを手放すことに強い抵抗を感じてしまうという心理効果。一度自分が保有したものを手放すという損失を避ける「損失回避の法則」によって生じた心理現象ともいえる。

恋愛における「保有効果」

別れたいのに別れられない。相手と自分の不協和音を感じながらも、ずるずると関係を続けてしまう人が多いのは、「今までの思い出や関係性があるから」だという。

それまでに費やした時間や感情、金銭など、様々なものが固執となり、相手との関係が将来的に良いものではないと頭では理解しているのに、言うに言えない何かが後ろ髪を引かれる。そしてそれが自分でも説明できないのであれば、この「保有効果」を疑ってみる必要がある。

給付金4,630万円の誤送金事件

山口県阿武町のコロナ関連の給付金4,630万円が誤送金され、回収できなくなっている問題で2022年5月18日、田口翔容疑者が逮捕された。返還を拒否し続け、オンライン・カジノに金をつぎ込んだとされる容疑者の心理はどのようなものだったのか。

誤送金が判明した2022年4月8日、田口容疑者は最初は返還に同意していたが、到着した銀行の玄関前で突然態度を変えたという。同行していた職員とどんなやり取りがあったのか、田口容疑者の心境がどう変化していったのかはわからないが、「金を返したくない、オンライン・カジノで賭けたい」という誘惑が勝ったのだろう。公表された出金記録では、その日からお金を引き出している。

彼は、自分の口座に振り込まれた大金を手放すのが惜しくなったのだ。自分の金ではないとわかっていても、返還すると自分が損をするように感じ、ギャンブルできる機会を奪われてしまうような気がしたのではないだろうか。

代理人の弁護士は会見で「金を所持しておらず、現実的に返還は厳しい」と明らかにした。誤送金された4630万円も、34回にわたって出金しオンラインカジノで使いきったと供述しているという。誤送金は、そんな「カジノで金をパッと使う」願望を実現するのに絶好の機会を容疑者に与えた。

町職員に「お金はすでに動かした。もう戻せない。犯罪になることは分かっている。罪は償う」と語ったという田口容疑者は、弁護士に「少しずつでも返していきたい」とも話しているという。

授かり効果は人に罪を犯させるような強い感情や衝動を生むこともある。好まない相手といつまでもダラダラとした関係を続けることも同じだ。その結果、その人が払う犠牲は、その想像にも及ばない一生のものになるだろう。

実はこの事件はその後、意外なターンを迎える。次号へ続く。

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