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松下幸之助の人生観〜死への準備〜

毎日を噛み締めて生きる。1日とて無駄な1日とは思わない。順調な時もあれば、うまくいかない日もある。全てが自分の思い通りになるわけではない。晴れの日があれば曇りもあり、雨の日も嵐の日もある。細かく言えば、全く同じ天気の日は二度とこない。気温や湿度、風向きから見れば必ず誤差がある。だからかけがえのないこの一瞬を味わう。

人生とは、一日一日が、いわば死への旅路であると言えよう。
生あるものがいつかは死に至るというのが自然の理法であるかぎり、ものみなすべて、この旅路に変更はない。
ただ人間だけが、これが自然の理法であることを知って、この旅路に対処することができる。
いつ死に至るかわからないにしても、生命のある間に、これだけのことをやっておきたいなどと、いろいろに思いをめぐらすのである。
これは別に老人だけにかぎらない。
青春に胸をふくらます若人が、来るべき人生に備えていろいろと計画するのも、これもまた死への準備にほかならないと言える。生と死とは表裏一体。
だから、生の準備はすなわち死の準備である。
死を恐れるのは人間の本能である。
だが、死を恐れるよりも、死の準備のないことを恐れた方がいい。
人はいつも死に直面している。
それだけに生は尊い。
そしてそれだけに、与えられている生命を最大に生かさなければならないのである。
それを考えるのがすなわち死の準備である。
そしてそれが生の準備となるのである。
おたがいに、生あるものに与えられたこのきびしい宿命を直視し、これに対処する道を厳粛に、しかも楽しみつつ考えたいものである。

松下幸之助「道をひらく」より

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