双極性障害の父、入院する②
部屋に入ると、担当医とさらにもう1人初めて見かける医師がいた。
どうやら、父が入院する病棟の先生とのこと。
病棟の先生が、挨拶をして入院の説明を始める。
話を聞きながら、横目で父の表情を確認すると先程とは違い明らかに怒りの感情が溢れていて担当医の方を睨んでいた。
説明の途中、父の様子が気になったのか病棟の先生が父に話しかける。
「服部さん、何か言いたい事があるんですか?」
そう言われると、父は口を開いた。
「〇〇先生(担当医)、あんたは薬の調整が下手くそじゃっ。どうなってるんなら?ふざけやがって!」
「担当医を変えてくれ、あんたじゃダメじゃ!」
一瞬でギアが上がり、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
父の怒鳴り声を隣で聞きながら、僕と母は病棟の先生や看護師さんから入院に関する書類などの説明や記入などを行った。
母は何度もこう言った状況を経験しているし、僕も前回の入院時に同じような場面があったので多少は落ち着いて話を進める事ができた。
「言っちゃ悪いけど…あんたは独身て言うてたな?結婚して子供が出来たらもっと人の気持ちを考えられるようになるわっ!」
隣で担当医に向かってデリカシーの無い言葉を言い続ける父。
そのあと怒りが冷めやらない状態ではあるが、説明が終わり看護師さんに病室に案内されると父は顔を紅潮させながらも素直に立ち上がり部屋を出て行った。
父がいなくなり、すぐさま母と一緒に担当医に頭を下げた。
「ごめんなさい、失礼なことばかり言ってしまって。」
「いえいえ、大丈夫ですよ。服部さんに直接担当を変えてと言われたのはこれで3回目ですし。」
担当医は怒ることなく言葉を返してくれた。
病棟の先生も「こう言う仕事ですし、色んな患者さんを診てきてますので平気ですよ。」と言ってくれた。
その後、母と2人でグッタリしながらも部屋を出て待合室に戻り手続きなどを諸々と済ませて帰宅した。
以前の入院時の経験もあり予想はしていたが、時間が経つにつれて父への罪悪感が襲うようになってきた。
ただ、今回は入院させたことだけでは無い。
もう僕や母は父と一緒に住む事に限界を感じている。
入院後はグループホームなどへの入居を考えている。
可能であるなら家でお世話してあげたいし、父のやりたい事をさせてあげたい。
病気になってからも、もともと優しく真面目な人間だから父なりに家族の事も考えてくれた。
心から嫌いにはなれないから出来る限りの事はしてあげたい。
だけど、同居する事は現実的ではない。
母や姉と相談した結果、父に入居してもらう事で考えが一致した。
もちろん父にその事はまだ話していない。
間違いなく入居する事を拒むだろう。
そもそも入居先が見つかるのか?と言う不安もある。
これからが大変だ。
父が入院しても気はあまり休まらないし、母は「先の事を考えると、入院してからの方が気が重いわ。」と言っていた。
それは自分も同じだ。
とりあえず、担当のケアマネさんや病院のソーシャルワーカーさんと相談しながら今後の事を考えたい。
今は右も左も分からぬような状況だから。
父に対する罪悪感に押し潰されぬように。
家族で協力しながら、自分にできる事をやっていきたいと思う。
【ご家族がグループホームや施設などに入居された経験のある方がおられましたら、情報など頂けると幸いです。】
服部 佳弘
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