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【読書ノート】54 「復興〈災害〉――阪神・淡路大震災と東日本大震災 」(2014)

10年ほど前に書かれたものだが、今回の能登半島地震を期に読んでみた。阪神淡路大震災(1995)と東日本大震災(2011)のケースをもとに日本の復興政策の弊害を述べている。残念ながら記載された内容は古くなっていない印象で、これは日本の災害・復興政策が進化していない証とも言える。

・・・これらに加えて、東日本大震災の経験から、原発震災を避けることは、死活的に重要である。再び原発震災がおこれば、上記のあらゆる対策が意味を持たなくなる。原発に「世界最高水準」 の安全性を求めるといった議論があるが、ほとんど無意味と思われる。 一体、 何を持って「世界最高」というのか。世界第二位と比べてどれほど安全となるのか。地震や活火山が多く、狭い国土に55基もの原発(もんじゅを含む) が存在する日本は、世界的に見てもけた違いに危険な状態にある。大地震の回数(最近100年間に発生した死者1000人以上の地震)と原発の個数を、 国土面積あたり で比較してみれば、日本地震原発の指数は38.09で、世界のどの国よりも数百倍ないし、無限大の危険性を抱えている。仮に原発が一基になったとしても、指数は0.69で、第2のパキスタンの7.7倍であり、 世界一危険であることに変わりはない。狭い国土って地震の多いこの国では、 国土を安全で強靭にするには原発をゼロにするしかないのである。

184-185

防災復興省の創設
東日本大震災の復興はまだ3年半を経過したところであるが、これまでの段階でも過去の経験教訓が十分に生かされてるとは言いがたい。 何故、そのようになるのか。 災害常襲国でありながら、避難所や仮設住宅、住宅復興で、なぜいつも被災者が苦労するのか。 その根底には災害復興についての基本的な理念が確立せず、多くの法制度もバラバラで、その時々の政治経済の情勢に振り回されないから、 復興施策を取り行ってきたという経緯がある。 こうした法制度の抜本的な性理統合が不可欠であるが、同時に復興施策を系統的に一貫して進める組織が必要である。
災害救助法の所轄を内閣に移したことは一つの前進とはいえ、内閣府自体が防災や復興を専門に扱う組織ではなく、 その防災担当部局も他省庁からの出行メンバーで構成されている。 やはり常設の防災復興省といった組織が必要である。
日本は戦争しない国であるが、自衛隊や防衛省が存在する。 他方、巨大災害が必ず来るし、毎年風水害に見舞われる。火山の噴火もある。このように災害が日常化しているこの国には、被災と復興の経験を系統的に蓄積できる 組織を設け、専門的な人材を 蓄えるべきである。もちろん災害復興への対応は被災者や地方自治体が主体で取り組むべきであって、 非常時だからといって国家に権力を集中させるべきではない。 東日本大震災で被災した基礎自治体は、いずれも小都市で資力・人材に乏しいが、それは長年にわたる権限・財源のやせ細りと広域合併による人員削減などの結果である。しかし、地元のことはよく分かってるのは基礎自治体であり、災害対応の担い手はそこを外してはあり得ない。 国に権限を集中させればうまくいくわけ ではなく、むしろ地方充実させることが必要である。その上で、中央に専門的組織を作って地方との連携を図るという体制が必要である。

191-192

(2024年2月18日)

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