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ギャグ説のロック史

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記事一覧

かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(5)

かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(5)

(マガジン『ギャグ説のロック史』)
 
 
 ここまでTVKをべた褒めで書いてきたが、モノゴトはなんにしろ長所と短所がある。
 弱小で小回りが利くということが武器の、TVKのいい点を採りあげていっていたが、それゆえに「劣っているなぁ」、「困ったなぁ」という部分だっていくつかあった。特に感じた2つを書いてみる。
 
 
 まず、台風に弱かった。
 
 これはテレビ神奈川だけでなく、UHF全般のことだ

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かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(4)

かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(4)

(マガジン『ギャグ説のロック史』)
 
 ベストヒットUSAがDJとして有名な小林克也さんだったのに対して、『Billboard Top40』は中村真理という女性で、知らない人だった。
 
 知らなかったが、テンポがよくて聞きやすい。また、弱小テレビ局はしばりが薄いようで、チャート紹介時にけっこうきわどいチャチャや冗談を入れたりする。そんな軽口は小林さんの低音よりも中村さんの声の方が合っている。こ

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かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(3)

かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(3)

(マガジン『ギャグ説のロック史』)
 
 
 「TVK」が『Billboard Top40』やりだした当時、テレビで洋楽チャートを本格的にやっていたところはなかった。ラジオはあったが、プロモーションビデオが主流になってくると、音だけではもの足りなくなった。
 今思うと、よく弱小UHF局がbillboardを流せたものだ。まぁ裏事情など知らないが、とにかく、視覚から入るチャートがお茶の間に届いた。

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かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(2)

かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(2)

(マガジン『ギャグ説のロック史』)
 
 横浜出身の友人がいて、飲んだ時などに「さすがハマのシティーボーイ」、「ハマのボーイはちがうなぁ」などとからかっていたが、「そのカッコ悪いキャッチフレーズだけは、お願いだからやめてくれ」と懇願された。
 
 友人のお願いも、もっともだが、「ハマの~」という言葉、一応世間で意味は通じる。「ウラワの~」とか「チバの~」というのは、その言い回し自体がない。
 
 

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かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(1)

かつてのUHFが、洋楽ファンを増やした(1)

(マガジン『ギャグ説のロック史』) 

 子供の頃、たった2年ほど住んでいた家で、どういうわけかUHFが映った。
 なぜ映ったのかは分からない。いや、映ったのはアンテナがあったからだろうが、ようは、なぜその家にアンテナが立っていたのか分からないということだ。
 ホントにたまたまだったのだろう。当時は、UHFという言葉も知らなかった。
 
 UHFなどといっても分からないだろうし、また知っていても、

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CD Store たいへん記(2)Re‐Flex の1st(しかないけど)

CD Store たいへん記(2)Re‐Flex の1st(しかないけど)

 
 なんとしてもネットでなくお店で買いたいCDがあると、書いた。
 そのCDは下記の3枚。

『The Politic of dancing』  Re-Flex
 
『Icicle Works』  Icicle Works
 
『Heartland』  Real Life
 
 前回のこのシリーズの記事で、『Icicle Works』をなんとか手に入れたことをまとめた。解散後のソロ作から、なんと

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チャーリー・ワッツの叩く音は永遠に

チャーリー・ワッツの叩く音は永遠に

 
 ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツ、8月24日に亡くなる。ストーンズメンバーとしては、ブライアン・ジョーンズに続いて2人目。
 
 とても影響を受けた人で、書きたいことは山ほどある。しかし多くの人が彼の功績を語り、ぼくなどがここに記しても、その偉大さがさらに広まるものでもない。ポール・マッカートニーなど絶大な影響力を持つ人が語り、偉大さはとっくに伝わっている。
 
 ということで、「す

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CD Store たいへん記(1)Icicle Works の1st

CD Store たいへん記(1)Icicle Works の1st

 
 先月『RecordStoreDay』の日にレコード盤に関する記事を書いたが、それを見に来てくれる音楽好きな方がいて、ぼくもその方の記事を読ませていただている。そこにはレコードやアーティスト、音楽に対する知識と、そしてなにより、溢れる愛が詰まっている。
 
 ぼくはほとんど洋楽だけで、また洋楽でも広く全般聴くわけではなく、ソウルやメタルは聴かない。範囲が狭いので、読ませていただく方々と嗜好が合

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ピーター・グリーンの命日に彼を聴く

ピーター・グリーンの命日に彼を聴く

 
 突出した才能を持つ人間が失踪し、ある日街角で、ごく普通の一市民として暮らしているところを発見される。「おい、あれってもしかして、あいつなんじゃないか?」「まさかぁ」「いやおれもまさかとは思うけど、でも……」など、と。
 そして見つけられた人間は、その後、かつて活躍していた世界に戻り、さらなる才能を発揮する。
 
 
 
 小説やマンガなどでは、ときおり見かける設定だ。ヒーロー活躍譚のひとつの

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Record Store Day 2021

Record Store Day 2021

 
 一昨日17日は『Record Store Day』。簡単に言うとレコード盤の日で、配信やダウンロードで現物が売れなくなった時代に、衰退したレコードショップを救済するイベントを立ち上げようと企画された、年に一回のちょっとしたお祭りだ。当然、日本発祥ではなく、アメリカから起こった。現在は20か国以上に広まっているらしい。

 今年14回目で、通常は4月の第3土曜に開催されるのだが、今年はコロナ渦

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美しき淡単色の世界

美しき淡単色の世界

 
 上記淡単色は造語。淡色もあるし、単色もある。どちらも読みは「たんしょく」。淡い一色の意味合いで使ってみた。
 
 このアーティストをかけていると、不思議と書くのが捗るというものがある。言葉がうまいこと頭から出てきて、言いたいことにピッタリと当てはまる。とても気持ちのいい瞬間だ。それを頻繁に起こしてくれる音がある。
 
 それが好きなアーティストであればいいのだけど、そうでもないものであればち

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ストーンズのいいかげんなシングルカット(6)

ストーンズのいいかげんなシングルカット(6)

 
 (5)の記事をアップしてからかなり経ったが、今回はストーンズ・レーベルになってから最も駄作と言っていい、1980年発売の『エモーショナル・レスキュー』。
 
 並ぶ曲の散漫さは『スティッキー・フィンガーズ』並み。アルバムジャケットは『山羊の頭のスープ』の亜流かのよう。ファースト・シングルは前作『女たち』の焼き直しかのよう。アルバム最初の曲は『ブラック・アンド・ブルー』以上に勢いのないもの。フ

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ストーンズのいいかげんなシングルカット(5)

ストーンズのいいかげんなシングルカット(5)

 
 ミック・ミドルズの書いたスミスの伝記的な本には、『Queen Is Dead』の先行シングルに関する記述が載っている。ごくごく簡単に記せば、バンド側が選んだ曲よりラフ・トレード社長(当然ながら「There Is A Light ~」だ)が推した曲の方が妥当な選択で、それがカットされていれば、もっとチャートの上位に行けただろう、という内容だ。伝記の書き手はバンドの肩を持つ場合が多く、この本にも

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ストーンズのいいかげんなシングルカット(4)

ストーンズのいいかげんなシングルカット(4)

 
 この連載も4回目。書き始めるまでは、1記事にアルバム3枚くらいのペースで進めようと思っていた。しかし力が入って、ほぼ、各記事に1枚ペース。今回はローリングストーンズレコード5作目の『ブラック・アンド・ブルー』。これもシングルの選考に疑問を感じる1枚だ。
 
 ファーストシングルは「愚か者の涙」。これはバラードともいえる歌詞とスローテンポだが、キャッチ―ではない。つかみどころのない流れの曲だ。

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