ウィッシュノート

過去に書いた詩と童話が置いてあります。こちらにはもう顔を出していないので、スキやコメン…

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過去に書いた詩と童話が置いてあります。こちらにはもう顔を出していないので、スキやコメントにはお返事できません。

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  • 引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話

    昔話風の恋愛小説です。『創作まとめ』にあるお話より恋愛色が強いので、苦手な方はお気を付けください。

  • 創作まとめ

    ストーリー性のある詩や童話のまとめです。

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【創作】引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話①

昔々ある貧しい村に、血の繋がらない姉弟が居ました。 弟は生まれつき孤児で、最初は他の村人の世話になっていたのですが、自ら家を飛び出してから、半年ほど野外で暮らしていました。 しかし冬が近づくにつれて、外で寝ることも食べ物を探すことも難しくなり、独りでひっそり死にかけていたところを、五歳年上の姉さんに拾われたのでした。 弟は前の家では大変な問題児だったようで 「誰にも懐かん野良犬じゃ」 「人の道理をわきまえん畜生じゃ」 など散々言われていましたが、命の恩人である姉さん

    • 【私信】最後の投稿です。

      いつもお世話になっています。突然ですが、noteでの活動をやめることにしました。 理由は詩から創作に興味が移ったことで、今は人に読んでもらうより書くことに専念したいと思ったのと、長編のお話を投稿するには、noteのシステムは不向きだと感じたからです。 過去記事についてはお邪魔かもしれませんが、やはり人に読んでもらいたくて書いたものなので、noteの運営さんなどに削除されない限りは、こちらに置かせてください。 私はもうnoteに来ないので、今後はスキやコメントにお返事でき

      • 引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話・完

        (前回の続きです。最終回) ところが肝心の罪滅ぼしは、全くうまくいきませんでした。今のところ弟が姉さんに会いたい以外に願ったのは、唯一「本が読みたい」だけ。 「本が読みたい」を叶えても気休めにしかならないことは分かっていました。それでも知識があって困ることは無いと、 (どうせなら人の世で役に立つ知識をつけさせてやろう。この男は頭がいいようだし、知恵をつけさせれば、おのずと成功するはずだ) 邪神は行商人に化けて、弟に役立つ本を届けました。邪神の見込みどおり、弟は本から得

        • 引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話⑦

          (前回の続きです) 弟とおっかさんは疑っていますが、この世界には明らかに人外の力が働いています。特に弟は、ある時点から、ある神様によって、ずっと見守られていました。 それは大店の娘が願をかけた、人の寿命を半分奪う代わりに願いを叶える邪神でした。 今でこそ邪神と呼ばれていますが、もともとは人の気から生じた人のための神でした。 この世界の神は、全て自然界のものが発する気から生じた存在で、花の神は花に。山の神は山に。海の神は海に似た性質を持ちます。 願いを叶えて欲しい。努

        • 固定された記事

        【創作】引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話①

        マガジン

        • 引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話
          8本
        • 創作まとめ
          11本

        記事

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話⑥

          (前回の続きです) 姉さんとの過去を全て思い出した弟は、がああっと頭を掻きむしって、 「なんで!? なんで姉さんは死んでしまったんじゃ!? 俺には姉さんだけじゃったのに! 大切じゃったのに! なんで神は俺から記憶を奪った!? なんで!? なんでじゃ!?」 と大地を叩いて号泣しました。あまりに激しい悲しみに、僧侶はややたじろぎながら、 「その方との思い出がそれほど辛いなら、再び記憶を封じましょうか?」 見当違いの申し出に、弟は僧侶を睨みながら、 「悪いが、俺のことは

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話⑥

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話⑤

          (前回の続きです) 弟の母親は、流れ者の小汚い女でした。 いつどこからやって来たのか、いつの間にか村の隅っこに住みついて、野良猫のように子を孕み、育てきれずにこの世を去りました。 物心つく頃には弟はすでに一人で、村の人の慈悲によって育てられていました。しかし自分の子でもない弟を最初に引き取って育てたのは、本当は心当たりのある者だったのでしょう。 女だけで子を授かることはできない以上、父親が存在するはずです。ただ父親候補が一人とは限りませんし、周知されるには具合の悪い話

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話⑤

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話④

          (前回の続きです) 姉さんは大店の娘の話を、そのまま信じましたが、他人の身に起きた出来事を、外から正確に知ることは不可能です。真実は人間の嘘や思い込みによって、たやすく変化します。 大店の娘も自分の得のために、姉さんに嘘を吐いていました。姉さんと離れていた三年間。弟の身に実際に起きた出来事はこうでした。 弟は誘惑の多い街に来ても、遊んだり無駄遣いしたりすることなく、真面目に働いていました。 不愛想ですが、勤勉で裏表の無い弟は 「まだ若いのに遊びも怠けもせず、故郷の姉

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話④

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話③

          (前回の続きです) 大店の娘との結婚を知った時点で、姉さんはもう自分と弟の縁は切れたのだと悟りました。けれど、せっかくここまで来たのだから、三年ぶりに会ったのだから、大きくなった弟の姿を目に焼き付けて、懐かしい声を聞きたかった。 しかし弟が自分との約束のせいで、やはり縛られていたのだと聞いてしまえば、大店の娘の言うとおり、過去の象徴である自分は、会ってはいけないと思いました。 仮に絶対に弟が自分を思い出さない保証があったとしても、美しい大店の娘と結婚して、すっかり立派に

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話③

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話②

          (前回の続きです) ところが遠くの街に奉公に出ても、弟の献身は止みませんでした。もともと毎月、文で様子を知らせる約束でしたが、仕送りまで入っていました。 驚いた姉さんは、弟の残した読み書きの教本とにらめっこしながら、 『アンタががんばって稼いだお金じゃろう。自分のために使いなさい』 なんとか返事を出して、お金も送り返したものの 『俺は姉さんにいい暮らしをさせたくて働きに出たんだ。姉さんがもらってくれなきゃ意味が無い。だから遠慮しないで受け取って、少しはいいものを食え

          引き裂かれた姉弟と罪滅ぼしの邪神の話②

          【創作童話】ネモフィラの花言葉③

          (前回の続きです) しかし人にしろ花にしろ、この世に生きとし生けるものは、必ず行いに対する報いを受けます。 青年が過去にネモフィラに与えた救いが、救いとなってネモフィラから返されたように。 花たちに背を向けた時は、花たちに背を向け返されたように。 一心にネモフィラを想い続けた青年のもとには、想像もしない報いが訪れました。それは、なんと王家からの使者でした。 どうして王都に行ったこともない自分に、使者がやって来たのか、あまりに突拍子の無い展開に青年は困惑しました。しか

          【創作童話】ネモフィラの花言葉③

          【創作童話】ネモフィラの花言葉②

          (前回の続きです) 他の全ての花に見捨てられた青年に、ネモフィラだけが「良かったら私を植えて」と協力してくれました。 可憐な姿に反して『どこでも成功』という花言葉を持つほど丈夫で繁殖力の高いネモフィラは、剥き出しだった大地をたちまち青く染め上げました。 以前の華やかで賑やかな景色とは違い、一面にネモフィラが咲く様子は、気持ちを高揚させるのではなく、心を洗うような美しさがありました。 咲く花が変われば、求める人も変わります。以前は楽しい観光を求めて客が訪れましたが、今度

          【創作童話】ネモフィラの花言葉②

          【創作童話】ネモフィラの花言葉①

          昔々、王都から遠く離れた村に、不思議な力を持った青年が居ました。青年は花に触れることで、花の心を知ることができました。しかしそんな力を持つ人は、少なくとも青年の知る限り自分だけ。 自分の能力が特別だと知らなかった頃。 まだ子どもだった青年は無防備に 「花が水を飲ませて欲しいって」 「ちゃんと外に出して日に当ててと言っているよ」 と花たちの要望を周囲の人に伝えていました。 すると大人には 「花は生き物じゃないから、心なんて無いのよ」 「お話できる気になっているだけよ」

          【創作童話】ネモフィラの花言葉①

          【創作童話】鏡のとりこの物語:後編

          (前回の続きです) しかし自分を愛していないことが 分かり切っている相手に こちらだけが愛しているとは言えず ただ真夜中に会いに行くだけの 関係が数年続きました。 その間に少女は成長し まるで満月の化身のように いっそう美しい女性になりました。 年頃になった彼女のもとには たくさんの男性が求婚しに来ました。 怪物は彼女が他の誰かのものに なってしまうことを恐れて 「お前は人間の男と結婚するのか?」 「私は誰の者にもならないわ」 不愉快な質問だったのか 彼女は珍し

          【創作童話】鏡のとりこの物語:後編

          【創作童話】鏡のとりこの物語・前編

          昔々あるところに怪物がいました。 普段は化け物らしく人目を避けて 深い森の奥にある 真っ暗な洞窟に住んでいますが 人が三度は生まれ変わるほどの時間を ずっと一人で過ごすのは退屈です。 なので暇を持て余した怪物は 世にも恐ろしい姿に化けて 人から食料や金品を脅し取る以外にも 美男美女に化けては 恋人たちや聖職者をたぶらかして 嘲弄する遊びをしに よく人里に出かけていました。 常に暇つぶしの種を 探している怪物は、ある時 面白い噂を耳にしました。 街でいちばんの豪邸に住

          【創作童話】鏡のとりこの物語・前編

          【お知らせ】不定期更新に切り替えます

          いつもお世話になっています、ウィッシュノートです。 最近お話の投稿ばかりにも関わらず、変わらずにお付き合いくださって本当にありがとうございます。 一年前にnoteで活動をはじめてからは、ずっと詩ばかり書いていましたが、本当は子どもの頃から創作が好きで 「いつか自分もこんなお話を作ってみたい」 と憧れていました。 ただ 「作家になりたい」 「素晴らしい物語を書きたい」 「それを人と分かち合いたい」 という想いが強いほど、読まれないことが悲しかったり、思うように書け

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          【創作童話】国でいちばん高くて低い③

          (最後です。前回) 再び部屋に閉じ込められた娘は 「ちょうだいちょうだい出してちょうだい」 と、しばらく訴えていましたが そのうち何も言わなくなりました。 今度こそ娘のためにだけ用意された 食べ物にも贈り物にも手を付けないまま。 施し先を封じれば 自分で消費するだろうという 王様と家臣の見立ては大間違いで もともと痩せてみすぼらしかった娘は 見ているこちらが怖くなるほど いっそう衰えていきました。 家臣はもはや気狂いかと思うほど頑なな娘を見て 流石に手に余ると考

          【創作童話】国でいちばん高くて低い③