見出し画像

絆をつなぎ、山を駆ける。箱根駅伝はスポーツであり、冒険でもある。見る人たちに勇気を与えるドラマ

毎年、箱根路を駆けるランナーを見て思うのは、この駅伝はスポーツであり、同時に冒険でもあるということだ。今年も東京と神奈川・箱根を往復する箱根駅伝が行われている。2日の往路では、ランナーはタスキという形の絆をつないで、箱根の山上がりへ挑んでいった。この冒険に挑む姿勢が、見る人たちに勇気を与えてくれる。冒険者たちからのエールだ。

2日の往路を制したのは青山学院大。2年ぶりの優勝だ。1区で9位だったが、徐々に順位を上げて3区でトップに立った。2区から4区の各走者が区間賞。そして山登りの5区へとタスキをつないだ。

5区でタスキを受けたのは若林宏樹選手。雨が降る悪コンディションで山上がりに臨んだ。雨の中での山上がりは、ここ20年近くなかったとテレビアナウンサーは語っている。今年は困難な状況でのアドベンチャーとも言えた。

標高が上がるごとに気温も下がっていく。5度を切る冷え込んだ状況になっていった。それでも若林選手は、山をひょうひょうと駆け上がっていく。

芦ノ湖のゴールまで5区20.8キロを、若林選手は1時間9分32秒で走破した。昨年打ち立てられた区間記録の1時間10分4秒を更新して、ゴールテープを切った。

箱根駅伝は高速化が進んでいる。今年の青山学院の往路優勝タイムは5時間18分13秒。従来の記録よりも3分3秒も早かったのだ。

それでも、私には箱根駅伝は冒険という意味合いが強いと思う。困難に立ち向かい、山上がりに挑んでゴールをめざすからだ。

今年は悪コンディションの中で、さまざまな「山の〇〇」が登場した。城西大の5区を走ったのは、山本唯翔選手。昨年は5区新記録を打ち立て、「山の妖精」と呼ばれた。

山本選手は今年も快走。1時間9分14秒のタイムは区間新記録。昨年、自分が打ち立てた歴史を超えたのだ。

城西大は1区からすべての走者がひとケタ台の順位と安定感を発揮して、若林選手にタスキをつないだ。この勢いに若林選手が後押しを受けたとも言えるだろう。絆が力となったのだ。

そして早稲田大も往路5位と健闘した。11月の全日本大学駅伝では10位と力を出せずシード権を手にできなかった。箱根路へ復活をかけたチームは、2区山口智規選手が8人抜きの快走。5区では6位でタスキを受けた工藤慎作選手が1年生ながら山上がりに臨んだ。

市販の眼鏡をかけて、雨でレンズが曇りながらも、工藤選手は区間6位と好走。「山の名探偵」と言われ、SNSでもトレンド入りした。長年、早稲田は山上がりに苦しんできたが、1年生がチームの難題を解決した形となった。

3日は6区の山下りに始まり、10区までのランナーが東京のゴールへとつないでいく。彼らの冒険者魂は、困難な状況に置かれている人たちにも、きっと勇気を与えるはずだ。

冒険者たちよ、絆をつないでゴールへめざせ!

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?