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自由への旅路 第二章 ④ 霊能者とジェームズ・アレン

 今から遡ること10年ほど前、

当時はサラリーマンとして、それなりに安定し

た生活を送りながら、尚も自分の本当にしたい

ことを模索し続けていた。

 いつの頃からかアルコールを一切受け付けな

くなっていたが、それでも週一程度、知り合い

が経営するパブへと晩飯を食べに通っていた。

 
 そんなある日のこと、そこで知り合った常連

客の女性と、スピリチュアルに興味があると言

うことで意気投合し、
 
「この人は本物だ」とか、「あの人の前世は

○○だ」などと、他の客の目をよそに二人で盛

り上がったりしていた。

 
 そのうち美輪明宏や須藤元気の本などを互い

に貸し借りするようにもなっていったが、

しばらくするとそのお姉さんから、

「実は凄い人を紹介したいんだけど」と切り出されたのだ。

 彼女によると、霊能者であるその老婦人は、人のオーラが見えるのだという。

 自分も以前、都内の某所でオーラの診断を受けたことがあり、

また、AC(アダルトチルドレン)であった彼女

もその霊能者からヒーリングを受けていたと言

うことで、さほど怪しいとも思わず、

むしろこんな身近にそのような特別な能力をも

った人が存在していることに興味を掻き立てら

れて、さっそく数日後にお会いする運びとなった。

 彼女に案内されて訪れたその家はとても立派な邸宅で、

「いらっしゃい」と、にこやかに出迎えてくれ

たFさんは、70歳を過ぎているとは思えないほ

どのエネルギーに満ちたご婦人だった。
 

 一人暮らしにもかかわらず、リビングや他の

部屋も、バラの花壇に至るまで全て、これまで

に見たこともないほど手入れが行き届いていた

のには驚いた。

 そんな一点の曇りもない爽やかな雰囲気の中

にあって特に目を引いたのは、元銀行マンで数

年前に他界されたというご主人さんの遺影で、

彼との思い出を彼女は嬉しそうにいろいろと語ってくれた。

 写真の中のその笑顔は誰が見てもたちまち癒やされ、

自然に微笑み返してしまうほどの慈愛に満ちた

雰囲気を醸し出していて、それは見た瞬間、

「この人はとても霊格の高い人に違いない」

と判るほどのものだった。
 

 対する彼女は一見人当たりが良さそうに見え

るのだが、

本人曰く毒親に育てられたとのことで、虐待

起因するAC独特のネガティブな気質が見え隠れ

していた。

 キリスト教系の女学院を卒業後、ご主人と同

じ銀行へと就職し、そこで職場結婚したのだと

言う。

 彼女はこれまでにも自分の知識や能力を共有

するために、幾人かを弟子として教えて来た

が、要求が高過ぎたためか皆、長続きしなかっ

たことなどにも触れた。
 
 ここで何か妙だな?とは思ったのだが、
 
Fさんはこちらの理解度を量るためか、今度は

スピリチュアルに関する様々な質問を投げかけ

てきた。
 
 そうしたなにか面接のようなビミョウな時間が過ぎた後、

彼女はおもむろにジェームス・アレン「原因

と結果の法則」第一巻を取り出し、それを読む

よう手渡してくれたのだ。

 だがしかし、突然のプレゼントに喜んだのも

つかの間、彼女の次の言葉には正直「エッ?」

となってしまった。

 「来週までに、指定した範囲を熟読し、要点に線を引いて予習しておくように」

    そんなの聞いてないし…?!

 こうして断わるスキも与えられぬまま、

スピリチュアルのスパルタ教育は唐突に始まっ

たのだった。
 


 

 



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