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当たるもカヌレ、当たらぬもカヌレ

なんのこっちゃと思うかもしれないけれど、私の所属する会社の社長はいまエクセルシオールのカヌレに非常にお熱である。 正直にいうと、私はあまりカヌレというスイーツに積極的に食指が伸びたことが20数年の人生なかであまりなかったので、社長が「めっちゃうまいねん!」と語るその山岳状の物体にそこまで心を傾けたことはなかった。 ちょうどいいのでこいつも分析してやろうとおもう。

ぐへへ…

まず、子(社長)曰くカヌレにはギャンブル性があるとのこと。区分的にカヌレは焼き菓子だが、焼き上がってから店頭に陳列されるタイミング。それを買うまでの時間などが複雑に絡み合い、まず「自分好みのソレ」に出会うことがなかなか難しいらしい。なので「今回はアタリかもしれない!」という思いもあり、ついつい見つけると手にとってしまうと…。なるほどこれがカヌレの生存戦略か。毎回アタリではない。ただ、アタリに会う確率もそれなり。となると必然的に手にとってしまうのも頷ける。 つまり適度なランダム性を持たせることで、機会の不整合性を獲得させユーザーにリーチしてるわけだ。宝くじとかおみくじと似てる。

じゃあ、そのランダムな要素は具体的にカヌレにおいてはどこにあるのか。社長が布教のために買ってきたエクセルシオールのカヌレを貪りながらヒアリングを続けると、その会議(雑談)に同席した先輩がカヌレのうまさについて力説しはじめやがったのでそこから考察していきたい(みんなカヌレ好きだなオイ) 。
『外殻の硬さ 』『中身のとろけ具合 』『ほのかに香るブランデー』 数十分の間先輩の口から紡がれたカヌレへの思いを、羅列すると前述の3つみたいなかんじになる。 彼の好みによるところもおおきいが、外殻の硬さはただ硬いだけではなくカリッと感が命。中身は半熟よりのやや生焼けに感じるくらいのトロッと感が必須。そしてほのかに感じるブランデーの香りがあればそれはもう無類で、特にトロッと感が1番重要らしい。 あれか?パンケーキの焼く前のdoughをそのまま食べてるような禁忌性が人を惹きつけてるのか?多分そうだな。 外殻は湿気で柔らかくなるし、中身には予熱で火が入るし、ブランデーの香りは揮発していく。彼の説明においても、社長の論調と共通していたのは時間経過で失われていく要素に大きな魅力を感じている点は一致している。 つまりカヌレは、刹那的かつ瞬間的にパーソナライズされる美味いものなわけだ。しかもその機会が自身が作り上げたものでない限り正確に把握はできないときてる。

そりゃ見かけたら買いたくなる

この魅惑の焼き菓子が私には、12の棘を持つ鉄壁の要塞に見えてきた…。なんか黒いし。 18世紀にフランスで誕生したカヌレが、今もほぼ当時の形でこんな極東の異国で愛される理由は確かにあったわけだ。 そんな感じで、自分の中でカヌレに関するUX的考察が完結したと思った矢先。社長から布教を受けた直属の上司から朝定例の際に“ローソンの冷凍カヌレ”なる新たな嗜好が提示された…。 オノレカヌレ

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