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三島由紀夫『春の雪』の主人公2人を紹介する

今日は登場人物の情報を整理するために、主人公格の2人を紹介しておきたい。松枝まつがえ清顕きよあき本多ほんだ繁邦しげくにである。

松枝清顕

物語冒頭では18歳。松枝清顕は貴族趣味的な優雅を好む青年であった。風流な女性の姿に魅入られることもあったし、軍人的な道徳観や野卑やひな若さを嫌っていた。一方で、冷笑的な面も持ち合わせていた。決して情熱的な恋愛に進んでいくような性格ではなかったらしい。

彼の性格は松枝家の環境に由来しているのだろうか? どうやら違うようだ。松枝家はもともと鹿児島の出身であり、明治維新を機に成り上がった。決して伝統的な”名家”ではなかった。一家が重んじていたのは軍人や実業家の倫理である。貴族趣味が入り込む余地はどこにも無かったかのように思われる。

ただ、清顕は幼少期、綾倉家に預けられていたらしい。彼の貴族趣味の発露には、その点が関係しているのだろう。

家族についても触れておこう。父親は松枝侯爵、母親は都志子としこである。また、パワフルな祖母も登場する。祖母はほんの少ししか登場しないものの、それなりに存在感がある。清顕の祖母については、また別の機会に取り上げてみたい。

本多繁邦

松枝清顕と同い年の青年であり、彼の親友でもある。

第一印象としては、合理主義の権化のように映るかもしれない。貴族趣味的な面に興味を持たなかったと思えば、武士道をたっとぶこともない。かといって何か別の神秘を求めているわけでもなかった。白樺派に代表される人道主義にも関心を示さなかった。

ただ、繁邦自身はローマ法に由来する西洋合理主義で塗り固められた法学に飽きを感じていたのも事実らしい。彼が本当に興味を示したのは、アジアの法学であり、マヌ法典であったからだ。

父親はドイツ法学を学んだ判事であり、非合理的なものをことごとく嫌っていた。老いた女中が不思議な体験談を語ることすら禁じていた。それほど忌むべき存在として認識していたらしい。

#三島由紀夫 #豊饒の海 #春の雪

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