子供の頃からテレビや映画で見ていた「やられ役」ってやつにあこがれて、18の頃、ひょんなことから京都の東映撮影所に潜り込み、数年の間、ヤクザ映画やテレビの時代劇など…
《 時間(とき)の流れに身をゆだね… 》 カフェ、 コーヒーショップ、 喫茶店にティールーム…。 呼び方はいろいろ。 お気に入りの店で、 私はいつもコーヒーを飲む。…
《海辺のコーヒーショップから》 もしもし… ハイビスカスの花が、 第一号が咲いたから、電話してみたんだ。 キミにもらったハイビスカスだから。 …何かきっかけが…
《男と女 〜ある午後の物語〜》 客もまばらな昼下がりのカフェ… ボクはいつものように ノースモーキングテーブルで、 原稿用紙に向かっている。 しかし、手にした…
《 ギョウザ殺人事件 》 辰夫は、新宿からずっと憂鬱だった。 地下鉄丸ノ内線、池袋行き車内。 夕方、 恋人の智子を家まで送って行く途中である。 辰夫の憂鬱の…
《別れの朝》 もうすでに運命は決まっていた。 いつとは知れず、ずっと前から、 全てがその方向に流れていたのだ。 女から告げられた別れの言葉は、 彼を激しく…
《 Cafe 1430 》 とあるカフェ…。14時30分ちょっと過ぎ。 また会ったネ。 遅いランチ? 今日も、一人で? なんか、とっても疲れてるみたいだネ。 自分で肩を圧…
今回は、以前載っけた『テメェ、ジイさんに謝れ…心から』にも登場の俳優探偵・萬屋公介シリーズ第2弾です。 『静かにしろ! このブタ!!』 オレの名は、萬屋…
*コレもまた、ショートストーリーというよりも、ある日ある時のワンシーン* 《オレンジ色の光の中で》 夕暮れ時のやわらかいオレンジ色の中で、 彼女は彼の肩枕…
*今回はとってもショートなストーリー…と言うより「ワンシーン」と言ったほうがいいかナ* Noriko ~そんな彼女が好きなのサ~ そろそろ彼女がやって来る時間…
~ラブ・コントロール 恋のかけひき~ 1 何となく寂しい夜がある。 と言って、別に誰かにそばにいて欲しいわけでもなく…、それはそ…
《グッドナイト》 ☎(Trrrr、Trrrrr…) 「もしもし」 「……もしもし、…あたし…覚えてる?」 「…ああ、キミか。…久しぶりだね」 「よかった。あたしの声、…
① ドアを押すとカウベルの音と共に店内のBGMが耳に心地良く飛び込んでくる。 「あ、いらっしゃい」 と、カウンターの中の和風な顔立ちの美しい女が…
《彼女がゲーセンへ行こうと言ったから》 ボクの好きな時間、ボクの好きな場所…。 昼下がりの喫茶店。 それは、やわらかい陽射しの、 のどかでのんびりとした午後だっ…
『テメェ、ジイさんに謝れ…心から』 ガラスの向こう側は、薄曇りの街。ついさっきまでは陽が射していた。梅雨入り宣言があったというのに、本格的にはまだのよう…
《スペシャルな日曜日》 ある日曜の朝…、 耳に心地良く流れ込んで来た、 何だか妙になつかしいメロディーでボクは目覚めた。 それはどうやら、キッチンの…
子供の頃からテレビや映画で見ていた「やられ役」ってやつにあこがれて、18の頃、ひょんなことから京都の東映撮影所に潜り込み、数年の間、ヤクザ映画やテレビの時代劇などでスタントマンや殴られ役・殺され役・斬られ役をやっていた。 やがて上京し、今度は演劇活動をしているうちに何故か声の仕事の世界に足を踏み入れる。CMナレーションを中心に、それほど多くはないがアニメや洋画の声の吹き替え、当時多数作られていたVシネマ、テレビドラマなどにもちょこちょこと顔を出している。 アニメではわずか
《 時間(とき)の流れに身をゆだね… 》 カフェ、 コーヒーショップ、 喫茶店にティールーム…。 呼び方はいろいろ。 お気に入りの店で、 私はいつもコーヒーを飲む。 私にとってそこは、 ただお茶を飲むだけの場所ではない。 そこは、“時間(とき)を過ごす”場所。 静かに…。にぎやかに…。 これもいろいろ。 どんな雰囲気であれ、 そこが“自然”であればいい。 その店独特の空気が、 何者にも邪魔されず、 何事にも惑わされず、 時間(とき)がゆっくりと流れる。 その
《海辺のコーヒーショップから》 もしもし… ハイビスカスの花が、 第一号が咲いたから、電話してみたんだ。 キミにもらったハイビスカスだから。 …何かきっかけがないとサ、 電話出来なくて…。 ねえ、 最近、月がまん丸いの、知ってる? きれいだったよ夕べ、とっても。 ベランダから部屋に光が射し込むんだ。 月の優しい光に包まれて眠るのは、 とても気持ちがいいんだよ。 ボクのケンタッキーカーネルはどう? 持ち直しそうかい? 今、キミの町に来てるんだよ。 何となく…
《男と女 〜ある午後の物語〜》 客もまばらな昼下がりのカフェ… ボクはいつものように ノースモーキングテーブルで、 原稿用紙に向かっている。 しかし、手にしたペンは一向に進まず、 体はお昼前に起きたけど、 思考機能の方はまだ眠っているようだ。 (ああ、締め切りが近いというのに…) アイデアのかわりに出て来るのは、 煮ても焼いても食えないタメ息ばかり。 コーヒーの表面からまっすぐに立ち上る湯気に、 そのタメ息がぶつかり、湯気の流れが乱れた。 その時、 テーブ
《 ギョウザ殺人事件 》 辰夫は、新宿からずっと憂鬱だった。 地下鉄丸ノ内線、池袋行き車内。 夕方、 恋人の智子を家まで送って行く途中である。 辰夫の憂鬱の原因は、 新宿駅から隣の座席に座ってきた、 帰宅途中のサラリーマンらしい男だった。 彼は息が臭かった。 ギョウザを食べたばかりだとすぐわかった。 仕方ないと思った。 ギョウザを食べてはいけないなんて法はない。 呼吸をするなとも言えない。 運が悪かったんだ。 どうせ次の乗換駅で降りるだろう。 それまでの辛抱だ
《別れの朝》 もうすでに運命は決まっていた。 いつとは知れず、ずっと前から、 全てがその方向に流れていたのだ。 女から告げられた別れの言葉は、 彼を激しく打ちのめした。 最後の朝…。 女の心は、もはや恋人のそれではなく、 心変わりを詫びる思いか、 あるいは、 哀れみにも似た母性の表れか、 いつになく優しいものだった。 そして男は…、 (いやだ。別れたくない…。 ボクはまだ彼女を愛している…) 突然我が身に降りかかった現実への、 女々しいとも言える抵抗、
《 Cafe 1430 》 とあるカフェ…。14時30分ちょっと過ぎ。 また会ったネ。 遅いランチ? 今日も、一人で? なんか、とっても疲れてるみたいだネ。 自分で肩を圧したり、首筋を揉んだり、 時々背中を伸ばしたり…。 他のお客が出入りするその向こうに、 そんなキミを見ても、 何ともしてあげられないのがもどかしい。 時折窓の外を、 ちょっと憂いをたたえた目で ボーッと眺めたりして、 一体何を考えているのだろう。 ふとキミの心の中、覗いてみたくなる。 一度
今回は、以前載っけた『テメェ、ジイさんに謝れ…心から』にも登場の俳優探偵・萬屋公介シリーズ第2弾です。 『静かにしろ! このブタ!!』 オレの名は、萬屋公介。 職業は俳優。得意はアクション。特に鍛錬はしてないが、殺られ役をやらせればそこいらのアクションクラブの連中に引けを取らない。 ただ、売れてないのが玉にキズ。売り込みが弱いのはわかっている。エージェントも弱小だが、オレ自身そっち方面の情熱が希薄なのも事実だ。じゃあどっち方面に情熱を注いでいるのかと言えば…、
*コレもまた、ショートストーリーというよりも、ある日ある時のワンシーン* 《オレンジ色の光の中で》 夕暮れ時のやわらかいオレンジ色の中で、 彼女は彼の肩枕で、 静かな寝息を立てていた。 電車の窓から吹き込む風が、 時おり、彼女の長い髪をすくいあげ、 彼の唇のあたりをくすぐる。 彼はそれを払いのけようともせず、 やはり目を閉じ、 ひたすら眠ったふりを続けている。 きっと、清潔なシャンプーの香りと、 その感触を楽しんでいるのだろう。 電車がどこかの駅に着いた時、
*今回はとってもショートなストーリー…と言うより「ワンシーン」と言ったほうがいいかナ* Noriko ~そんな彼女が好きなのサ~ そろそろ彼女がやって来る時間だ。 ボクは、近くのバス停まで迎えに出かけた。 彼女を乗せて来るバスは、 通りの向こう側の停留所に着く。 通りのこちら側にあるベンチにかけて、 ボクは彼女のバスを待った。 ほぼ定刻通りにバスはやって来た。 そのバスが行ってしまうと、 そこに彼女の姿が現れた。 ボクは軽く手を挙げる。 すると彼女は、小さく
~ラブ・コントロール 恋のかけひき~ 1 何となく寂しい夜がある。 と言って、別に誰かにそばにいて欲しいわけでもなく…、それはそれで、それなりにひとりぼっちを楽しみたい…というような…。 久しぶりにバーボンなどを飲みながら、何を思うわけでもなく、俺は一人静寂の中にいた。すると、急にそれが破られた。電話のベルというやつは、いつも突然鳴り響く。心臓に悪い。とくにこんな静かな夜には…。「この次からは鳴り出す前に前もって予告の電話をしてくれよ」…
《グッドナイト》 ☎(Trrrr、Trrrrr…) 「もしもし」 「……もしもし、…あたし…覚えてる?」 「…ああ、キミか。…久しぶりだね」 「よかった。あたしの声、覚えててくれて」 「どうしたの? なんか、めずらしいね。 何かあった?」 「ううん、とくに…。ただ、何となく…」 「…そっか。…元気?」 「うん。…あなたは?」 「ああ、何とかネ」 「……」 「……」 「…この前、…」 「…え?」 「この前、あのお店、行ってみたの」 「あのお店?」 「あなたとよく行
① ドアを押すとカウベルの音と共に店内のBGMが耳に心地良く飛び込んでくる。 「あ、いらっしゃい」 と、カウンターの中の和風な顔立ちの美しい女が誰にでもそうするように笑顔で迎えてくれる。 「コーヒーね?」 「うん」 それは誰が聞いても来る度にコーヒーを注文する常連客と、その店のママとの間で交わされるやり取りでしかない。誰も気に留める事のない、こんな場所にはよくある光景だ。だが、俺と彼女の心の中にだけは、この瞬間に、秘めやかなざわめきが生まれる。ここか
《彼女がゲーセンへ行こうと言ったから》 ボクの好きな時間、ボクの好きな場所…。 昼下がりの喫茶店。 それは、やわらかい陽射しの、 のどかでのんびりとした午後だったり、 ギラギラと太陽が燃えている、 うだるような暑さの、 もうどこへも動きたくないような のんびりした日だったり、 シトシト雨の降るジメジメうっとおしい、 それこそ動くのがおっくうな のんびりした日だったり…。 そう、いつもボクはのんびりしている。 17才、…じつはあと3日で18才。でも、 そんなに早く大人にな
『テメェ、ジイさんに謝れ…心から』 ガラスの向こう側は、薄曇りの街。ついさっきまでは陽が射していた。梅雨入り宣言があったというのに、本格的にはまだのようで、中途半端な天気が続いている。 歩道の並木の、あれはプラタナスだろうか、葉っぱたちが風にそよぎ、暑くもなく寒くもなく、穏やかな顔で人々が行き交う。だが、ガラスのこちら側は…… 「いーかげんにしろよなっ!」ってくらいの寒冷気候。ったく何だってこんな日にこんなに冷房効かすかなァ。せっかくのコーヒーも、すぐに冷めちま
《スペシャルな日曜日》 ある日曜の朝…、 耳に心地良く流れ込んで来た、 何だか妙になつかしいメロディーでボクは目覚めた。 それはどうやら、キッチンのラジオかららしい。 (えっ?! キッチンのラジオ?… たしか、あれはもう…) そう。ないはずだった。 それは3ヶ月前、彼女が出て行く時に一緒に 持って行った、彼女お気に入りのラジオだった。 (…何だ。ボクはまだ夢の中にいるんだ) ボクは、夢の中で、もう一度目を閉じた。 ♪ Wake me up! bef