岡村 心平 | focusing living labo

公認心理師・臨床心理士・TIFIフォーカシング認定トレーナー。神戸学院大学心理学部講師…

岡村 心平 | focusing living labo

公認心理師・臨床心理士・TIFIフォーカシング認定トレーナー。神戸学院大学心理学部講師。専門は臨床心理学、身体論。「フォーカシングを文化にする」を目指すfocusing living labo代表。https://shimpei-okamura.com

マガジン

  • フォーカシング・ワーク集

    主としてメタファーを用いたフォーカシング・ワークの紹介や解説記事のマガジンです。

  • 植物×ジェンドリン哲学。

    植物とジェンドリン哲学の交差。人間性と植物性に関するエッセイ集です。

  • 仏教とフォーカシングの交差

    フォーカシングと仏教の関連について、考えていることやお話を伺い連想したことをまとめていきます。

  • ヴィクトール・フランクル関連記事。

    ウィーンの精神科医、ヴィクトール・フランクルについて書いた記事をまとめています。

  • フォーカシング=カンフー論

    フォーカシングとは、カンフーである。「考えるな、感じろ」というブルース・リーの武術の極意から、フォーカシングの熟達について考えます。

最近の記事

  • 固定された記事

「考えるな、感じろ」の本当の意味: フォーカシング=カンフー論(1)

はじめに フォーカシングを、学生や広く一般の方々を対象にご紹介する機会が増えてきた。身体感覚を重視するということはとてもシンプルな一方で、「フェルトセンス」や「体験過程」という用語のとっつきにくさ、中には「一つもピンとこない」こともあったりして、フォーカシングをどうわかりやすくお伝えしていけるかは重要な課題だと思っている。なるべく例を出してわかりやすくしたり、話芸も大事だと痛感するこの頃である。 とはいえ、「自分の実感を大切にすること」自体の大切さなら納得できる、という場合

    • 「春」のフェルトセンスと宮沢賢治: 100年後の心象スケッチ

      「春」(はる)の語源には諸説あるようで、白川静『常用字解』には「寒い冬の間、閉じ込めた草の根」が「日の光を受けてようやく芽を出そうとする」さまをかたちとしてあらわしている、とあった。そもそもの”はる”の語感も、植物の根が「張る」や、農作物を植えつけるために田畑を開墾する、つまり「墾る(はる)」というところから来ているとも言われているようだ。 季節の巡りをあらわす言葉は、植物の振る舞いに語源を持つことが多い。昨年から行なっているフォーカシングのワーク、ボタクロ・シーズンスとい

      • 「フェル活」推進運動!〜 フォーカシングを指し示す社会記号を探して〜

        「社会記号」という視点 最近、「社会記号」という言葉を知った。マーケティングのプロである博報堂ケトルCEOの嶋浩一郎さんの造語である。嶋さんの『欲望する「ことば」』(集英社新書)によれば、社会記号とは「女子力、草食男子、美魔女、おひとりさま、イクメン、インスタ映え..」などなど、いつのまにか現れ、社会に一般化して、新しい意味や価値を示すようになった言葉のことを指すようだ。マーケターやPRパーソンは、このような社会記号を自分で作り出したり、今あるものを広めたり、あるいは流通しつ

        • 阪神の「アレ」はなぜ成就したのか(1): フォーカシングと言霊の呪力

          "A.R.E. "の呪力2023年に15年振りに復帰した阪神タイガースの岡田彰布監督は、就任早々、その年のスローガンを"A.R.E."にすると発表した。結果的に、結果、18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一となった。 以前、オリックスの監督時代も、選手たちが「優勝」というものを意識しすぎないように、あえて指示代名詞の「アレ」という表現を用いた。選手たちだけでなく、マスコミも「今季のアレのために…」「アレの可能性は…」などと用いるようになり、オリックスは初優勝。『ハリー・

        • 固定された記事

        「考えるな、感じろ」の本当の意味: フォーカシング=カンフー論(1)

        マガジン

        • 植物×ジェンドリン哲学。
          3本
        • フォーカシング・ワーク集
          2本
        • 仏教とフォーカシングの交差
          4本
        • ヴィクトール・フランクル関連記事。
          3本
        • フォーカシング=カンフー論
          2本
        • 「ジェンドリン哲学」山岳ガイド
          5本

        記事

          2023年をnoteで振り返る

          今年一年をnote記事で振り返る年末企画も、今回で3回めになりました。2023年も大変お世話になりました。月一投稿を細々と続けてきましたが、記事を通してさまざまな方とご縁がつながり、今年も充実した一年となりました。 2023年にnoteに投稿したなかで、現時点でいいね!を多くつけていただき好評だった記事のベスト3をあらためてご紹介し、年末のご挨拶にかえさせていただきます。 第3位 乳粥の味と身体の固有性: 仏教とフォーカシングの交差(2) 仏教とフォーカシングについては以

          2023年をnoteで振り返る

          十二支=植物の生長段階との交差: 新ワーク「ボタクロ・シーズンズ」の考案

          植物のメタファーとフォーカシング 今の状況を生きている自分自身を植物のメタファーで表現し、自身のフェルトセンスと交差させるフォーカシング・ワーク「ボタニカル・クロッシング」(ボタクロ)を考案しました。すでに今年度の日本フォーカシング協会の年次大会(於: 福岡)や、自前のfocusing living laboで主催している定例オンライン・ワークショップ(10月、11月)でも実施し、たくさんのフィードバックをいただいています。 https://note.com/shimpe

          十二支=植物の生長段階との交差: 新ワーク「ボタクロ・シーズンズ」の考案

          僕たちが「総論」を求める理由: 臨床身体学という"象"を描く

          はじめに: 臨床身体学が立ち上がる 2023年10月15日。鎌倉市内某所のとある素敵な場所で、ある集まりが開催された。新たに始まった「臨床身体学ラボ」のオープニングイベントである。 代表は、ボディワーカーの小笠原和葉さん。僕は事務局のフジムラヨシヒロさんとともに、この集まりの構想段階から関わらせてもらってきた。何度かのオンライン対談イベント等を経て、ついにリアルに集ってキックオフしたのだった。 開会した冒頭、和葉さんがサラリと「この度、"臨床身体学"を立ち上げました」と宣

          有料
          300

          僕たちが「総論」を求める理由: 臨床身体学という"象"を…

          乳粥の味と身体の固有性: 仏教とフォーカシングの交差(2)

          2023年の9月2日・3日に鎌倉にて開催されたZen 2.0 conferenceに参加した。イベントやコミュニティの存在自体は以前から存じ上げていたものの、今回はじめての参加だった。オンライン配信もあったけれど、友人の先生方が登壇されるということもあったりで、現地に赴いてぜひお会いしたくなって現地で参加した。鎌倉という土地自体がはじめてで、とてもいいところだった。 今回のテーマは"Be like water". ブルース・リーの没後50年ということもあり、彼の"be wa

          乳粥の味と身体の固有性: 仏教とフォーカシングの交差(2)

          ヴィクトール・フランクルと「9月1日問題」: 子どもの自殺予防をめぐるコミュニティ実践

          9月1日問題 2015年の8月末、鎌倉市図書館の公式Twitterアカウント(当時)のあるツィートが話題になった。以下のような内容だった。 一般に「9月1日問題」と呼ばれる、2学期を迎える8月末から9月上旬にかけて、18歳未満の自殺発生率が高くなっている問題がある。学校に馴染めない、苦しい状況にいる子どもたちに、気兼ねなくいられる居場所を提供しようとする鎌倉市図書館のこの投稿は、多くの賛同とともにひろく拡散された。以来、長期休みを終えて新学期を迎えるこの時期に、子どもたち

          ヴィクトール・フランクルと「9月1日問題」: 子どもの自殺予防をめぐるコミュニティ実践

          村上春樹とフォーカシングの交差: 「なぞかけ」をめぐる冒険 【改訂版】

          本記事は、過去に日本フォーカシング協会のニューズレターに掲載された下記の記事を大幅に加筆し改訂したものです。 岡村 心平 (2018). 謎かけをめぐる冒険〜村上春樹とフォーカシングの交差〜 日本フォーカシング協会ニュースレター 第20巻 第4号 p. 18-23 本記事は「研究者の数珠つなぎ」という企画で、日本のフォーカシングの研究者がリレー形式で自分の研究についてフランクに紹介するという趣旨のものでした。本来は自分のやったすでに刊行された研究を簡潔にまとめて、会員向け

          有料
          300

          村上春樹とフォーカシングの交差: 「なぞかけ」をめぐる冒…

          ゴッホ・宮沢賢治・ロールシャッハ〜37歳という季節〜

          今月で37歳になった。子どもたちのいわゆる「保育園の洗礼」をもらい、咳き込み、声を枯らしつつ、疲れの取れないお父さんな毎日を送っている。世の中には本当にたくさんの「風邪」があると感心する。 先日、学部3年生のゼミでとある学生が発表中に27クラブ(27歳で亡くなったスターたちの総称、バスキア、コバーン、ジミヘンなど)についてふれていて、そう言えば自分もこのあいだまで27歳だったのに、あれから10年も経ったのかと思い驚愕したのだった。 そしてふと気になったので、37歳ではどん

          ゴッホ・宮沢賢治・ロールシャッハ〜37歳という季節〜

          ボタニカル・クロッシング: 「植物のメタファー」を用いたフォーカシングの提案

          はじめに:身体知と「植物知性」 身体知は、植物に似ている。 周囲の環境を、その身を通じて直接的に応答している。根を伸ばし、葉を広げ、その状況に呼応して生きている。 そんな植物の生長や動き、微細な変化に気づく兆しは、毎日じっくり観察していてもなかなか気づけないことも多い。 植物たちは、動物と違う「時間」を生きている。ゆっくりと時をかけて、その状況下での最適な関係性を、「その場でどのように生きたらいいか」の最適解を非常に精密なしかたで示している。 それは場合によってはとてもか弱

          ボタニカル・クロッシング: 「植物のメタファー」を用いたフォーカシングの提案

          「未知」との遭遇者は逡巡する: 宇宙飛行士・フランクル・村上春樹

          はじめに: 宇宙飛行士は、宇宙での体験をどう語るのか ある人に勧められて、最近文庫化された稲泉連さんの『日本人宇宙飛行士』(ちくま文庫)という本を読んだ。僕自身の専門は臨床心理学と身体論だが、この本の内容があまりに面白く、解説の東工大の伊藤亜沙さんの解説と合わせて、実は自分が関心をもっていることと「宇宙飛行士」というトピックが、実はとても関連しているということに思い立った。 宇宙飛行と心理学に、いったいどんな関連があるのか。宇宙船や惑星間移動などのストレスフルな状況、極地での

          「未知」との遭遇者は逡巡する: 宇宙飛行士・フランクル・村上春樹

          【告知あり】もっと”ぐずぐず”する力と、「ときの解き方」

          2023年4月8日(土)に、毎日文化センター(大阪)で対談イベントを行います。 お相手は、関西大学人間健康学部准教授の小室マイケル弘毅先生。去年の春に実施した「ぐずぐずする力」の続編、タイトルは「もっと『ぐずぐず』する力〜マインドフルネスとフォーカシングからみた”うるうとき”」です。 詳細やお申し込みは、下記のリンクから。 今回の企画の紹介文を下に転記しています。小室先生と”ぐずぐず”と対話しながら書いたものです。 コスパ・タイパなるものに逆向する本企画。先日、同僚の先生

          【告知あり】もっと”ぐずぐず”する力と、「ときの解き方」

          【告知】3/28(火)オンライン鼎談『探究 遊び コトバ』に出演します:イベントに向けての補論、遊びについて

          ご好評をいただきました、昨年11月9日にオンラインで行われた鼎談企画、禅僧の藤田一照さん、ボディワーカーの小笠原和葉さんとのイベントが帰ってきます。今回のタイトルは「探究、遊び、コトバ」です。仏教界きっての(?)、稀代の遊び人の一照さん、そして遊びに神経系から迫る、いつも楽しいところにいる和葉さんとまたご一緒します。3月28日(火)の夜開催です。詳細やお申し込みは以下のリンクをご覧ください。 探究心と遊び心の交差が"一応の"テーマ。前回もそうでしたが、当日集まって、どんな話

          【告知】3/28(火)オンライン鼎談『探究 遊び コトバ』に出演します:イベントに向けての補論、遊びについて

          なぜ 『フォーカシング』 邦訳版の表紙は"怪しげ"なのか?ー禅画デザインの謎ー

          はじめに僕が勝手に「フォーカシング七不思議」と呼んでいるものの1つに、「なぜ 邦訳『フォーカシング』の表紙はあんなにも"怪しげ"なのか?」というものがある。とかく、邦訳版だけが、妙に怪しげで、とてつもなくクールで、端的に言えば個人的には最高にかっこよく、たまらなく好きなのである。この場を借りて、その魅力について実際の書影をお見せしながら語らせてほしい。 原著の表紙デザインについてそもそも、原著「フォーカシング」は、Gendlinが1978年に出版したオリジナル(Everes

          なぜ 『フォーカシング』 邦訳版の表紙は"怪しげ"なのか?ー禅画デザインの謎ー