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ツノがある東館|毎週ショートショートnote

「運の良し悪しは関係ありません。運命さだめです」

これから喰われるというのに、住職は表情一つ変えずに言い放った。どうやら自分の身に起こることを予期していたようだ。

運命さだめ……と申しますと?」

私が尋ねると、住職は「少々お待ちください」と言い、小さな巻物を持って来て、目の前で広げた。紙からはパリパリ……と乾いた音がして、今にも破れそうだ。

「1000年前より、この寺に伝わる巻物です。寺を継ぐ時に、先代の住職が見せてくれました」
「何と書いてありますか?」

「この寺の東館には、もののけから預かった『つの』が安置されており、いずれはその持ち主が取り戻しに来る。おそらく、その時に居合わせた僧侶達は全員喰われるだろう――と」

私は「なるほど」と言い、帽子を取って頭の角を見せた。やはり、僧侶の表情は変わらない。

「命乞いでもすれば、考えてあげてもいいですが」
「命は惜しい。しかし、命乞いをするつもりはありません」

――つまらん。

「日を改めましょう。次は茶と茶菓子でも用意しておいてください」

私が立ち上がると、僧侶は正座したままこうべを垂れた。

――つまらん。が、面白い。

ぐぅ、と腹が鳴る。

時刻は逢魔おうまとき

――どこぞの運の悪い奴でも、喰ろうてやるか。

(了)


たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「ツノがある東館」でした。

つーりーつめたー♪ ゆみのー♪ ふるえるつーるよー♪
つきのひかりにーざわーめーくー♪ おまえのこーこーろー♪

「一行目で惹きつけるショートショートにしてください」とのことで、結構悩みました。
ただでさえ書き出しや冒頭が苦手なので…。

でも、一行目のインパクト、一行目で読者の心を掴むって、小説を書いている人ならば絶対に意識すべきことなんですよね。


先週のお題は「アメリカ製保健室」でした。


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