貝島とも

政治、経済、投資、家計、老後、人生設計

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最近の記事

MMTを考える7―一応の結論:MMTは正しいと思うが、技術や時代がまだ追いついていないー

結局のところMMTは正しいのか、実現可能なのか、という議論に一応の結論をつけておきたい。 国家財政において税収が先にあるわけではなく、貨幣発行が先にある(税収がバックボーンではない)ことは冷静に考えればよくわかることである。また、税の役割が貨幣の流通を促すこと、その流通量を調整する機能であることも理解できるはずである。 ただ、この事実は国家財政にしか通用せず、家計や企業、地方自治体の財政には通用しないということが人々の理解を阻害していると思われる。 国家財政とそれ以外をし

    • MMTを考える6 ー高橋是清の財政政策はMMT的だったー

      高橋是清は高橋財政で有名であるが、これを見ていくとどうもMMT的な政策であることが分かる。 日本銀行金融研究所というサイトがある。 このサイトで「いわゆる高橋財政について」で検索すると島謹三という方の論文を見ることができるが、高橋財政に顛末を見ることができる。 長文かつ当時の時代背景があまり知られていないこともありハードルが高い文章ではあるが、高橋財政はおおむね以下の三つの要素で成り立っているようだ 1、積極財政 2、低金利政策 3、国債の日銀直接引き受け(財政の赤字ファイ

      • MMT理論を考える5 MMTと戦争

        前回MMT理論下でのベーシックインカムを考えてみたが、通常の政治状況であればインフレ率もあまり心配ないのではないか、と書いた。 では通常ではない政治状況ではどうなのか。たとえば戦争状態ではMMTはインフレを抑制できるのか考えてみたい。 MMTは税収以上の貨幣を発行できるわけだから戦費調達には都合のよい理論だと言える。ただし、通常の歳出増とはレベルが違うので、インフレリスクは相当なものとなる。もしかするとあっという間にインフレ率が許容範囲を超えて貨幣発行のペースを落としてかつ

        • MMT理論を考える4 MMTならベーシックインカムを実現できるのか

          MMT理論の話題でよく登場するのがベーシックインカム。これは国民に等しく分配される生活費と思えばよいが、全面的に導入した国はほとんどない。過去にスイスが導入を議論したことがあったが、実現しなかった。 スイスの場合、やはり財源が問題になったようだ。 日本円換算で1人あたり月額30万円弱の支給が想定されたようだが、仮にスイスの総人口約800万の半分を成人人口とすると、月1兆2千億円必要になる。年間14.4兆円。2020年のスイスの歳入は8兆円ほどなので、まあ既存の経済理論では不

        MMTを考える7―一応の結論:MMTは正しいと思うが、技術や時代がまだ追いついていないー

          欧米のイスラエル擁護で今後の世界の情勢は決定的に不確実となり、さて日本はどうしよう。

          2023年10月からのイスラエルとハマスの戦闘は、たしかに今回のことだけに限ればハマスが先に仕掛けているが、ガザ地区のおかれてきた状況やパレスチナの歴史を思えば、日本人としてはイスラエルに懐疑的な見方をする向きが多いように思う。 しかし欧米においてはそうではなく、アメリカではイスラエルを非難すると解雇されるなどのニュースが伝わっている。またドイツは歴史的経緯から即座にイスラエル支持を打ち出していると報じられている。市民レベルでは意見が分かれている部分もあるが、国家としての態度

          欧米のイスラエル擁護で今後の世界の情勢は決定的に不確実となり、さて日本はどうしよう。

          インボイス制度導入でやはり分断。一方で売上の確実な把握の必要性も感じる。

          インボイス制度が10月より導入されて、一か月以上たった。導入前後において自分の周辺でもさまざまな意見が聞かれた。 インボイス制度は何か、ということについてはここでは詳しく述べないが、簡単にいえば事業主が消費税を国に納める際、仕入れ時に払った消費税を控除(差し引いて)して納めてよいのだが、控除するためには仕入れ業者がインボイス登録してあることが条件となったことだ。 売上1,000万円以下の業者はインボイス登録の有無を選べるため、非登録業者から仕入れた分については事業主は消費税

          インボイス制度導入でやはり分断。一方で売上の確実な把握の必要性も感じる。

          国債が国民の借金というのは間違いだが、国民の資産という話もおかしい。

          マスコミは国債発行額を説明するときに「国民1人あたり〇〇万円の借金」と表現する。しかしこれはかなりおかしい表現である。国債の償還に国民の財産を取り上げるなんてことはないし、仮に税収が償還の財源だという認識での説明だとしても法人税など個人から以外の税収もあるわけで、かなり雑な説明と言わざるを得ない。 なお、日本においてはその発行した国債は日銀と銀行や保険会社で75%以上保有しており、利息も保有先に向かうため、資金が循環しているような状態になっている。 一方でマスコミのいい加減な

          国債が国民の借金というのは間違いだが、国民の資産という話もおかしい。

          MMT理論を考える3 インフレ対策をどうするのか

          MMT理論はプライマリーバランスに縛られない貨幣発行を行うことができるのでデフレ対策としてはめっぽう強い。一方でインフレの場合、特にその度合いが強い場合には相当な増税を行わねばならず、国民感情もかなり悪化すると思われる。そのたびに内閣が倒れる可能性があるので、自動的に税率を調節するシステムを構築しなければならない。 また、たとえばその税が消費税だった場合、高騰している商品価格にさらに上乗せとなるため、生活に与えるダメージが大きい。賃上げがそのペースに合わせて行われるのであれ

          MMT理論を考える3 インフレ対策をどうするのか

          池袋暴走事故をペダルレイアウト適正化の流れに繋げてほしかった

          2019年の池袋暴走事故は刑事事件、民事事件ともに終結し、「上級国民」と揶揄された被告は禁固刑にて収容された。 この事件は乗用車(どうやら2代目プリウス)を運転していた89歳の老人が東池袋界隈を走行中にブレーキとアクセルを踏み間違えて暴走し、複数の車両や人を撥ね、うち母子二人が死亡したもので、この2人がクローズアップされてかすんでいるが、実はほかにも2歳の幼児を含め8名が巻き込まれてケガをするというとんでもない事故になっている。 このことについて世間では被告の経歴や年齢が注

          池袋暴走事故をペダルレイアウト適正化の流れに繋げてほしかった

          厚生労働省が配偶者手当廃止を推進している(年収減のおそれ)

          下記リンク(厚生労働省Webサイト)にあるとおり、厚生労働省はパートなどの年収の壁への対応の一つとして配偶者手当の廃止を提案している。 パートなどは年収103万円、130万円と非課税、社会保険の壁があるのだが、配偶者手当もこの金額を基準にしていることが多く、その存在も壁になっているとして廃止を提案しているのだ。 「配偶者手当見直しのフローチャート」というパンフでは「配偶者手当廃止と子供手当の増額」をセット、のような記載をしてるが、たいていの場合子供手当の増額が廃止される配偶

          厚生労働省が配偶者手当廃止を推進している(年収減のおそれ)

          少子化問題をも消費増税の手段にする財務省

          2022年に産まれた子供の数は77万人だそうで、それは戦後の約3分の1で過去最低だそうだ。この勢いだと人口は50年度には3分の2になってしまうらしい。 これに対し、内閣の下部組織である内閣官房が主導する「こども未来戦略会議」は少子化対策の提言をまとめた「こども未来戦略方針」を今年2023年6月に発表した。詳しくは下記リンクを参照されたい。 こども未来戦略方針(PDF) 内閣官房Webサイトより 内容としては若年層の所得増加、手当の拡充などで、子育て世代でもある私からすると

          少子化問題をも消費増税の手段にする財務省

          国債のデフォルトは無いと財務省すら言っている

          2023年11月時点で、17兆円の物価高対策が大変話題となっている。柱は非課税世帯7万円支給と所得税4万円一律減税(これを減税と言えるのか?)だ。これに対し、各方面から批判が出ている。 ひとつは物価高対策なのに現金を給付しては物価高を助長するのではないか、というもの。たしかにそのとおりで、物価が高い場合は貨幣を引き上げるのが定石である。おそらく今回のインフレは円安に伴うもので、需要が原因ではない、という理論なのだろう。しかしそうであればやはりガソリン税などの減税で対応するのが

          国債のデフォルトは無いと財務省すら言っている

          性別変更の手術要件(特例法)の判決から強権政治から国民を守る意志が見えた

          2023年10月25日、性別変更の要件として手術を規定したいわゆる「特例法」の違憲性を問う最高裁判決が下された。この裁判は性同一性障害者の人権とを問うだけでなく、なりすまし痴漢によって女性が性被害にあう可能性を危惧する人々によって法擁護運動も展開され、話題となった。 しかし判決文を読むと裁判官はそういう世間の関心とは別の方向を向いた判決を出したように見えて興味深いものであった。 この特例法は正式には「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」といって、性別を変更する際

          性別変更の手術要件(特例法)の判決から強権政治から国民を守る意志が見えた

          MMT理論を考える 2 税金をどう設計するか

          MMTにおいては税金は「貨幣を流通させる」「物価を調整する」の二つ役割担っている。従来のような「財源」「富の再分配」といったような役割は持っていないと解釈してよいだろう。 税に対する認識の大転換が必要であるが、これは現在の複雑かつ細分化された税の種類を大幅にリストラするということでもある。これを考えたい。 現在の税金といえば「法人税」「所得税」「固定資産税」「相続税」「消費税」「自動車税」「ガソリン税」「たばこ税」などがあげられる。この中で物価調整効果が一番強いのは消費税

          MMT理論を考える 2 税金をどう設計するか

          MMT理論を考える 1 -目からうろこの理論だが、政策は語っていない-

          日本における国民への税負担は拡大の一途をたどり、一方でプライマリーバランスは一向に改善しない。それは税収を増やしても国家予算が同様に拡大しているからである。もし財務省が本気でプライマリーバランスを追求しているならこんなことにはならないであろう。つまり、財務省も本当は日本の財政が破綻しないことを知っているのだ。 さて、なぜ破綻しないのか。理由はいくつかあるが、MMT理論(現代貨幣理論)でも説明することができる。 本サイトではMMT理論そのものよりもその先の政策について考察し

          MMT理論を考える 1 -目からうろこの理論だが、政策は語っていない-

          2023.10月の自民党の「経済対策」は非課税世帯を狙い撃ちした「選挙対策」

          2023.10月末に打ち出すとされる自民党の経済対策は9月に報道された内容と同じと思ってよさそうだ。報道については当サイトの9月28日更新の記事で紹介している。 簡単に説明すると非課税世帯だけを優遇することにより、彼らを投票行動に誘うものである。 一時は所得税の減税も検討したようだが、所得税の減税は非課税世帯には関係がなく、むしろ減税した分だけ非課税世帯への給付額が減ることになる。そうなると非課税世帯の投票意欲が減退してしまう。 非課税世帯だけが優遇される制度を続けてもらう

          2023.10月の自民党の「経済対策」は非課税世帯を狙い撃ちした「選挙対策」