新作が公開されないなら旧作を掘ればいいじゃないか！いっぱい観たので、その中から語りたくなった5作品を。これはマンスリー企画になりそうだ

暁闇(2018)

音楽×映画の若手監督発掘プロジェクト「MOOSIC LAB」、2018年の準グランプリ作。ネット上で活動するミュージシャンが突然楽曲を削除したことをきっかけに孤独と苦痛を抱えた高校生3人が静かに心を通わせ始める、、というあらすじ。かなりヘヴィなシーンも多いが、テンポ良く引き込まれる。

音楽映画において、"音楽が消えた"ことがトリガーとなるというのが捻りが効いてて好きだ。まるで残響の中にいるような不思議な浮遊感の中で良い顔つきの役者が躍動している。特に主演の青木柚は「死にたい夜にかぎって」での好演も記憶に新しいが、憂いを帯びた表情が素晴らしかった。抑えを効かせられる若手はイイ。これからのユマニテを引っ張っていってくれ。

ラスト数分間は完全に解釈をこちらに委ねていて。今の自分なら、「ヒミズ」の時の園子温のように、「希望に負けた」と言ってしまえそうだ。

ぼっちゃん(2012)

大森立嗣監督作品。ある男が通り魔殺人を起こすまでを描いた人物映画。水澤伸吾演じる主人公の言動は、完全には他人事とは割り切れない。こういう鬱屈とした気分を抱えたことはあったし、"なんかもうだいたいクソ"みたいなことはよく思う。もし、この根がもっと深かったら、、と恐ろしくなる。

同じような境遇を持つ友人(宇野祥平)と心を通わせつつ、やはりまたしてもその人格が交流を妨げていく。こうなったのは誰のせいでもない、ということが分かっている故の苦しさ。これってあらゆる人が抱えてる病巣だし、簡単に取り除けるものじゃない。凶悪な犯罪をニュースで観る度、自分がここにいたかもしれない可能性に思いを馳せるのって、してしまいませんかね。

映画自体はかなり激しく転がる物語で、暗さだけじゃないのも良かった。

おじいちゃん、死んじゃったって。(2017)

岸井ゆきのの初主演映画。ソフトバンクのCMなどを手掛けた森ガキ侑大の初監督作でもある。厄介で面倒な家族をリアルを持って描く、という作品は数多いが、その中でもキャスティングが随一。岩松了と光石研の兄弟なんてずるくないか。2人が繰り出す小競り合い、面白いに決まってるじゃない。

作中、岸井演じる主人公が繰り返し後悔する「祖父が死んだ瞬間に自分はセックスをしていた」ということに関しては、そんなメインテーマにするようなことか？とは思いつつも、生と死の共存する世界についての諸々の逡巡と思考の解脱を経てからのベッドシーンはとても綺麗で心動いた。冒頭の同シーンと比べて、生命の眩しさみたいなのを伝えるにはこの上ないシーンだった。これくらいの必然性がないとベッドシーンって要らないと思うのよ。

天国はまだ遠い(2016)

「寝ても覚めても」の濱口竜介監督による38分の短編。1人の男と1組の姉妹についてのお話、としか言えないなぁ。ある大仕掛けが物語の中心となる映画なのであらすじも難しいのだが、観終わった後の感傷は4月でも屈指。何というか、、死んだ人がいるとして。その人が忘れられた時が本当の死だ、みたいな言葉があるじゃないですか。その描き方として、物凄く自分に刺さったんですよね。居る、居ないを超えたところで想うっていう在り方が。

傍から観ると、おかしなことを映してると思うし、でやっぱちょっと笑っちゃう内容でもある。しかしその違和感とか怪訝な目をくぐり抜けた先で、大事な事を描き切るっていうのは、たまらなく素晴らしいと思う。最後の傘のシーンなんて、かなり泣いてしまった。そこに居る、と想うことの痛みよ。

AKIRA(1988)

お前コレ観てなかったんかシリーズと題して色々観始めようということで、大友克洋監督の代表作を。ネット上では様々な予言を的中させる作品として知られたり、2019年・反対されまくってる五輪を控えた東京が舞台だとか、今観るのにはうってつけ。結果として、途轍もなくエキサイティングなアニメ映画であった。こんな映像表現が80年代にあったのか、、という戦慄。

退廃とした未来都市という舞台には否応なしにワクワクさせるし、サイキックベビーと神めいた存在という要素てんこもりな構成を緻密な色彩で描き出していて見入ってしまった。最終盤のあのウネウネとか不快な程に伸びやか。しかしこの頃からパラレルワールド思考や"向こう側"への思慕がSFにはあったのか、と思う。"此処じゃない"って想い、どの時代にも普遍なのだ。

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