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【企画参加】歌からストーリー 「花言葉」

【花言葉】



「花言葉、知っているか?」



中学校卒業を控えた春、幼なじみの3人は、桜の木とクローバーに包まれた公園でダンスの練習をしていた。幼い頃からユニットを組んでいた3人組は来たる卒業パーティーでそのダンスを披露するという。



天真爛漫なカナエ、
何事にも一生懸命なユカ、
リーダー的存在のタイキ。
そしてもう1人、この公園でキッチンカーをオープンしているケンはダンスの師匠。

3人が幼い頃からケンは、この公園でダンスを教え、一緒に踊り、自ら音楽を奏で、自ら調理しおやつをふるまう、多彩な才能でカリスマ的存在であった。

「仲間と好きなダンスして、おいしいドーナツ食べて、クローバーにも囲まれて、幸せいっぱいだね!」カナエ
「まだまだ、完璧にやってやろうぜ!」タイキ
「私、全力でがんばるわ!」ユカ

カナエの口癖は「幸せいっぱい」
タイキは「完璧」
ユカは「全力でがんばる」であった。

タイキが完璧に踊りたい理由、それは3人の中でもダンスの才能が目覚め突出していたユカがこの春、ダンスの本場アメリカの高校に入学することが決定。
3人のラストダンスとなるからであった。

「よーーし もう1回 やるぞ!!」タイキ


無事卒業パーティーのダンスを終えた3人は、ケンのキッチンカーで打ち上げをしていた。


「ケンちゃんのドーナツをみんなで食べるのも今日が最後かぁ」カナエ
「なーに言ってんだ。ユカのチャレンジを応援するのが俺たちの役目だろ?」タイキ
「私、全力でがんばるわ!」ユカ

「カナエちゃん、最後なんて言わないでくれよ。そうだなー3年後の今日、またここでみんなで会おう。俺はね、みんなの可能性を信じている。」ケン

ケンの口癖は、「信じている」だった。

それぞれ違う高校を通うことになった3人。
時は経て、
ユカの帰国に合わせて、いつもの公園で再開を果たした3人、変わらない桜の木とクローバー。
3年前の約束の日
しかしそこにキッチンカーはなかった。


「ケンちゃん、忘れてるのかな?」カナエ
「あのーこの公園でドーナツのキッチンカーオープンしていた男の人、知っていますか?」

散歩をしている主婦に質問をするユカ。

「ああ、つい一週間くらい前だったかしら、事故にあったみたいなのよ、、即死だって、、、。それもね、、、ひき逃げだったみたいで、、、犯人が捕まってないみたいで、、。」


「えっ!!??」カナエ
「・・・なんで、、、。」ユカ
「(ふざけなんよ!?)」タイキ


「花言葉、知っているか?」


「クローバーの??」ユカ 
「それは、幸せっていう感じじゃないかな、、。」カナエ
「ちげーよ、、。三つ葉、、、1つかけちまった、、、、」タイキ

「「復讐」だよ。」



「ちょっと!! タイキ! バカなこと考えないで!」カナエ
「完璧にやれば、、、、いんだろ?」タイキ
「そんなことしてもケンちゃんは喜ばないよ!」ユカ


3年前の約束を果たすべく心待ちにしていたこの日、それぞれの希望の色がカラーに染まるはずだった。しかしその光景はモノクロに逆戻りしたようであった。



後日、ユカから連絡を受けたタイキ。


「ひき逃げ犯は出頭してきたみたいだよ。シロツメクサクローバーは昔、海外からのガラス製品の郵送時の箱の詰め物として使われてたみたいだよ。いわゆるクッションね、、。」
「ケンちゃんね、病院にいこうと、持ち出していた通行人のブリティッシュ・ショートヘアが飛び出しちゃって助けたみたいだよ。」ユカ

「えっ!? 」  

「何、、洒落たことしてんだよ、、、」タイキ


一瞬でもタイキの心に憎悪のようなものが包まれかけたが、それを溶かしたのもケンのカリスマ性、生き様だったのである。タイキにほんの少しだけ笑顔が戻った。


「ユカ、大学もアメリカでダンスやるんだよな?」タイキ
「うん。私、全力でがんばるわ。」ユカ


この時、18歳。タイキは大学へと進学。そしてまた月日が流れる。



何か明確な将来が見えないまま、タイキはスーツに着られ就職活動をしていた。偶然、カナエと再会する。カナエはパティシエをしているという。近況報告やたわいのない話をしていたところ、カナエが思い出したかのように話し出す。


「そうそう。サトミってクラスの子いたじゃん?学生結婚して子供がいるのよ。」カナエ
「えっ!? あの サトミが? ギャップあるなーおとなしい感じだったじゃん!?」タイキ
「うん、まぁ それでね。卒園式で使った曲があって、それが卒業ソング界隈でちょっと流行ってるみたいなの。」カナエ

「そう。それがどうかしたか?」タイキ
「YouTubeにアップされているこの曲聞いてみて。」カナエ


タイキとカナエは曲を聞いた。オルゴール調の優しい曲だった。そして曲が終わりにさしかかるところで作詞作曲のクレジットが表記される。


「おい!?カナエ! このクレジットのKENって、、、もしかして?」タイキ
「うん! 絶対そう! 何か懐かしいメロディだなって思ってたんだよねー!!」カナエ

「ケンちゃん、よく言ってたよね?」カナエ
「ああ 可能性を信じている。ってな。」タイキ

「何やってる人かよくわからなかったけど、きっと私たちと一緒で夢を追っていたんだよね!」カナエ
「夢を追うか、、、?」タイキ
「ケンちゃんとは今でもつながれる。」カナエ


曲名は「Friends」だった。

就職活動中のタイキにとって、何か考えさせる1つの出来事になった。




そして、また月日が流れ、それぞれの社会人生活も板についてきたそんな時期を見計らってか、満を持してタイキからカナエ、ユカに連絡が入る。



「花言葉、知っているか?」




「幸せいっぱいだねーーー!!」カナエ
「私、全力でがんばるわ!」ユカ


観客のお腹を魅了する調理担当、カナエ。
観客を魅了し演者のパフォーマンスを援護するダンサー、ユカ。
無限の可能性を信じて、そんな発信源となるようなライブハウスのオーナー、タイキ。


「約束」「私を思って」

四つ目の葉っぱが再び揃う。

そのライブハウスの名前は「クローバー」


「完璧だろ?」タイキ



企画参加させていただきます。
このようなショートストーリーを書くのははじめてでした。
歌詞を見た時に、ある映像作品の世界観が広がり、ストーリーを書いてみました。
インスパイアソングという言葉がありますが、それに近いような感覚です。
よろしくお願いいたします。

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