Rockfish's Workbench

元中古楽器店員がギター系弦楽器のハードウェアや周辺機器、修理調整にまつわるあれこれを書…

Rockfish's Workbench

元中古楽器店員がギター系弦楽器のハードウェアや周辺機器、修理調整にまつわるあれこれを書き綴っていきます。お持ちのギターのグレードアップや、長く弾き続けるためのメインテナンスについての参考にしていただければ。

マガジン

  • シグニチュアトーン

    自分が本当に鳴らしたい音がまだ見つかっていないギタリストに聴いてほしいギターサウンド

  • ギター雑学

    それほど重要ではないが知っておいて損は無い、ギター系弦楽器の成り立ちに由来するスペックや形状をご紹介するシリーズ

  • hardware&accessories

    #all_for_toneの投稿の中のギター用ハードウェアやアクセサリ関連をまとめています

  • amplifiers

    #all_for_toneの投稿の中のギター/ベース用アンプ関連をまとめています

  • エフェクトペダルの伏兵

    実力があまり知られないまま低い評価に甘んじているエフェクトペダルにスポットライトを当てるレビュー

最近の記事

ジミ・ヘンドリクスが生きている世界線 後編

 27歳の若さで世を去ったジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix、以下JH)が2024年現在も生きていたら‐のifストーリー、後編の今回は彼が70年代以降に歩むであろう音楽的な変遷を想像して綴ってみたい。 ☆  1970年9月18日の、ロンドンのホテルでの急逝という悲劇を回避できたとして、まずジミに必要なのは有能なマネジメント、そして大手レコード会社との契約であろう。  そのうちの、レコード会社との契約はそう難しいことではないように思える。ウッドストック・ミュージッ

    • ジミ・ヘンドリクスが生きている世界線 前編

       いきなり引用になってしまうが、私の手元にある本の中の『ジミ・ヘンドリックス』の項にはこのような記述がある。  1995年発行のこの本で、ジミのこの項を担当したのは島原裕司氏とのことだが、30年ちかい年月が過ぎた2024年現在ではM・ジャガー、K・リチャーズ両名とも80歳になっているし、島原氏がこの項で; と名を挙げたプリンスも、残念ながら2016年に57年の生涯を閉じている。  しかし、1970年に27歳の若さで天に召されたジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix

      • ギターエンジニアリングの袋小路

        一見すると50~60年代からそれほど進歩・変革が無いようなギター系弦楽器の設計開発‐ギターエンジニアリングだが、振り返ってみればイノヴェイティヴな機構やシステムが生まれ、世に送り出されている。  しかし、さらに踏み込んで調べてみると、革新性・独創性のみで突っ走ってしまった結果、袋小路とも呼ぶべき進化の行き止まりにぶつかってしまった例も存在する。  今回はその中から、全自動ギター用可変チューニングシステム、トランスパフォーマンス(TransPerformance、以下TP)をご

        • シグニチュアトーン⑦ Andy Summers

          自分が本当に鳴らしたい音がまだ見つかっていないギタリストに聴いてほしいギターサウンドを紹介する「シグニチュアトーン(signature tone)」、今回はアンディ・サマーズを採り上げたい。 ☆ CIRCA ZERO(サーカ・ゼロ)なる新バンドが2014年にリリースした”Levitation”を聴いた、もしくは上のオフィシャルのプロモーションヴィデオを観たという方で、かつ、ギターを弾いているのがアンディ・サマーズであることにすぐに気づいた方は、はたしてどれぐらいいらっしゃ

        ジミ・ヘンドリクスが生きている世界線 後編

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        • シグニチュアトーン
          7本
        • ギター雑学
          4本
        • hardware&accessories
          17本
        • amplifiers
          10本
        • エフェクトペダルの伏兵
          5本

        記事

          ギター雑学③ FENDER製品のBlondeについて

           それほど重要ではないが知っておいて損は無い、ギター系弦楽器の成り立ちに由来するスペックや形状をご紹介するシリーズの第3回はフェンダー(FENDER)社製エレクトリックギター/ベースの塗装色のひとつ、ブロンド(Blonde)を採り上げたい。 ☆  フェンダー製品の塗装色のうち、限定生産モデルやアーティストシグニチュア等を除く量産モデルに採用の、いわゆるカタログカラーにおいてブロンドは確認されるかぎり最も古くから存在するもののひとつである。    そのブロンドだが、この塗

          ギター雑学③ FENDER製品のBlondeについて

          "Walking In Memphis”を聴くたびに想うこと

           元中古楽器店員としてギターのハードウェアや周辺機器、修理調整に関する記事を書いてきた私だが、noteのタグの中に#音楽感想文というものがあり、読み応えのある多くの記事が集まっているのを眼にして、今回初めて楽曲の感想を投稿しようと思い立った。  採り上げるのはマーク・コーン(Marc Cohn)の”Walking In Memphis”、1991年のヒットナンバーである。 ☆  といっても私自身はマーク・コーンの熱心なリスナーではなく、”Walking In Memphi

          "Walking In Memphis”を聴くたびに想うこと

          ギターと木材の相関関係~SIMON&PATRICK Cut-Away GTを例に

           採用される木材の種類や品質によって価値が決まる、これは何もギターに限ったことではなく木製の楽器であれば程度の差はあれ共通することではある。  とはいえ昨今のギターの、木材と商品価値のバランスというか、製品と世間一般の評価とのズレがやや大きくなりがちであることをもと楽器屋店員の私は少なからず危惧している。  今回はサイモン&パトリック(SIMON&PATRICK)のカッタウェイGTミニジャンボ(以下GWMJ)を例にとって、ギターと使用木材の相関関係について思うところを書き綴っ

          ギターと木材の相関関係~SIMON&PATRICK Cut-Away GTを例に

          DiMARZIO Steve’s Specialについて

           いきなりではあるが、全てにおいて完璧な人間が存在しないのと同様にエレクトリックギター用ピックアップ(pickup、以下PU)にも完全無欠な万能型というものは存在しないと私は思っている。  ただし、限りなくそれに近いPUであれば私にも若干だが心当たりがある。今回はその中からディマジオ DP161スティーヴズ・スペシャルを採り上げたい。 ☆  スティーヴズ・スペシャル(Steve's Special、以下SS)ことDP161の発売は1995年だが、このPUの名を知ったきっか

          DiMARZIO Steve’s Specialについて

          ギターケーブルの実力派 ORB J7 Pro

           2023年現在ではオーブ(ORB)の製品は家電店の、とりわけオーディオ機器売場で見かけたという方のほうが多数を占めるものと思う。  今回はそのオーブが手掛けるギター/ベース用ケーブル、J7プロ(以下J7P)をご紹介したい。 ☆  現在はヘッドフォン用の交換用ケーブル、いわゆるリケーブルの需要に応える製品を多くラインアップするオーブだが、2010年代初頭にはギター/ベース用ケーブルをすでにリリースしていた。  私が当時勤めていた楽器店に、取引会社の伝手だといって製品が並べ

          ギターケーブルの実力派 ORB J7 Pro

          ギター雑学 番外編 German curveなる造形について

          それほど重要ではないが知っておいて損は無い、ギター系弦楽器の成り立ちに由来するスペックや形状をご紹介する『ギター雑学』シリーズだが、今回はボディ外周の加工、その名もジャーマンカーヴ(German curve)を採り上げたい。  といってもギブソン(GIBSON)や現在のフェンダー(FENDER)等のメジャーな製品にはほとんど用いられておらず、2020年代の現在では正統継承者が居ないこともあって知名度も低いため、今回は番外編として扱うことにした。  むろんこのジャーマンカーヴ

          ギター雑学 番外編 German curveなる造形について

          ギター雑学② FENDERギターのネックグリップについて

           それほど重要ではないが知っておいて損は無い、ギター系弦楽器の成り立ちに由来するスペックや形状をご紹介するシリーズの第2回はフェンダー(FENDER)社製エレクトリックギターのネックの、ほぼ全てにあてはまる特徴を採り上げたい。 ☆  フェンダーの、テレキャスター(Telecaster)から始まりストラトキャスター(Stratocaster)、ジャズマスター(Jazzmaster)、ジャガー(Jaguar)、マスタング(Mustang)に至るまでのほぼ全てのギターのネック、

          ギター雑学② FENDERギターのネックグリップについて

          ギター雑学① Les Paulのボディ表のアーチについて

          ギター系弦楽器にはその成り立ちに由来するスペックや形状が現在も引き継がれているケースが多い。  それほど重要ではないが知っておいて損は無い、そんな些事(?)をご紹介する記事が有ってもいいかと思い立ち、ギター雑学というシリーズをスタートすることにした。  初回はギブソン(GIBSON)のレスポール、スタンダードやカスタム、クラシックから現行ラインアップの最下位とされるトリビュートまで共通する、ボディ表のアーチ形状についてご紹介したい。 ☆  ギブソンの長い長いレスポール(L

          ギター雑学① Les Paulのボディ表のアーチについて

          FENDER Hot Rod シリーズ再考

           今回はフェンダー(FENDER)のロングセラーシリーズ、現在のホットロッド(Hot Rod)シリーズのアンプについて、昔話を少し交えながらご紹介したい。 ☆  「現在の」という書き方をしたが、この2~3年でフェンダーのホットロッド(以下HR)というシリーズを知った方にとって最もよく眼に、耳にするのはおそらくブルーズジュニアであろう。   15ワットと小出力ながら「ファット」ボタンを押せば適度なブーストとオーヴァードライヴが得られることもあって高い人気を誇り、アップデイ

          FENDER Hot Rod シリーズ再考

          ORVILLEとGIBSONについて 後編

            ギブソン(GIBSON)社公認の国産ブランドとして今に名をとどろかせるオーヴィル(ORVILLE)についての後編となる今回はギブソン社のブランド展開を中心にオーヴィル、および後継の日本製ギターについて述べたい。 ☆  前編の末尾で「終止符が打たれた」という書き方をしておいてナンではあるが、オーヴィル~エピフォンジャパン~エリート/エリーティストという日本製ギターの製造終了は歴史の必然でもあった。  まず、本家ギブソンの経営状況である。  オーヴィルの展開が始まる直前

          ORVILLEとGIBSONについて 後編

          ORVILLEとGIBSONについて 前編

           今回はギブソン(GIBSON)社公認の国産ブランドとして今に名をとどろかせるオーヴィル(ORVILLE)について書いてみる。  2020年代の現在では希少価値がついたこともあって値上がりしているオーヴィル製品だが、本来は本家(?)たるギブソンの歴史を加味して評価されるべきブランドだと思っているので、この記事では80年代以降のギブソン社の動向もあわせて紹介したい。  長くなるので2回に分け、今回はオーヴィルの登場と、その後継であるエリート~エリーティストの生産終了までを振り

          ORVILLEとGIBSONについて 前編

          ギターの特殊材あれこれ② カーボン製ネック

          前回の記事でエレクトリックギターの金属製ボディを採り上げたが、今回は非木材のなかでもとりわけ知名度の高いカーボン製ネックについて書いてみたい。  絶対に反らない、音が異様に硬くタイト、とにかく高額、などとしきりに評されるわりには実際に現物を触ったことのあるプレイヤーは少なく、噂が独り歩きしている感のあるカーボン製ネックだが、今回はその中でもかつてのトップランナーだったモデュラス(MODULUS)社を重点的に採りあげたい。  なお、以降に名の挙がるギターブランドや製造・販売会

          ギターの特殊材あれこれ② カーボン製ネック