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家族の精神疾患・障害

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悪い予感と現実

悪い予感と現実

今、このまま死んでしまえたら、と夫が運転する車の中でふと思った。なぜ突然そう思ったのか分からない。なんとなく、悪い予感がしたのだろうか。このまま、穏やかなまま死んでしまえたら、もう何も考えずにいられる、という考えが浮かんだ。でも、現実はそうは行かない。

その日の午後、夫と久々に大喧嘩した。ずっと落ち着いていたから、安心してしまっていた。夫の精神状態が不安定な時は、まともに言い返したり、受け止めて

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ほろ苦く、もの悲しい春

ほろ苦く、もの悲しい春

ふきを近所の友人からもらった。毎年、この季節には裏庭にたくさん生えるそうで、去年ももらって、初めてふきを料理してみた。皮をむくのが面倒だったけど、出来上がったふきを食べたら、その手間も吹き飛ぶおいしさだった。なので、今年ももらって来て料理した。

やっぱり皮むきが一苦労で、むいてる最中は、なんでまたもらって来ちゃったんだろう、と思ったりした。でも、その後で煮たふきを食べたら、やっぱり皮むきの手間が

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理想について

理想について

息子には、なぜかずっと「お金持ちになって、結婚して、子どもを持つ」という理想があったようで、その理想に向かって生き急いでいたように思う。発達障害や精神疾患の影響もあるだろう。生き急いで、行かなくてもいい道に迷い込んでいた。曲がりくねった暗い迷路のような道。

そんな息子が、その理想を手放して、「少ないお金で、一人で暮らす」のも悪くない、という考えに変わって来ているのを感じる。少ない給料でも好きな仕

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また春が来る

また春が来る

最近、急に暖かくなって、桜が一気に咲き始めている。いつもより早く、また母の命日を思い出す季節がやって来る。

息子の調子が久しぶりに悪そうだったけど、自分でセラピストの予約を取って対処していたので、感心しながら様子を見ていた。まだ不安が拭えなかったようで、話がしたいと夜中に起こされて、話を聞いたけれど、息子はできる限りのことをしていて、ほかにできることなどないように思えた。感情で考えずに、論理的に

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地に足をつける

地に足をつける

久しぶりに、少し遠くにある大きな公園(というか、ただの原っぱ)に散歩に行った。澄み切った青空を見上げながら歩いていたら、心も澄んで行くような気がした。遠く広がる地平線を見ていると、しっかりと足が大地につながっている気分にもなった。そして、また自分が不安定になっていたことに気づいた。

普通に暮らしているだけで、家が自然と汚れてしまうように、毎日変わらず生きているつもりでも、色々と問題はやって来る。

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本物の優しさ

本物の優しさ

とても賢くて鋭い友達に、「私の夫の優しさは見せかけで腹黒さがあるけど、あなたの夫の優しさは純粋で本物」だと言われたことがある。その時はよく分からず、彼女の夫も優しいと思っていたけど、今は何となく分かる。そして、自分がどれだけ自己中心的で腹黒くて優しくないか、ということも。

まず、私の夫は、人を妬まない。人の成功や幸せに出会うと、瞬時に心から祝福する。この瞬時に、というのが鍵で、そのためらいのない

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急遽、娘の引っ越し

急遽、娘の引っ越し

急遽、娘が予定より早く家に引っ越して戻ってきた。辛そうに泣きながら電話してきた娘の精神面を一番に考えての、突然の決断。まるで夜逃げのように一気にものを運び出して、家に帰ってからもすべてを一気に片付けて、半日もかからず、あっという間に引っ越しが完了した。

家の中は、思ったよりものが増えたようには見えず、ほっとしている。きっと、この数年でものを大幅に減らして、余白を作っておいたおかげ。娘のもので埋ま

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娘のテニス: 一年後

娘のテニス: 一年後

約一年前にまさかの逆転負けをした同じ場所で、同じパートナーと、同じチームを相手に、娘のテニスの試合があった。そして、またもや全く同じ展開で、まさかの逆転負けをした。3セット目は、まさにデジャヴ。去年の試合後に娘が泣いたことが思い出されて、私は不安になっていた。

試合後、ベンチにいる娘に笑顔が見えて、少しホッとした。でも、まだ分からない。後で泣くかも…と不安を拭い去れずにいたけど、娘は私のところに

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空の巣からフルハウスへ

空の巣からフルハウスへ

空の巣になった、と思ったのも束の間、今年の夏に、家を出ていた息子が戻って来た。そして、なんと来年の夏には、娘も戻って来るらしい。いずれまた、二人とも出て行くことになるはずだけど、一年ちょっとはまた家族全員がそろって、フルハウスになる。

空の巣は、とても気楽だった。夫と二人なら、たいして夜ごはんも作らなくてよかったし、家の中が散らかることもあまりなかった。毎日が静かで、時間がゆったりと流れている気

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怒りや悲しみの感情と折り合いをつける

怒りや悲しみの感情と折り合いをつける

たまに見る同じような夢がある。設定は様々だけれど、その夢の中で、いつも私は夫の言動に傷ついて怒っている。それは明らかな不貞行為であったり、意地悪な態度であったりするのだけど、なぜか夫は全く悪びれない。私は、なぜ私が怒っているのか、なぜそれが間違った行為であるのかを一生懸命夫に伝えようとする。でも、夫にはそれが聞こえないか、または全く理解できないかのようで、その夫の態度に私はさらに苛立ち、怒りわめく

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娘の笑顔と寝息

娘の笑顔と寝息

娘が生まれた後しばらく、夫の精神疾患のせいで苦しんだ後遺症か、夜中に目が覚めて眠れなくなることがよくあった。過去の苦しみや将来の不安で、頭の中がいっぱいになってしまって。

そんな時はいつも、別室で寝ているまだ小さかった娘の様子を見に行った。そうすると、娘は私が来た気配に気づいて起きてしまうのだけど、私を見ると、いつも微笑んだ。嬉しそうに、にっこりと。その笑顔に、何度救われたことだろう。無条件で、

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そばにいるためだけに会いに行く

そばにいるためだけに会いに行く

娘の様子がおかしかったので、急遽会いに行ってきた。娘は精神的に調子が悪いと、自分の殻に閉じこもってしまって、あまり話さないけれど、そばにいるだけでも、と思って。

夫も一緒に来てくれた。娘は機嫌が悪い時には夫に極度に冷たくなり、全くと言っていいほど話さない。目も合わせない。それでも、夫は会いに行ってサポートする姿勢を見せてくれた。

犬も一緒に連れて行った。娘の姿を見つけて、飛びついて喜ぶ犬を見て

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今、自分ができることだけ考える

今、自分ができることだけ考える

夜は魔物。息子も娘も、精神的に不安定になると、まず夜に眠れなくなるようで、たいてい夜中に私の部屋に来たり電話して来たりする。暗闇と静けさの中、ネガティブな思考に取り憑かれて眠れなくなるのは、私も経験済み。周りはみんな眠りについているし、次の日に支障が出ないよう、自分も眠らなければ、という焦りも出てきて、余計に苦しくなる。夜には精神的不安定さが、くっきりと現れる。

息子であっても娘であっても、夜中

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生き急がないように。発達障害でできること

生き急がないように。発達障害でできること

先日書いた生き急いだ同級生のことを思い出して考えたけど、息子も生き急いでいる気がしてならない。いつからか、多くの問題を起こしたり巻き込まれたりしながら、すでに私よりも多くの経験をしている息子を見ていると、もっと平穏に暮らしてほしいと願ってしまう。

知らないまま何も対処せずにいた発達障害の影響が大きかったとは思う。そのせいで精神疾患・障害も引き起こすことになったのかもしれない。色々と対応し始めた今

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