Masaki INOMOTO / 井本将来

文系院卒→会社員一年目(@福岡)。書いていることは個人の見解です。 主に読書で思ったこ…

Masaki INOMOTO / 井本将来

文系院卒→会社員一年目(@福岡)。書いていることは個人の見解です。 主に読書で思ったことを書きます。

記事一覧

現代思想のトリックスター 〜中沢新一『構造の奥―レヴィ=ストロース論』を読む

 2005年の日本国際博覧会、通称「愛・地球博」は、「自然の叡智」をテーマとして開催された。1990年代後半、このイベントを前に、中沢新一は通産官僚からとある相談を受け…

桜の頃にT-BOLAN

桜の花が街を彩り始めた。季節の変転を一気に感じさせるように、急に暖かくなってしまったのだから、桜も花を開かざるを得なかったのだろう。 大濠公園では毎年のように、…

ケインズ「孫世代の経済的可能性」を読む

この国では、未来に希望を持つことが禁じられているかのようだ。いまや世を飛び交う言論のほとんどは、未来への希望を失ってしまった。人口減少と少子高齢化を筆頭に、沈み…

旅路のレヴィ=ストロース 〜水曜どうでしょうの「野生の思考」

水曜どうでしょうは、やっぱり面白い。  水曜どうでしょうを見ていると、どういうわけだかすげぇ落ち着く。ってのがここ2~3年くらいずっと感じていることで、どうやらあ…

大海賊の「資本論」〜出光佐三『マルクスが日本に生まれていたら』を読む〜

大海賊、大暴れ。 「海賊王に、俺はなる!」  日本にとどまらず世界に轟いたこのセリフは、なんとも冒険心をくすぐってくる。国民的、いや、世界的マンガは、ここまで子…

ものを五感であじわう〜小林秀雄「骨董」を読む〜

 小林秀雄というひとの文章は、こころを直接に刺激してくるものだ。古くさいようでいて、現代を生きるわれわれの五感を刺激するような芳醇さが、どうもそこにはある。なか…

現代思想のトリックスター 〜中沢新一『構造の奥―レヴィ=ストロース論』を読む

現代思想のトリックスター 〜中沢新一『構造の奥―レヴィ=ストロース論』を読む

 2005年の日本国際博覧会、通称「愛・地球博」は、「自然の叡智」をテーマとして開催された。1990年代後半、このイベントを前に、中沢新一は通産官僚からとある相談を受けたという。当時愛知県は、瀬戸市の「海の森」を切り開き、博覧会後公団住宅にする計画を進めようとしていた。そこに懸念を抱いた通産官僚は、中沢に相談を持ちかけたのだった。

 中沢は、あえてパビリオンを建てないことを積極的な思想として打ち

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桜の頃にT-BOLAN

桜の頃にT-BOLAN

桜の花が街を彩り始めた。季節の変転を一気に感じさせるように、急に暖かくなってしまったのだから、桜も花を開かざるを得なかったのだろう。

大濠公園では毎年のように、「桜祭り」が催されていた。軒並み屋台がひしめき合い、レジャーシートがそこかしこに敷かれる。芝の緑に幾何学的な青色が敷き詰められ、見上げるほのかな桜色。鮮やかな色彩に彩られ、缶ビールを傾ける。うん、これこそ花見の儀礼だよね。

ぼくは公園を

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ケインズ「孫世代の経済的可能性」を読む

ケインズ「孫世代の経済的可能性」を読む

この国では、未来に希望を持つことが禁じられているかのようだ。いまや世を飛び交う言論のほとんどは、未来への希望を失ってしまった。人口減少と少子高齢化を筆頭に、沈みゆく列島のイメージが出来上がりつつある。なにせ、日本の首相が米国大統領に、この国を「不沈空母」なんて言ったのは40年も昔のことなんだから。
 「この国に未来はない」。そんな決まり文句が、暗澹とぼくらを覆ってくる。

ケインズの「予言」

 

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旅路のレヴィ=ストロース 〜水曜どうでしょうの「野生の思考」

旅路のレヴィ=ストロース 〜水曜どうでしょうの「野生の思考」

水曜どうでしょうは、やっぱり面白い。

 水曜どうでしょうを見ていると、どういうわけだかすげぇ落ち着く。ってのがここ2~3年くらいずっと感じていることで、どうやらあのリズミカルなボヤキとヒゲの高笑いには、ヒーリング効果があるらしい、なんて勝手に思っちゃってる。

 そんな具合だからもう、何度も何度も見ちゃうわけ。深夜バスに敵愾心をむければむけるほど、どうも安心感を感じちゃうし、まったくもってわけわ

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大海賊の「資本論」〜出光佐三『マルクスが日本に生まれていたら』を読む〜

大海賊の「資本論」〜出光佐三『マルクスが日本に生まれていたら』を読む〜

大海賊、大暴れ。 「海賊王に、俺はなる!」
 日本にとどまらず世界に轟いたこのセリフは、なんとも冒険心をくすぐってくる。国民的、いや、世界的マンガは、ここまで子ども心をくすぐってくるもんだ。
 しかし、海賊に妙なワクワク感を覚える幼な心は、一体どこからやってきたのか?海賊なんていえば、大抵は酒飲みの悪党ってなイメージを想起するし、東洋でいえば倭寇なわけ。ルフィみたいな人情味あふれる好青年が想起され

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ものを五感であじわう〜小林秀雄「骨董」を読む〜

ものを五感であじわう〜小林秀雄「骨董」を読む〜

 小林秀雄というひとの文章は、こころを直接に刺激してくるものだ。古くさいようでいて、現代を生きるわれわれの五感を刺激するような芳醇さが、どうもそこにはある。なかでもぼくのこころを捉えたのが、「骨董」なる短文である。そこでは、なんとも言えぬ薫りを纏ったことばが織りなされる。

 この文章の「あじわい」に、ハッとさせられた。率直に言って、これほどまでにことばを感覚的に味わうという経験を、これまでなし得

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